泣いて笑ってバカやって、そんな日々を愛しく想う | ナノ






「予想以上に花無いなオイ」


会場周りに芝生はあったけど花はあまりないなぁ。漫画では銀さんが2・3本ぐらいのタンポポの花束渡してたけど…あれは時間が無いからあの量かと思ってたけど、花無さ過ぎでしょちょっと。
花屋さんじゃ意味無いしなあ…

せめて銀さんよりは多く花を摘んでみせるぜ!



「何してんだお前」


暫くして大好きな声がして振り向く。どうやら銀さんも花を摘みにきたみたい。
結局花は5本しか見つからなかったけど…いいよね、そこは愛情でカバーするもんね。本数問題じゃないよねウン。

私は花を束にまとめて銀さんにそれを掲げた。


「お花いりますよね!」
「何でお前知ってんの?」
「え」


……あー、そっかその場にいなかったもんねおかしいか。
漫画読んだから覚えてるんですとか言ったら怪しまれるに決まってるよね。まずいよねそれは。


「こ…こっそり私もその場で聞いてたんですよ!お通ちゃんとお父さんの昔の約束!バラ…百本だっけ」
「百万本」
「そう!百万本の花束を持ってお通ちゃんのライブ観に行ってやるっていう約束ですよね!」


バラの本数間違えたけど記憶力宜しくない私にしてはよく覚えてた方だよね!


銀さんはどこか疑いの眼差しを向けてきたけど、とりあえず踵を返して会場へ向かう様子だったので、私も慌てて付いて行った。



会場は見事に慌ただしくなっていた。
新八の親衛隊のメンバーだった天人が今にもお通ちゃんに食い付きそう。おじさんはビニール袋をかぶってステージにいた。

銀さんと神楽が簡単に天人を伸してから、私はステージの側に行っておじさんに向けて小さな花束を放り投げた。


「花があまりなかったんだけど貴方の愛情さえあれば問題なしだよ!」


親指を立ててからそう言い、既に客席を登って会場を去ろうとする銀さん達を追いかけた。
おじさんにも「何でお前が知ってんだ」とか思われてるかもしんないけど、多分もうこれ以降会うことないだろうし良いよね…!



お通ちゃんは約束を覚えてる。
おじさんがバラを持ってくる日を、ずっとステージで待ってる。



親との約束…か。



「……」





『姉ちゃん、いつ帰ってくるんだ?』

『んっとね、三日後かな』

『ほら、準備出来たんなら早く寝なさい!明日早いんでしょう?』

『父さんお土産楽しみにしてるからなー』

『任しといてっ!!』

『ちゃんと買ってこいよな!約束だぞ』

『はいはい』





私も…ちゃんと守ってあげたかったな…──




「よォ、涙のお別れはすんだか?」


会場から出てきたおじさんへと銀さんは優しい表情で声をかける。
大人だとは思えない程にボロ泣きをしているおじさんを見て、何だか私も涙が溢れてきた。


「バカヤローお別れなんかじゃねェ。また必ず会いに来るさ…今度は胸張ってな」






03-04  大事なことっていくつになっても忘れないモンだ



(ちょ、お前何で泣いてんの)
(家族って良いなあと思いまして…)
(………)