似た者同士
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「今日も平和だなあー」
『そうだね』
只今アリエルの酒場にいるのは、わたしとセイレンのみ。
他のみんなはそれぞれ好きなところに行っているが、わたしたちは特にやることもなくだらりと過ごしていた。
『闘技場は行かないの?』
「一緒に行くやつがいねーんだよ……」
なまえは行かねえだろ?とセイレンはつまらなさそうに目だけをこちらに向ける。
ジャッカルと行きたかったんだね、と言うと変な言い方するな、とセイレンにしては弱い返事が返ってきた。
これは本当に暇をもてあましてるな。
しょうがない、とわたしは席を立った。不思議そうに見上げるセイレンに、手を差し出す。
『闘技場、行こう。退屈すぎてセイレンが溶けちゃう』
「なまえ……!! 」
わたしの手を取り立ち上がったセイレンは、さっきとは別人のようによっしゃーと叫びながら行ってしまった。
わたしはあまり気乗りしないけど、と心の中で呟いてから彼女の後を追う。
すると。
「おっ、ユーリス!」
『え』
セイレンに手を振られた彼は、不機嫌そうな顔でこちらを見ている。
「……何」
「あたしとなまえ、これから闘技場に行くんだよ!ユーリスも行こーぜ!」
『セイレン、言っても無駄だよ、ユーリスは行かないって』
「……僕が答える前に言うなよ」
「なんだよユーリス、女の子に戦わせる気かー?」
「戦いたいのは自分でしょ。僕はもう酒場に戻るから」
なんだよーつれねえなあ、と言うセイレンを間に、わたしとユーリスがお互いに背を向けて歩いていく。
ユーリスは根は優しいくせに人に冷たい態度を取る。
素直じゃないその行動は、まるでわたしを見ているかのように感じられてとても苛つく。
しかもわたしは根が優しいわけでもないから、彼よりたちが悪い。
「相変わらず仲悪いなお前ら」
『そんなことないよ』
「そうか?ならいいけどよ………って、あれは」
『あ』
前方に見慣れた後ろ姿と困る女の人を見付けたかと思うと、セイレンは思いっきり飛び蹴りを食らわせた。
「君の瞳はいつも以上に俺の心臓を高鳴らせぶべらっ」
「ジャッカルてめえ……今日は城に用があるとか言ってたじゃねーか!!」
「……てて、用はもう済んだんだよ! つか今の何だ飛び蹴りか!?威力相当だったぞ!」
「それだけ元気があれば充分だ!こいつも闘技場に連れてくぞなまえ、ってあれ?」