恋愛サイクル

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『見て見てー!』

「なんだ?それ」

「何かの楽器……ですわね」

『わかんないけど、路上にいた人がいらないって言うからもらってきた』

「でもそんなものもらってきてどうすんだよ、弾けるやつなんて」

「僕弾けるよ」

「ユーリスが!?」

「あのユーリスがか!?」

「……失礼きわまりないね」

『すごいね! どうすれば綺麗な音出る?』

「弦をひとつずつ押さえてここを爪で滑らせてみて」


ギギギギギ


「うわっ」

「酷い音だね」

『なんでー?』

「力入れすぎてるんだよ、もっとこんな感じで……」

『んー、こう?』

「なんでそうなるわけ?じゃなくてこう」

「………お前ら」

『ん、何、セイレン』

「どーん!」

「うわっ!」

『!!!!』

「何するんだよジャッカル!」

「いやー、ユーリスの背中がなまえともっと密着したいって言ってたからよ」

「ち、違う、違うから!」

「この慌て方、ますます怪しいですわね」

「ま、マナミアまで!違うから、誤解しないでよ!」

『そんなこと考えてたんだーユーリスってばー』

「……あああぁぁもう!もういいよ!」


バタン


「…………行ってしまいましたわね」

『相変わらずおもしろいなあ』

「とか言って、なまえも満更でもなかったんじゃねーのかー?」

『な、何言ってんのセイレン違うから!』

「さっきのユーリスと全く同じ反応してるじゃねーか」

「怪しいですわ」

『ちょっとほんとやめて!違うから! ねぇ、違うからっ!』

「……素直じゃないねえ、二人とも」

『………ちょっと、トイレ行ってくる!』


パタン


『あれ、ユーリス』

「…………」

『どうしたの?』

「さっきの楽器の弾き方、知りたいなら教えてあげるけど」

『え、ほんと?』

「僕の部屋まで来てくれる?」

『うん、行く行くー』

「…………ねえ、」

『ん?』

「ほんとに気付いてないの?」

『………期待していいの?』

「…………」

『…………』

「……なまえじゃなかったら、こんなお節介なことしないし」

『…………』

「好きだよ」

『……わたしも』





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「うまくいった様ですわね」

「ユーリスにけしかけてやった甲斐があったぜ!」

「ジャッカル、お前何やったんだよ」

「いや、ちょっとなまえに本気で惚れちまったみたいなことをぽろっと言ってやったんだよ」

「おま……本気で惚れてるのか!?」

「けしかけただけだっつってんだろ。お、セイレン、もしかして俺に妬いてるのかー?」

「は!?んなわけねえだろ!」

「…………(たまにはこんな恋愛サイクルを見るのも、悪くないですわね)」




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