約束よりも重いキスを

[ 1/1 ]





『……ブレイク。あなたに、あげるわ』

「…………っ、何を……」

『私の、大事なもの』





彼を縛るものが欲しくて、私は彼にキスをした。
そのあとの彼の顔は、私が思っていたよりももっと苦しそうで、人間らしい表情をしていた。





「……っ、貴女は、いつもそうやって……」





苦い顔をする彼に、私は微笑みかけた。そのまま後ろを向いて、歩き出す。





「……何故、何も言わないんデス」





何故、って。
そんなの決まっているでしょう。
口にしたら、泣いてしまいそうだから。

そうしたら、あなたは手を差し伸べてしまうでしょう?





「…………貴女も……ワタシも、本当にどうしようもありませんネ……っ!」





その声と共に、足に重い痛みが走った。覚悟はしていたけれど、やっぱり痛い。さすがの彼も、痛みを和らげることは出来なかったらしい。致命傷じゃないだけ、まだマシだけれど。

朦朧とした意識の中、ブレイクが近付いてくる音が聞こえた。相変わらずの間抜けな足音に、訳もなく涙が溢れる。





「…………何を、泣いているんデスカ」

『……あなたにつけられた傷が、痛いの』

「急所は外したつもりデスガ」

『ふふ、優しいのね……』





血が止めどなく流れ出ているのがわかる。視界が霞んできた。





「…………貴女の傷が治るまでに、必ずワタシが何とかしマス」

『………………』

「約束、デス」





唇にぬくもりを感じたその瞬間、私の意識は途絶えた。



私は自分のためにしか動けなかったけれど。
ブレイク、あなたなら私が本当に望んでいることを、わかってくれると思った。
また前のような、平穏な日々を。みんなが笑って過ごせる、何でもない日を。
そして願わくば、私もそこにいられるように、と。

今までの私は、信じなくてもいいから。
ただ、さっきの約束だけは、信じていてほしい。
私があげた心も、口づけも、真実だから。


















約束よりも重いキスを
-----------------------

それは足枷であり、私たちの希望。





prev / next
back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -