いやあ…少し予想外な返答だった。 まぁ簡単には許可してくれないか…!でも負けないぞ私! 銀さんはいつも通りのやる気の無さそうな顔で、小指で耳をほじくりながら続けた。 「ただでさえガキ二人に手負われてるってのに、何でこれ以上手間増やさなきゃいけねぇんだよ。お前ぐらいなら一人でもやってけんだろ、適当に仕事でも見付けろや」 「ぎ、銀さん!」 「………」 手間…手間、か。 まぁお金に困ってるもんね…やっぱり養うお金とか、無いか… 新八給料貰えてなさそうだし…逆によくもまぁ元気に今まで生きてられたというか…それが漫画というか… 「銀ちゃん冷たいネ!」 「そうですよ、帰る場所が無いって言ってんですよ!?」 「だったらお前ら出てくか?大体、どうも信用出来ないしなコイツ」 死んだ魚のような目が向けられる。…やっぱり、基本設定を言うのはまずかったかな。 確かに自己紹介もしてないのに自分のこと知ってる人が私の目の前に現われたら…うん、気持ち悪い。引く。同じ屋根の下に住もうと思わない。ストーカーにしか思えないもん。 「じゃあ…どうしたら信じてもらえますか?」 「無理無理。人間って一度信用失くすとなかなか取り戻すことは出来ないんだ。お前も失くしたんだよ、手遅れだ。一昨日来い」 「何で信じてくれないんですか?」 「お前がうさんくさいから以外何があんだコノヤロー」 「私銀さんが好きなんです!!」 「………………」 私の言葉で、その場の空気が変わったことにすぐに気づいた。 新八が今までに無いぐらいに驚いて目を丸くし、銀さんは少し眉を動かすだけで、神楽は酢昆布をくわえて黙って聞いている。 私はぐっと拳を作って銀さんを真っ直ぐと見つめた。 「だから、銀さんの為なら何でも出来ます!何でも言う事聞きます!だから…」 「ん、じゃあ俺が好きなら俺の為に出てってくれ、な?」 「………ッ!」 そ、そう返されるとは! 銀さんは立ち上がって私の背中を押し、玄関へと促す。 私は銀さんの手の温もりが背中にあることに興奮しながらも、あまりにも銀さんが素っ気無いのでショックを隠しきれずにいた。 「じゃあな」 「ちょっ、銀さん!!」 私の制止も聞かず、外に追い出してすぐに戸を閉めた。 ガチャ、と鍵を閉める音まで外から聞こえてしまう。…そ、そんなに拒絶しなくても…! 「銀さん!私諦めませんからね!!ずっとここにいますからね!!」 夜だということも忘れて必死に叫んだけど、中から返事はなかった。 …銀さん、無視ですか…こんな夜遅くに、雨の中普通外に出す…?なんか銀さん冷たくね?あれ?最初は雨の中放置できないからってここ連れてきてくれたんじゃなかったっけ?そんなに怪しさ全開でしたか私。 振り向いてみても未だに土砂降りの雨。止む気配なんてなくて、これじゃ諦めるどうこうの前に身動きとれないっしょ!あはは!笑うしかないよね!はは…はぁ 思わず溜息を零しながら、私は戸の横で壁に寄りかかるように腰を下ろした。 (…銀さんて、あんなに冷たい人だったっけ…?ていうか…これ夢小説でいえば異世界トリップだよね…?異世界トリップって大抵逆ハだったじゃん。何、私には逆ハ無理だってか) そりゃ私だってモテモテになれるとは思ってないけどさあ! だって今まで見てきた夢小説はさ!大抵が銀さんの片思いで、銀さんは変態っぽくなってて(実際マニアで変態と紙一重なとこあるけど!)ひたすらヒロイン追いかけるけどヒロインはあしらううえに他のキャラからも好かれて銀さん振り回されてばっかででも好きなんだよな…みたいな! こういうパターン結構見かけるんだけど私がたまたまそればっか読んでたのかな!そりゃあ銀さんに愛されるなんて望まないわけがないよねウン! …あれ、でもよく考えてみれば 銀さんって一人の女の人に対して執着するの見たことない。 まぁジャンプだしそういう話が無いだけなのかも。女の人に興味は…あるのかな?キャバクラとか行ってた気がする。…女にだらしがないだけ? ていうか銀さんに恋愛とか、想像つかないか… あくまでここは“原作の世界” だから原作に忠実に、銀さんはそう簡単に女を好きにはならないってことなのかな… ――寧ろ世の中に一目惚れとか存在するもんなの? 顔だけでずっと先まで好きでいられるもんなのかなあ、よく分かんないや。 「……せっかく、銀魂の世界に来たのになぁ」 万事屋に会えたのは嬉しいし満足。でもまだメインキャラの一部にしか会えてない…! 真選組とか桂さんとかエリザベスとか鬼兵隊とかマダオとか会ってないよ!ここらへんは会っておきたいキャラだよね…!! 自分で会いに行くのも手だけど、残念ながら私は彼らの住所を知らない。くそ、人に聞けば真選組の居場所ぐらい分かりそうだけどこの夜、しかも雨の所為で誰も歩いてねえよ…! 桂さんとか銀さんのスカウトに来ないかなあ、あれ、ていうかさっき定春いなかったってことはまだ出会ってないってこと? んー、よく分かんないことだらけだよ。 01-04 |