朝の猫
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体育祭が終わり、体育祭後に行われたテストも返却され、次の海原祭までの間日常に戻りつつある日の朝…



「そんな慌てなさんな、ちゃんと腹一杯になるぐらいあるけぇ」



人気の無い中庭の隅に、潤斗は居た。



「ムグッ…!」


「お前さん、話聞いとったんか?ι」



邑が来る少し前から、潤斗はたまにここに来るノラ猫に餌をやるのが日課になっていた。


レギュラーに見付かり、一度は叱られたものの、潤斗はどこ吹く風。

普段から人気の無い自分のサボり場所で、今でも餌をやっている。



「ミャー」



いち早く餌を食べ終えた一匹の三毛猫がしゃがんでいる潤斗の足に擦り寄って来る。



「ん?撫でてほいしんか?」


「ミャア♪」

優しく撫でれば、嬉しそうに目を細め、更に擦り寄って来る。

そんな猫に、つい潤斗の顔も綻ぶ。


だが、潤斗もただ猫に餌をあげているだけでは無い。



「あ、そうじゃ。
お前さん、飼い主が決まったナリ」



ここに来る猫の写真を撮り、ネットで飼い主を募集中している。


その成果があってか、今となってはここに来る猫はこの三毛猫だけになっている。



「今日部活が終わったら飼い主の所行くけぇ、そんくらいの時間に校門に来んしゃい。」


「ニャォ」



抱き上げてた三毛猫を下ろし、木の下に寝転がる。

授業が始まるまでにはまだ時間がある。


今日は早く来てしまったから……

朝練が無いと知らなくて。



「邑のバカぁ…
何で教えてくれなかったんじゃ…!」



軽く人のせいにしつつ、三毛猫を自分の横に寄せる。


その時だった…



―――今寝たら確実に寝過ごすよ。
   あと、風邪引く。




「!!」



潤斗が声を聞いたのは。



「何処じゃ?!」



見回しても、周りには自分以外の人間は居ない。


急に起き上がった潤斗を不審に思ったのか、潤斗の隣で寝る体制に入っていた三毛猫が首を傾げている。



「お前さんは…聞こえんかったんか?」


「ニャア?」


「そうか… まぁ、空耳じゃろうな」



自己解決して、また寝転ぶ。


実は声を聞いたのはこれが初めてでは無い…

最近は無かったが、これまで数回程聞いた事がある。


とにかく、早く眠ってしまおう。

そう思うが早いか、潤斗は早々に眠ってしまった…



「たくっ…
とりあえずSTの10分前には起きとき」



何処からか現れた少年は潤斗の上着から携帯を取り出し、何か操作するとまた潤斗の上着に戻した。



「おやすみ」



少年は愛おしそうに潤斗の頭を撫でた後、また何処かに消えてしまった…



―――ニャア



鳴いたのは、潤斗の隣に居る三毛猫ではなく、静かに中庭から去っていく銀色の綺麗な毛並みを持つ猫。



「ミャオ?」



その光景を、三毛猫は不思議そうに見ていた…





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「やっぱしここに居た…」



邑が寝むっている潤斗の元へ来たのは、朝のSTが始まる10分程前。



「寝るなら教室で寝ろよなー

おーい、起っきろーまた前みたいに腹に肘打ち喰らいたいかー?」



邑が潤斗を起こそうと揺すっている最中、潤斗の上着の中の携帯から音が聴こえてきた。



「なんだ、自分で目覚まし付けてんじゃねぇかよ…

ってか、目覚ましの曲がまさかの最終鬼畜とか。目覚め直後にトラウマ思い出すとか大丈夫かコイツ」



まぁ特撮ソングやら渋い刑事ドラマのテーマソングが流れるよりマシか…


邑が溜め息をついて潤斗の頬を叩いている時、時刻は予鈴まで後5分となっていた。



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