視線の先にあるもの
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『ギル!そっち頼んだ!』
「ああ!」
急いで倒れている少年のもとに駆け寄る。
爪で浅くはない傷をつけられて、息が荒くなっている彼に、わたしは自分のチェインを発動させた。
わたしのチェインは回復専用で、戦いに全く向いていない。
だから、自分自身が強くなろう、と今まで努力してきて、やっとこの場所に立てた。後悔はしていない。
ギルの方へ視線を戻すと、険しい顔をした彼が敵と睨みあっている。気付けばギルは細かい傷だらけになっていた。
苦戦してる。
『オズ!治療が終わったらこの子保護しといて!』
「え?なまえ、どこ行くの」
『ギルの助太刀!』
短く言い捨ててから、ギルのもとへと一直線に走る。後ろでオズが何か叫んでいるけれど、そんなの気にしている余裕なんてない。
『ギル』
「っ!なまえ!」
腰に下げた短剣を取り出す。
相手のふところに入って切りつけたが、あっけなくかわされてしまった。
こいつ、でかいくせにすばしっこい。
「なまえ、まず足を重点的に攻撃するぞ」
『うん。ギル、何秒くらい拘束できる?』
「30秒くらいだ」
『わかった』
わたしが返事をした瞬間、ギルのチェインが唸りをあげて敵を縛った。
「なまえ、尻尾に気をつけて!」
『はいよ!』
後ろから叫ぶように聞こえてきたオズの声に返事をして、わたしは敵の足に攻撃する。
わたしが切りつけると痛みに暴れて、必死に耐えていたギルの鎖がちぎれた。
しかし先程の勢いはなく、相手のすばやさはがくんと落ちた。
『よし、たたみかけるよ、ギル!』
「ああ!」
あとはもう簡単だった。攻撃が当たれば相手は脆くて、最後にわたしが刺した傷がとどめとなって、敵は倒れた。
「……なまえ!」
とどめをさしたわたしの短剣を、敵の体から引き抜こうと柄に手をかけたそのとき、悲鳴のような声が聞こえてきた。
その瞬間、ちらっと尻尾が見えたかと思うと、背中に重い一撃が走った。
あぁ、派手に吹っ飛んだ、と思ったところで、わたしの意識は途切れた。