微妙な距離
[ 1/2 ]
『……あ!オズ!』
「あ、なまえ。おは」
『オズ!おはよ――――!』
どーん。
音がなるくらい盛大に抱きつくと、よろけられてしまった。構わずに頭をぐりぐり撫でる。
『あー!朝から会えるとか幸せ!今日一日がんばれる!』
「なまえ!くすぐったいよ!」
『オズの頭ふわふわー!』
ぐりぐり。
頭を撫でていると、思い切り抵抗される。
それでも諦めずにぐりぐりしていると、後ろからぽかっと殴られた。
『いたっ』
「おい、オズに何してるんだ」
『ギル!女の子の頭を殴るなんて!』
「オズを困らせてるなまえが悪い」
わたしじゃなくてオズに、大丈夫か、と声を掛けるギル。
反射的に、わたしは腕に力を入れた。
「ちょ、くるしっ」
「……おいなまえ、オズを離せ」
『やだねーっ!オズはギルのものじゃありません』
「お前のものでもないだろうが!」
「ちょっ、なまえ、苦しい」
『ギルはオズが大好きだよね、ほんとに』
「何だ、それはどういう意味だ」
『独占しすぎだよ!たまにはわたしと仲良くしてたっていいじゃん!』
「ぐぇ」
「『ん?』」
今、変な声が聞こえたような。
恐る恐る腕の中を見ると、そこには青い顔をしたオズの姿。
『うわああああ!ごめんオズっ』
「おおおおお前!何してるんだ早くオズを離せ!」
「……げほっごほっ、ああ、死ぬかと思った」
『ご、ごめんね、オズ』
「ほんとだよ!二人とも過保護すぎ!俺は誰のものでもないから!」
少し赤い顔でそう拗ねる様子がまたかわいくて、抱き締めたいのをぐっと抑えてぐりぐりとオズの頭を撫でる。
「………」
『えへへー』
「……はぁ」
「お、おいオズ、いいのか」
「いいよ。もう何を言っても聞かないでしょ」
『うん』
「即答だな」
だってオズかわいいんだもん。仕方ない。
「……あ!こんなところにいたのか、オズ!」
「アリス!」
アリスはオズを見つけて駆け寄ると、わたしをきっと睨みつけた。
「……おい、なまえ!その手をどかせっ!」
『………はぁい』
アリスに言われちゃしょうがない。わたしがしぶしぶ手を離すと、ギルが驚いた顔でわたしに問いかけた。
「……こいつの言うことは聞くんだな、なまえ」
『うん。アリスに嫌われたくないもん』
「……俺たちはいいってことか、それは」
『あっ、もう収集の時間になっちゃうよギル!じゃあねオズ!アリス!』
言葉を遮って、ギルの腕を掴む。すると、ギルの慌てた声に混じってオズの「いってらっしゃい」という声が背中越しに聞こえた。
それを聞いて満足したわたしは、嫌がるギルを無理矢理引っ張りながら、集合場所へと向かった。