依頼の内容
[ 1/2 ]
セイレンのお酒を調達するために、少し遠くのお店に行ったときのことだ。
「ギャアー!」
いきなり悲鳴が聞こえたのでそちらを見ると、幽霊が出ると噂の貴族の館があった。
こんな夜に悲鳴?
まさか……心霊現象!?
『そんなわけない、あー怖くなってきた』
悲鳴に違和感を覚えたものの、さっさと酒場へ帰ろう、と帰路を急いだ。
---------------
『ただいまー、ってあれ?』
「おう、おつかいご苦労さん」
「おかえりなまえー」
酒場に戻ると、依頼を受けに行っていたエルザ、ジャッカル、ユーリス、クォークがいつの間にか帰ってきていた。
「……おかえり、なまえ」
『ただいま! ユーリスも帰ってきてたんだね』
「…………」
いつもならわたしに小さく微笑んでくれるのに、なんだか顔色が悪い。
怪我でもしたのかな。
声を掛けようとすると、ユーリスは二階へと上がっていってしまった。
『………ユーリス?』
「さっきの依頼がよほど効いたんだろ」
「すごかったもんね、ユーリス」
『あそうだ、帰ってきたら依頼の内容教えてくれるって言ったよね。教えてよエルザー』
「え、俺!?」
約三時間前。
今から依頼受けに行ってくるから、と早口で告げたかと思うと、ユーリスはそのまま酒場を出ていってしまった。
訳がわからずクォークに聞くと、じゃあ帰ってきたら話すから、と諭された。
こんな夜遅くに出ていって、帰りも遅いから、すごく心配したっていうのに!
『……何、言えない内容なの?』
「えっ、そ、そういうわけじゃなくて……」
「俺たちはユーリスに口止めされてるんだ、なまえ」
『は?』
声の方へ視線を向けると、クォークが階段の前の壁に腕を組んで寄りかかっている。
少し呆れたような言い方だったのは気のせいかな。
「だから、俺たちに聞いても何も言えない。聞きたいなら、ユーリス本人に聞いてくれ」
『……うん、わかった』
何かを決心したような表情で、なまえは階段を上がっていった。
それを見送ったあと、マナミアが少し声のトーンを落として質問した。
「……クォーク、ロッタさんの依頼で貴族の館に行っていたのではなかったんですの?」
「そうだ。だが、ユーリスはそれをなまえに知られたくないらしい」
「どういうことだよ」
「それがね、セイレン……、ユーリスは怖いのが苦手だったんだ」
エルザの言葉を聞いて、一斉に全員が吹き出した。
セイレンは涙が出てくるくらい爆笑しているし、あのマナミアも肩を震わせている。
「っはっはっ…………! なんだ、頼りねえなあ、あいつ……っ!」
「あの、ユーリスが………見てみたかったですわ……!」
爆笑している二人を見て、ジャッカルがぽそっと呟いた。
「同情するぜ、ユーリス」