純愛ノイズレス/溺愛starvation(ユキアカ)





この人は一日に何度同じことを言えば気が済むのか。

「赤也、好きだよ。」
「何で赤也は俺の物にならないんだろうね。」
「ねぇ赤也、俺に好きって言われてどんな気分?」

朝から晩まで何度も何度も幸村部長はおんなじことを言う。
最初はまともに相手してたけど、最近は段々メンドくなってきた。
結局部長には何回言っても無駄だった。何度オレが『好きだ』って言っても、『側に居るから』って言っても、部長には何も届かない。
ただ『嬉しいよ』って言って、笑うだけ。また少ししたら、同じようなことを聞いてくる。

「ねぇ、赤也。」
「赤也は俺と居て、幸せ?」

幸村部長は何度も何度も同じことを聞いてくる。正直頭がおかしい。
でもそれにいつも答えるオレも、もしかしたらおかしいんじゃね?



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「赤也、好きだよ。」
俺は卑怯だ。

「何で赤也は俺の物にならないんだろうね。」
「ねぇ赤也、俺に好きって言われてどんな気分?」
「ねぇ、赤也。」

俺が赤也にこうして問い掛けると、赤也は肯定してくれる。
好きっすよ、とか、残念っすよね、とか。だから俺は赤也に何度も聞く。
赤也は俺のことが好き? 赤也は傍に居てくれる? 赤也は、俺を怖がったりしない?
何度も何度も確かめる。その度に赤也は答えてくれる。
オレ、アンタのこと好きっすよ。アンタが離れない限り傍に居てあげますよ。何をどう怖がるんすか?……テニス以外で。
何度も何度も言ってくれる。俺を好きだと、俺を怖くないと。それが本心から来る言葉であることぐらい、俺にだって分かる。
赤也が俺を愛してくれてる。赤也が俺の傍に居てくれる。目の前にある事実が、俺は、怖い。

「赤也は俺と居て、幸せ?」
赤也はこんなにも俺を愛してくれるのに、俺は赤也を愛していない。
俺は、卑怯だ。





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