満月の夜のシンデレラ〜moonfesta〜
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不意に離される手。
気が付けば、まわりは真っ暗。照らす灯りは、満月の柔らかい光だけ。
『………え?』
「なまえさん、もうすぐ本物が到着しちゃうよ」
少しだけ悲しそうに笑う彼。
呆けている少女をしばらく見ると、暖かい手のひらの感触が頭を包みました。
「君と踊れたのは偶然だけど、とても楽しかった。また、会えるといいね」
頭のぬくもりさえも離れて、そのまま背中を向ける彼。
行ってしまう。
『まっ……待ってください!』
思わず掴んだ服の裾を、彼は振り払いませんでした。
「どうしたの?」
『………お名前を、教えてください』
ふ、と声がしたかと思うと、満月にも劣らない輝く彼の笑顔が、視界いっぱいに広がります。
あぁ、これは夢なのだろうか。
「……オズ・ベザリウスです」
無意識に溢れた涙。
これは一体何の涙だろう。
『………オズ、様』
「……………また、」
また君と踊りたい。
その声と共に、彼―――オズ・ベザリウス―――は、少女にハンカチと笑顔を残して、去っていきました。