一年で一番大切な日に

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「なまえさーん!」

『……あ、オズ』

「ちょっと手伝ってくれないかな?」

『?』





いつもの任務帰り、自室に戻ろうとしていたらオズに呼び止められた。
彼が指差す先には、ティーセットやお菓子が乗っている籠が二つ。





「一人じゃ大変でさ。ひとつ持ってほしいんだ」

『いいよ』





なんでオズがこんなお使いみたいなことしてるの、と尋ねたが、オレしか暇な人がいなかったんだ、と笑顔で返された。
怪しい。たとえ忙しくても、ギルだったらオズのために喜んで動くのに。

疑問を抱えたままついていくと、やがてオズの自室についた。





「ありがとう、なまえさん」

『いいえ……あれ、ブレイクとレイムさん、アリス……とギル?』





広い自室に入ると、目の前には見慣れたメンバーが揃っていた。





「!! なまえ!」

『なんでそんな驚いてんのよ、ギル』

「に、にに任務終わりには真っ先に部屋に戻ると聞いていたが」

『オズが困ってたんだもん、助けるに決まってるでしょ』

「……そ、そうか」

「ほら、言った通りでしょう、ギルバート君?」

『え?何、ブレイク』

「いえいえ、何でもありませんヨ。それよりも、せっかく持ってきてくれたんですし、なまえサンも食べませんカー?」





これからティータイムなんデス、と言いながらさっそくケーキを頬張るブレイク。
甘いものを見て一瞬心が揺らぎかけたが、わたしは踵を返した。





『……明日は早いの。お菓子は食べたかったけど、また明日にする』





みんなに背を向けて歩いていると、後ろからギル、早くこれ持って、とか追い掛けろワカメ!とか騒がしい声が聞こえてきた。
怪訝に思って振り返れば、そこにはたくさんのお菓子を抱えたギルがいた。





「あっ……そ、その、だな」

『………ぷっ』





笑いが止まらなくなった。
顔を真っ赤にして、両手にお菓子を抱えて、突然笑い出したわたしに慌てる目の前の彼。
あぁ、かわいい。





『あはははっ。一緒にお菓子食べたかったのはギルだったのね。ブレイクにいきなり誘われたから、ちょっと警戒しちゃった』

「け、警戒?」

『ブレイクがわたしに物をあげるときは、大体裏があるから』

「なっ……そ、そうだったのか…」

『よし、せっかくギルが持ってきてくれたから、ちょっと食べよう!わたしの部屋でいい?』

「!……いいのか?」

『少しだけよ?朝早いのはほんとだから』

「ああ!ありがとう、なまえ」





心の底から幸せそうな笑顔を向けられて、不覚にも胸が高鳴った。

最近任務で忙しくて、全然会えてなかったなぁ、とあらためて思う。実際、二人でゆっくり過ごしたかったのが本音である。
そのことは口に出さずに、お菓子をギルの腕から半分ほど奪い、空いた手を握ると、ギルはこんなみんな見ているところで、とまた慌て始めた。
そう言いながら逆に手を握る力が強くなっていくのが嬉しくて、わたしも強く握り返した。







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