泣いて笑ってバカやって、そんな日々を愛しく想う | ナノ





「…銀さーん。私まだ今週のジャンプ読んでないっす。いい加減貸してくれませんかね」
「駄目だ、お前に貸したら腐る、ジャンプが」
「何それ!!意味不だし!!腐んないよコノヤロー!」
「ゾフィや悟忠が負けたりでもしたらどーすんだよ!」
「しねーよ!主人公は絶対立ち上がってまた立ち向かっていくんだよ!そーいうモノなんだよ少年漫画はァ!!」
「おまっ、釘投げる奴あるかァァァアア!!」


思わず手元にあった釘を投げつけた陽に怒鳴る銀時。
何とか釘は避けたが内心ドキドキである。


「私だって半分お金出してるじゃん!ズルイよ!」
「お前は俺に金出来次第出すつってたろ!だからお前の金は俺の金!」
「どっかのガキ大将みたいなこと言わないでよ!大人気ない!!」
「男の心はいつでも少年なんですー!」
「少年の心を持つ人は下ネタ吐いたりしませんー!」
「分かんねーだろそんなん!拾ってきたエロ本で興奮してる年頃かもしんねーだろ!!」
「都合良いこと言うなコンチクショー!!銀さんの心が少年だと信じてる人なんて全国どこ探しても一人も見つかんないわ!!」




「うるせー!口じゃなくて手動かさねーか!!」
「「すんません」」




遅れたが、陽と銀時は屋根の上にいた。
「集英建設」と書かれたヘルメットをかぶり、作業服を着て首にタオルをかけながら日の照らす中屋根の修理をしていたのだ。

頼まれた仕事だったのだが、ジャンプから始まってずいぶんと話の逸れた言い争いをしだす二人に、依頼主の男が先程の陽のように釘を投げつけてきた。
それから静かになった二人はいそいそと屋根の修理に取り掛かる。


「あ」


そこで、銀時は屋根からゆっくり転がっていく木材の束に気づいた。
下に人でもいたら、危険である。
銀時が屋根の上から下を覗いてみると、不運なことにそこには黒服と黒髪の男が歩いていた。



「おーい、兄ちゃん危ないよ」



銀時が暢気な声で言うと、男が上を見る。
もうそこには木材が落ちてきているところ。



「うぉわァアアアァ!!」



男はそんな大きな声を出しながら咄嗟に木材を避け、思わず尻餅をつく。
その声に気づいて陽も道の方を見て、表情を明るくさせた。


「あっ…危ねーだろーがァァ!!」
「だから危ねーっつったろ」
「もっとテンション上げて言えや!分かるか!!」


そこには、陽が三番目に好きな土方がいたのだ。
しかも後ろには沖田がいるではないか。
陽はすっかり今現在が漫画にあった話だということを忘れていたので、思わぬ主要キャラの登場にニヤける口元を押さえた。



「うるせーな。他人からテンションの駄目だしまでされる覚えはねーよ」



銀時は梯子でゆっくりと屋根から降りて、ヘルメットをとる。
土方は銀時の死んだ魚のような目を見てすぐに思い出す。


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!てめーは…池田屋の時の…」
「?」


「沖田さーーん!!」
「?」


一方、静かに様子を見ていた沖田に向けて陽が大きく手を振ってアピールする。
沖田もまさか陽が屋根の上にいるとは思わなかったので、幸運にも出会えたことに心なしか嬉しそうで軽く手を挙げ応えてやった。


「そーいやテメーも銀髪だったな」
「…えーと、君誰?」


陽と沖田には構わず土方は銀時を睨む。
しかし銀時は人の名前は覚えないようで、土方のことをすっかり忘れているようだった。


「あ…もしかして多串君か?アララすっかり立派になっちゃって。何?まだあの金魚デカくなってんの?」


勘違いしている銀時はわざとなのか疑いたくもなるぐらいだ。
眉間に皺を寄せる土方を気にも留めない。


「オーイ!!銀さん陽ちゃん早くこっち頼むって」
「あーい!」
「はいよ。じゃ、多串君俺仕事だから」


陽だけが最後に沖田と土方に手を振って姿を消し、そのまま二人は仕事へと戻っていった。







05-01