泣いて笑ってバカやって、そんな日々を愛しく想う | ナノ





「みなさーん、今日はお通のライブに来てくれてありがとうきびウンコ!」
「とうきびウンコォォォ!!」
「今日はみんな浮世の事なんて忘れて楽しんでいってネクロマンサー!!」
「ネクロマンサー!」
「じゃあ一曲目『お前の母ちゃん何人?』!!」



男の指示のままに来た場所は、なんとライブ会場だった。
ステージには若い女子がステージに立っていて、観客には暑苦しい中年親父が沢山いる。

そう、ここは最近人気沸騰中アイドル寺門通の初ライブ会場なのだ。

ノリノリでライブを楽しんでいる男と神楽と陽に対し、銀時はさっさと帰ろうとしている。
しかし通路を挟んだ向こう側で見慣れた姿を発見し、無言でそちらへ近づいた。


「オイそこ何ボケっとしてんだ声張れェェ!!」
「すみません隊長ォォ!!」
「オイいつから隊長になったんだオメーは」
「俺は生まれた時からお通ちゃんの親衛隊隊長だァァ!!」


そこにいたのは先程別れた新八が。しかも何故かはっぴにハチマキと、服装を揃えた団体の中の隊長を務めているらしい。
木刀を構えて声を張り上げていた新八だが、声をかけられて流石に銀時に気付き驚いた。


「てめーこんな軟弱なもんに傾倒してやがってたとは。てめーの姉ちゃんに何て謝ればいいんだ」
「僕が何しようと勝手だろ!!ガキじゃねーんだよ!!」
「新八反抗期?」


神楽と男と共に盛り上がっていた陽も銀時の後ろからひょっこりと顔を出す。
さりげなく銀時の腕に手を回すがあっさりと振り払われた。


「陽さんまで!」
「だいたいどっかのお天気お姉さんに現抜かしてる人に言われたくないよねー」


腕を振り払われつまらなそうな顔をしながら、陽は銀時を指差した。


「ちょっとそこのあなた達」


女性の声が聞こえてそちらを見れば、階段を降りてこちらへと来る眼鏡をかけた中年の女が立っている。
新八は女を見るなり素早く敬礼した。


「ライブ中にふらふら歩かないでください。他のお客様のご迷惑になります」
「スンマセンマネージャーさん。俺が締め出しとくんで」
「やってみろやコラ」
「銀さん止めた方がいいよ、新八お通ちゃん関係だと色々と怖いから」


陽は漫画で今まで見てきた新八のお通に関する姿を思い出して、ポンと銀時の肩に手を置いた。


「今日はあの娘の初ライブなんだから、必ず成功させなくては…」


そう言って眼鏡のフレームに触れる女…マネージャーは、聞き覚えのある声に振り向いた。
それは、先程まで銀時達がいた客席の方…。
未だに「L・O・V・E・お・つ・う!!」と声を張り上げている男だった。



「……!!あなた…?」



その時、二人の視線がかち合った。




「……あぁ、覚えてる。覚えてるよ」
「何がアル」
「ごめんこっちの話」


会場を出て行く二人の背中を見つめ、静かについていく銀時を見送り、陽は呟く。
神楽がその呟きを耳にしていたようだが、特に深く聞いてくることもなかった。


「…よし!私はお花集めよっと!」
「…?陽、どこ行くアルか」
「すぐそこ。神楽はここにいるんだよ」


神楽に会場にいるように言い残し、陽は会場を後にした。







03-03