泣いて笑ってバカやって、そんな日々を愛しく想う | ナノ






「余計な嘘つかなきゃよかったわ。なんだかかえって大変な状況になってる気が…」



私たちはそのまま店を出て河原に。
トイレに行った銀さんを待ち一人河原に立つ近藤さん。私たちは橋の上で観戦することになった。
お妙さんは面倒なことになったと溜息をもらしたみたい。


「それにあの人多分強い…決闘を前にあの落ち着きぶりは、何度も死闘をくぐり抜けてきた証拠よ」
(そりゃ真選組局長だし。武装警察だし)
「心配いらないヨ。銀ちゃんピンチの時は私の傘が火を吹くね」
「なんなのこの娘は」


「大丈夫だよ」


傘を構える神楽の横で、この先の展開を知っている私だけ落ち着いていた。
新八、神楽、お妙さんがこちらを見てきたので、私は頬杖をつきながら笑みを浮かべて言う。



「銀さんは負けないから」



あまりにも私が自信満々に言うものだから、新八は最初言葉を失っていた。
だけど戸惑いながら何でかと訊ねてきたので、ネタバレはしないように答える。


「近藤さんも強いけどー、あの銀さんだよ?ほら腐っても主人公だしさ!」
(……惚れられてるのに腐ってる言われてますよ、銀さん)
「ま、黙って見てなよ」


私が新八に笑いかけてから近藤さんがいる河原へと視線を落とすと、丁度お待ちかねの銀さんが姿を現した。

真剣勝負をするかと訊ねる近藤さんに、銀さんは木刀でやると言った。
勿論近藤さんはナメてるのかと眉を寄せる。対して銀さんは焦る様子もなく、笑みを浮かべて言うのだ。



「ワリーが人の人生賭けて勝負出来る程大層な人間じゃないんでね。代わりと言っちゃ何だが、俺の命を賭けよう」


「お妙の代わりにおれの命を賭ける。てめーが勝ってもお妙はお前のモンにならねーが、邪魔な俺は消える。後は口説くなりなんなり好きにすりゃいい。勿論、俺が勝ったらお妙からは手ェ引いてもらう」



──お妙

お妙だって!!


銀さんのが年上だし(お妙さん大人っぽいけど私と一つ違いなんだよね)さん付けもちゃん付けもするわけはないだろうけど、でもこうしていざ聞くと萌えますよねウン。
思えば銀さんがまともにお妙さんのこと名前で呼んでるのほとんど記憶にないや。他の回であったっけ?

いやあ良いですなあ銀妙も中々良いCPだと思いますよ。銀神もいけるけどね!
(あれ?そういや私まともに銀さんに名前呼んでもらったことない気がするぞ!)




「い〜男だなお前」



口元に笑みを浮かべる近藤さんは何だか満足気だ。


「お妙さんが惚れるはずだ。いや…女子より男にモテる男と見た」
「あ、確かに銀さんてそーいう人だね」


男にもモテるよね銀さんは。新八とか新八とか新八とか。
いや…土銀(もしくは銀土)でもいけるけどね。でも個人的には銀新が好きかな!


近藤さんが新八から木刀を借りようとすると、銀さんが自分の持っていた木刀を近藤さんへと放った。
しっかりと「洞爺湖」と掘られたお決まりの木刀だ。


「てめーもいい男じゃねーか。使えよ、俺の自慢の愛刀だ」


通販で買ったやつだけどね。


近藤さんが銀さんの木刀を拾い上げた頃に、銀さんも新八から投げられた木刀を片手でキャッチする。


「勝っても負けてもお互い遺恨はなさそーだな」
「ああ、純粋に男として勝負しよう」


…純粋に、男としてか…
何だか近藤さんが哀れに思えてきちゃうよ。まぁ近藤さんはいつもそんな役なんだけどさ。この人お妙さんへのストーカーがなかったらわりとまともだったんじゃないかなと今何となく思う。そしたらただのゴリラで終わっちゃうんだけどね。


私がgdgdと考えてるうちに、近藤さんは見事銀さんの罠にはまり、木刀で殴り吹っ飛ばされてしまった。
凄い痛々しい音が…したよ…。
横を見れば失望したような顔でいる神楽と、口をあんぐりと開けている新八と、呆然としているお妙さん。


「甘ェ…天津甘栗より甘ェ。敵から得物借りるなんざよォ〜」


「厠で削っといた。ブン回しただけで折れるぐらいにな」



近藤さんの手中からすり抜けた木刀を拾い上げて倒れた近藤さんに見せつけネタばらし。
してやったり顔の銀さんを近藤さんは見上げた。


「貴様ァ、そこまでやるか!」
「こんなことのために誰かが何かを失うのは馬鹿げてるぜ。すべて丸くおさめるにゃコイツが一番だろ」
「これ…丸いか?…」


そして、近藤さんは気絶してしまった。

鼻を高くしてどや顔の銀さんが橋へと歩み寄ってくると、漫画通りに新八と神楽の蹴りを食らっていた。
まぁ…あんな卑怯な手、そりゃ怒るよね普通。
怒ったままの新八と神楽が帰っていくのを見ながら、お妙さんは小さく笑う。
私は新八と神楽みたいに橋から降りる勇気はないので、橋から土手に回って河原にいる銀さんに駆け寄った。



「何でこんな惨めな気分?」
「どんまいです!」



起き上がろうとする銀さんへと笑顔で手を差し出す。
銀さんは私の顔を見つめた後(ちょ、照れる)暫くして手を握り立ち上がった。



「何だかんだで銀さんが一番泥被っちゃいましたね」
「あれ、おかしいな、『銀サンかっこいー』みたいな感じになるはずだったんだけど」
「本気でそう思ってたんなら銀さんてかなりの馬鹿ですよね」
「………おま、ほんとに俺に惚れてる役?」
「はい!馬鹿だろうが卑怯だろうがあたしは銀さんが一番好きですよ!」
「……もういっそ嫌いになってくれていいわ。お前には」


何故だし!







04-02  自分を分かってくれる奴が一人でもいれば幸せだ



(大丈夫ですよ。銀さん格好良いって知ってますから)
(…あぁ、そ)