幸せの欠片
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「………」
『もしもし？』
「……もしもし」
『音也？ どうしたの？』
「………声が聞きたくなっただけ」
『あはは。毎日会ってるじゃん』
「…………」
『元気ないね』
「……だって」
『うん』
「みんなに隠してるって言ったって……マサたちとあんなに楽しそうに話してるの見ると、なまえは俺の彼女だって言いふらしたくなっちゃうよ」
『……校則があるから退学になっちゃうよ』
「うん……今よりもっと、会う時間が減っちゃうね」
『それは嫌だなぁ』
「そんなの俺も嫌だ！ ………だからさ、これから毎日、こうやって電話してもいい？」
『え』
「トキヤにバレないようにやるからさ！ そうしないとほんとに俺、想いを押さえきれなくなるかも…」
『うん、いいよ。教室じゃ二人で話しづらいもんね。音也が退学とか考えたくないし』
「やった！ ……電話越しの声って、いつもと違って聞こえるから新鮮でいいね！」
『あはは、そうだね！』
「…あ……」
『ん？』
「今の顔見たかったな」
『…………』
「……なまえ？」
『…………』
「照れてる？」
『……うるさい』
「へへっ。かわいいなぁ」
『…………』
「なまえー？」
『…………』
「……(からかいすぎたかな)」
『………面と向かっては言えないけど』
「うん」
『電話なら言える』
「うん。何？」
『いつもありがとう。大好き』
「…………」
『……あの…音也？』
「…………すげー嬉しい。なまえからそんな言葉が聞けるなんて」
『…恥ずかしくて音也みたいに思ったときに言えないけど』
「それでも、本当に嬉しいよ。……いよっしゃー、元気出てきたぁー！ …あ、トキヤ、おかえり」
『え？』
「……帰ってきちゃった。一旦切るね」
『うん』
「………今度は、さっきの言葉直接聞かせてよ」
『！ えっ…』
「あはは、じゃあまた！」
ツー、ツー
こうしてまた、嬉しいことがどんどん増えていく。
この幸せの欠片をたくさん集めて、やがて大きく膨らんだ幸せを、音也に届けてあげよう。
そしてそれを、いつまでも二人で守っていこう。
それが、わたしの幸せだ。
幸せの欠片
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『(元気になった。もうちょっと宿題頑張ろう。
……それにしても、音也に隠し事なんてできるのかな)』
→おまけ