月とうさぎ
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『オズ様、体調はいかがですか』
「あ、もうずいぶん平気になったよ。ありがとう。君、今日ずっと俺について看病してくれたよね」
『いえ、そんな。礼には及びません』
「ギルは俺がお粥を作ってやる!とか言って出ていっちゃうしさー。わざわざギルがやることじゃないのに」
『………』
「あ、ごめんね。もう俺平気だから。お仕事お疲れ様!」
『……あの、オズ様』
「ん?」
『……月が。月がとても綺麗です』
「…ほんとだ。綺麗な満月だ」
『月を見ると、オズ様を思い出します』
「え、俺? へぇ。何で?」
『月と言えばうさぎ。うさぎと言えばアリス様、アリス様といえばオズ様、です』
「あはは、すごい連想ゲームだね」
『……うさぎは』
「うん」
『寂しいと死んでしまいます』
「………」
『もうそろそろ、ギルバート様が戻られる頃かと思います』
「……うん、ありがとう」
『寂しいときは、そう言ってくださいね。オズ様はまだまだ子供ですから、頼ったっていいんです』
「こ、子供って!酷いなぁ、君」
『ふふ。あ、いらっしゃいましたよ』
バンッ
「オズ!お粥作ってきたぞ!これを食べて早く治すんだ!」
「ギルー、遅いよー。俺もう元気になっちゃったよ?」
「なっ、何だと!?」
『では、私はこれで失礼します』
「あ、ありがとねー」
パタン
「くそ、俺がもう少し早く本部に戻ってきてさえいれば……!」
「……ギル」
「ん?何だ、オズ」
「今の人の名前、なんて言うの?」
「あぁ、なまえさんだ。それがどうかしたか?」
「……もしまた俺が風邪引いたら、またなまえさんに看病してほしいな」
「………なんだ。いきなりどうしたんだ、オズ」
「んー?ギルには言っても分からないから内緒ー!」
「なっ!それはどういうことだ!」
月とうさぎ
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ギルにわかってもらえなかった寂しい気持ちを、あの人にはわかってもらえた。
それだけで、充分だ。
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