「天人との戦において鬼神の如き動きをやってのけ、敵はおろか味方からも恐れられた武神…」 「坂田銀時。我らと共に再び天人と戦おうではないか」 そうだよね、この人元は白夜叉なんだよね。…全然想像つかないけど。いや、そのギャップがいいんだよねウン。普段は駄目なのにやる時はやっちゃうから銀さんてとてつもなく格好良いんだと思うんだウン。 「……銀さんアンタ、攘夷戦争に参加してたんですか」 新八は驚いた顔というか、戸惑いを隠せないというか、そんな表情で銀さんを見つめた。 「戦が終わると共に姿を消したがな。お前の考える事は昔からよく分からん」 「俺ァ派手な喧嘩は好きだが、テロだのなんだの陰気くせーのは嫌いなの」 銀さんは面倒そうに頭を掻いて続ける。 「俺達の戦はもう終わったんだよ。それをいつまでもネチネチネチネチ京都の女かお前は!」 「馬鹿か貴様は!京女だけでなく女子はみんなネチネチしている。そういう全てを含めて包み込む度量がないから貴様はモテないんだ」 「バカヤロー俺がもし天然パーマじゃなかったらモテモテだぞ、多分」 「何でも天然パーマのせいにして自己を保っているのか。哀しい男だ」 「哀しくなんかないわ、人はコンプレックスをバネにしてより高みを…」 「アンタら何の話してんの!!」 「私は天パの銀さんが大好きです!!周りの見る目が無いだけなんだと思います!!」 そうだよね皆銀さんの格好良いとこ見てないから分かんないんだよ。実際銀さんに救われて銀さんに惚れてる女キャラ多くね? 銀さんは普段が駄目だからマジなシーンをもっと多くしたら良いと思います。…いやでもそれじゃ銀魂じゃないな。今の割合ぐらいが良いのか。ていうか銀さんモテると私が困るわ。やっぱ今の無し!何だかんだでグータラな銀さんも好きだしね! 私が心の中でそう結論付けていると、ふと視線を感じた。 銀さんからの反応は相変わらずもらえていないんだと思っていたら、何故だか桂さんが私をジッと見ている。 …え、ちょ、何。アホだけど顔は整ってるんだからそんな見つめないで照れる。 「…桂さーん?」 「……女に、溺れたか?だからこの場を離れたくないのか」 首を傾げる私から目を離さず口を開いた桂さん。視線は私なのにどうやら銀さんへと話しているようだった。 この桂さんの問いに、僅かに銀さんの眉がピクリと動いたことに、桂さんを見つめ返していた私は気付かなかった。 「違ェよ」 私には、よく分からない会話だった。 「だいたいこんなアホ女に惚れるわけねーだろ。コイツと付き合うぐらいなら俺ァ牛と付き合うぜ、牛」 「ほーう!牛と!牛と付き合えるんですか!?銀さんは!!牛に負けたんですか私は!!牛とキスするんですか!?牛とうっふんするんですか!!キッモ!!」 「バッカお前言葉のアヤも知らねーのかよ、アホだしバカだなお前は。しかもお前あれじゃん、まな板じゃん。牛の方があるんじゃねーの?」 「ッ否定出来ませんけど!!確かにちっさいですけど!!でもほら揉めば大きくなるみたいだし!!」 「だったら新八にでも揉んでもらえよ!」 「え!?僕!?」 「銀さん揉んでよ!!」 「無いもん揉むなんて無理だね!」 「良いからお前らその話終わりにしろよ!昼間だから!!」 口喧嘩を始めた私たちに新八が怒鳴った。 (…楽しそうではないか) 桂さんは腕を組み目を伏せると、静かに銀さんへと声をかける。 「…銀時、お前は忘れたのか。攘夷戦争で私達は大切なものを失くしたのだぞ」 「………」 桂さんの言葉に、正面にいた銀さんが口を紡ぐ。その時、私はどこか…悲しそうな顔をしたように見えた銀さんから、目が離せなかった。 …攘夷戦争…銀さんは確か、仲間を失ったんだよね…。銀さんの仲間のうち死んだ人とか回想でも出てないから分かんないけど…多分、そうだよね。 「俺達の戦はまだ終わってなどいない。貴様の中にとてまだ残っていよう銀時…国を共に戦った同志達の命を奪っていった、幕府と天人に対する怨嗟の念が…天人を掃討しこの腐った国を立て直す。我ら生き残った者が死んでいった奴らにしてやれるのはそれぐらいだろう」 「我らの次なる攘夷の標的はターミナル。天人を召喚するあの忌まわしき塔を破壊し奴らを江戸から殲滅する。だがあれは世界の要…容易にはおちまい。お前の力がいる銀時」 「すでに我らに加担したお前に断る道はないぞ。テロリストとして処断されたくなくば俺と来い。迷うことはなかろう、元々お前の居場所はここだったはずだ」 その場が沈黙に包まれる。明らかにさっきまでとは打って変わっての重ーい空気だ。 まぁ…この先の展開も銀さんが桂さんに手を貸さないってのも分かってるから、特に私がシリアスムードになるつもりはないんだけどさ。 だってこの後って、確か──… 「!!」 「御用改めである、神妙にしろテロリストども!!」 ほら、真選組が来る! 02-04 |