ハロウィン企画*音也
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「トリックオアトリート!」
驚いてドアの方を見ると、かぼちゃの形の小さな入れ物を持った音也の姿。
黒いマントを着て、軽くコスプレをしている。
「お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ!なまえ!お菓子ちょうだい」
『ええ!?』
今から音也のところにお菓子をもらいに行こうと思っていたわたしは、音也にあげるものを何も持っていなかった。
『えー!わたしお菓子ほしい!』
「お菓子持ってないのー? じゃあ、いたずらしちゃうぞ」
一瞬目が光ったのは気のせいか。
『いたずらなんてやだ!音也ー、お菓子ほしいよ』
「俺がほしい」
『トリックオアトリート!』
「やだ」
『おーかーしー……っていうかなんで近付いて…いてっ』
音也にじりじりと詰め寄られて、わたしは部屋の壁にぶつかった。
「お菓子をくれないといたずらするよ?」
『だからないって』
「じゃあいたずらだね」
『ちょっと待って何するの』
「この格好見てわからない?」
髪をどけられて、首筋に軽く唇が触れる。
やけに熱い。
『ちょ、』
「吸血鬼、だよ」
にや、と楽しそうに笑う音也。
そのまま音也は再びわたしの首筋に顔を埋めた。
『っ!』
何度も何度も唇が押し付けられる。
どうしよう、恥ずかしすぎて死にそう。
『あ、』
不意に唇が離れて首にふわふわした髪の毛が当たる。
かと思ったら、耳元で小さな声。
「もっといたずらしてあげようか?」
息が薄く耳にかかる。
もう何も考えられない。
どうすればいいのかわからなくて、あ、とかう、とかしか出てこない口に、音也が自分の口を合わせた。
『……っ』
「……しょうがないから、これで許してあげる」
『…いじわる』
「なまえがお菓子くれないからだよ」
それに俺も楽しかったし、と言う音也はとても満足気で。
仕返ししてやろうと思いトリックオアトリートと言うと、お菓子ないから次はなまえがいたずらしてね、と返された。
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『そっそんなことできるわけないでしょ!』
「え、できないの?じゃあ俺がお手本見せてあげるよ」
『そういう意味じゃないってばあああ』