「寒いなあ…」 服は湿ったままで、夜風にあたればやっぱり体は冷える。 こんな経験中々無いよ…今のご時世どこかしら救いの手があるもの。とりあえずコンビニとかどこか建物に入れるじゃん!でもここではそんな場所が無い…!どこかしらにコンビニはあるのかもしんないけど雨の中外に出ようとは思えないし…。場所分からないだけにうろつく元気もない。 真冬じゃないのがせめてもの救いってところなのかな。銀さんの家に泊まるからにはそれなりの苦労はしないとってことなのか! 「陽さん」 「!」 阪ニィの声!…にすぐ反応して顔を上げると、横の戸から出てきた新八がいた。 新八は心配してくれてるのか、眉を八の字にして私を見下ろしてきた。 「あの、すみません…うちも銀さんも貧乏だから余裕無くて。ご飯とか良い物出せませんけど、よかったらうちに来ますか?雨は凌げますし……」 …うわ、流石常識人…!この漫画の数少ない常識人…!お通ちゃんに関したこいつには関わりたくないけど! 「……ううん!ありがと新八。でもね、私ここに住みたいんだ。迷惑かもしんないけど…………夢、だったからさ」 「………陽さん…」 気持ちは嬉しかったけど、素直に自分の気持ちを伝えて丁重に断った。 新八が銀さんを説得してこようとも言ってくれたけど…何となく、それだけであっさりとあの人が折れてくれるとも思えなかった。それは漫画を何度も読み返し銀さんをひたすらに愛して来ていたファンの単なるカンなんだけども。 雨の降る外に視線を戻した私の視界の端には、その場に立ったまま私を見てる新八がいる。…な、何だろう私の顔何かついてるかな。 不安になってほっぺに手をあててみた時、私の目の前にある物が差し出された。 それは、一つのおにぎり。 「………これ…」 「残り物でこれしか無いんですけど…ご飯食べてないんでしょう?お腹が訴えてたんで」 「…………新八………」 ちょ…何この人超いい人…!! 思わず新八の優しさに涙ぐんで、おにぎりをのせた新八の手を握る。 おにぎりも支えながらぶんぶんと手を振った。 「あ、ありがとう新八…!ホント良い人…!絶対、絶対この恩は忘れないから……!!」 「…とにかく、体には気を付けてくださいね?」 「うん!」 涙を流しながらおにぎりを食べだす私に新八は苦笑いを浮かべながら家へと帰った。 私はこの位置からじゃ傘しか見えないけど、新八を見つめながら何度も何度も感謝の言葉を心の中で叫んだ。 マジありがとう新八天使!!ただのツッコミメガネとか思ってて超ごめん! 「新八の手作りおにぎり…」 ただの塩むすびだけど新八が作ったと思うと違うよね!新八が触った米…どうせなら銀さんが触った米が良かったけどこの際気にしない!美味しいしおk!! 新八は優しいなあ、なのに銀さんのあの態度といったら何だ。しょうがないのかあの人ドSだもんな。私銀さんのためならドMにもなれるんだから!どんとこい! さて、愛しの銀さんはもう寝ちゃったのかな。 あの人私の告白を冗談だと思ってるようだったんだよね。畜生、人生初の告白だったのに。 ――…こんなに好きなのにな。私の想いが本気だってことは、わかってほしいよ。 想いを伝えるのって、こんなに大変なことなの? 01-05 |