「真選組キターーー!!生真選組キターーーーー!!!」 皆が逃げ出す中、私だけその場に突っ立って新撰組の登場に興奮していた。ていうか萌えていた! 沖田さんとはひょんなことで出会えたけど土方さんは初めて見るからね!あれ?ていうかこれ真選組初登場のやつだよね、私沖田さんとフライングの出会いしたのか!フライングの出会いって何だろう! 「あ…」 沖田さんと目が合う。相変わらず格好良いなあとか思いつつ、手を振って挨拶でもしようかと思えば ガチャン、と音をたて 持っていたバズーカをこちらに向けたきた。 「……え」 「…陽、残念でィ。お前、テロリストで俺を騙してたんだな」 「…えぇ!?ちょっ、沖田さん違…っ!!」 完璧に勘違いをされてしまったらしい。ちょっ、ショックで仕方ないんですけど…!! 桂さんの仲間になるんだったら沖田さんの仲間になるわ私は!!奴隷になるって誓ったもんね!でも銀さんいるからこっち側いるけどさ!! 愕然としている私がその場を動けずにいると、誰かに腕を掴まれ引っ張られた。 「何ボーっとしてんだ状況ぐらい見て読め!あれかちょっと前に流行った『KY』か!?」 「だっ、て銀さん!沖田さんが……沖田さんがァァァァアア」 「誰だよオキタって!!」 どうやら銀さんが私を引っ張って逃げてくれてるみたいだけど、私は沖田さんに敵だと思われたことがショックでショックでショックでショックで…… 「奴隷になるって誓ったのにいいいいい」 「あぁ!?お前何そーいう趣味なの!?引くわー」 銀さんがそんなこと言ったなんて気付かなかった私。腕を引く銀さんが足速いから全速力で走ってるけど私は嘆くしかない。 …って、あれ?腕を引く?っていうか今私銀さんに腕掴んでもらってるじゃん!おいしいなコレ!でもどうせなら手を握ってほしかった! 銀さん手大きいなえへへへへ 「オイ」 その低く色っぽい中井さんボイスを聞いてすぐ、私の腕を掴んだままの銀さんが咄嗟に体を倒した。 腕を引かれた私も膝をつきかがむ形になってから、頭上で聞こえた音に恐る恐る顔をあげる。 壁に突き刺さるのは…真剣、だよね、これ。 わわわ私銀さんに腕引いてもらってなかったら危うかったよ…!やっぱこの人凄いわ格好良い好き! 「逃げるこたァねーだろ。せっかくの喧嘩だ、楽しもうや」 「オイオイおめーホントに役人か。よく面接通ったな、瞳孔が開いてんぞ」 そこには予想はついたけど、ていうか声で分かったけど、土方さんがいた。うおお…目の前で見ると迫力あるわあこの人。そして格好良いわあこの人。まぁ銀さんには負けるけど! 「人のこと言えた義理かてめー!死んだ魚のよーな瞳ェしやがって」 「いいんだよいざという時はキラめくから」 立ち上がった銀さんに、再び土方さんが真剣を構える。銀さんも私を後ろにやってから腰にさした木刀を取り出して構えた。 ちょ…戦闘態勢のところ悪いんだけど二人とも…… 「ちょっ、銀さん、あの…避けた方が……ていうか土方さんも避けた方が…」 「あ?…って、お前いつの間にそんな距離とってんの」 「?」 私が二人からある程度の距離をとりながら声をかけるけど、遅かったらしい。 「土方さん危ないですぜ」 沖田さんの声の後、二人がいる場所にはバズーカが撃ち込まれた。 よ…容赦ねえなあの人本当に…! 持ち前の素晴らしい反射神経で二人ともバズーカを避ける。辺りが煙に包まれて二人の姿を見失い焦っていると、煙から突如出てきた銀さんが私の腕を掴んで走った。 新八が手招きをするのが見えて、私たちは新八がいる部屋へと滑りこむ。 襖は幾つもの家具で封じられた。 「オイッ出てきやがれ!無駄な抵抗は止めな!」 土方さんの声がするけど、それに答えることはない。皆の視線…私の視線も、銀さんの髪に集中していた。さっきの爆発によってボンバーヘッドになった銀さんの髪を。 …いや、それはそれで可愛いと思う。毎週その髪型だったら嫌だけど。 「ここは十五階だ、逃げ場なんてないんだよ!」 そんな声を聞きながら徐に桂さんが取り出したのは時限爆弾だった。 ターミナルを爆破するためにと用意されていた時限爆弾を見て、銀さんが無言で桂さんの胸倉を掴む。 「……桂ァ、もうしまいにしよーや」 「てめーがどんだけ手ェ汚そうと死んでった仲間は喜ばねーし時代も変わらねェ。これ以上薄汚れんな」 「薄汚れたのは貴様だ銀時。時代が変わると共にふわふわと変節しおって。武士たるもの己の信じた一念を貫き通すものだ」 桂さんも胸倉を掴んでいる銀さんの腕を掴んで睨みながら反論する。 だけど銀さんの心の中にある一本の柱は…崩れることはない。真っ直ぐで、折れることを知らない、銀さんの決意の柱。 「お膳立てされた武士道貫いてどーするよ。そんなもんのためにまた大事な仲間失うつもりか」 「俺ァもうそんなの御免だ。どうせ命張るなら俺は俺の武士道貫く。俺の美しいと思った生き方をし、俺の護りてェもん護る」 …あぁ、格好良いなあ。 「銀ちゃん」 重い沈黙の中、口を開いたのは神楽でした。 さっき桂さんが銀さんに胸倉掴まれて落とした時限爆弾を手に、てへへと笑いながら言う。 「コレ…いじくってたらスイッチ押しちゃったヨ」 襖を蹴破って飛び出して行った銀さん、新八、神楽をとりあえず追いかける。 銀さんが爆弾を手にしていると知るなり逃げて行く真選組の中から、平然としている土方さんと沖田さんを見る。 沖田さんとばっちり目があって、私はこの騒ぎの中でも聞こえるぐらいに大きい声を出した。 「私…嘘下手だから騙すなんてこと出来ないし、騙す気もありません!!沖田さんが好きなのはホントですから!!」 「──…」 その後爆発音が聞こえ、ハッとして銀さん達が走って行った方を見る。 記憶通り、窓が破られている。そこから下を見下ろす新八と神楽がいて慌てて駆け寄った。 大丈夫のはずだけど、もしも…と考えると不安になるわけだ。 だけど、そんな私の不安を一瞬で消すように、銀さんは漫画通りビルに広告として垂れさがっていた垂れ幕にしがみついていた。 『美しく最後を飾りつける暇があったら、最後まで美しく生きようじゃねーか』 それは漫画の回想シーンにあった銀さんの名台詞の一つだ。 確かに…美しい生き延び方とは言えないけど、でもあれが銀さんだもん。銀さんらしい。 桂さんがきっと今頃、相変わらずの友達に安心感を覚えているように 私も漫画通りの銀さんとこうして過ごせているんだと思えて、安心していた。ああ嘘じゃないんだよなあ、って。そしてやっぱり、私は何度も思うことがあるんだ。 02-05 再会がみんな感動シーンだと思ったら大間違い (やっぱ私、銀さん好きだなあ) |