5.全てを手にしたニヒリスト（ユキアカ）
君の周りには人が居る。
君が苦手な真田も、君が慕っている柳も、君が懐いてるブン太とジャッカルも、君が不思議に思っている仁王と柳生も、君の周りに居る。
なのに君は何でそんなことを言うのかな。
君は俺の欲しかったものを全部持ってるじゃないか。
信頼も尊敬も友情も、新しい世界だって君の手の中にあるじゃないか。
俺の方こそ何も無いよ。一人だよ。誰も周りに居ないんだよ。
なのに何で君は『全部持っててズルい』なんて言うの。
なら俺にくれよ。君の持ってるものを全部俺にくれよ。信頼と尊敬と友情と新しい世界を、俺に。
そしたら俺が君に見せてあげるよ。自分しか居ない世界を、誰も居ない世界を。
だって俺が持ってるものが欲しいんだろう？ 畏怖と嫉妬と恐怖と、何も無い世界が欲しいんだろう？ だったら、
「…俺に、くれよ。」
腹の底に渦巻く黒い感情が口から吐き出て、俺はまたこうして世界を壊してしまうのだと他人事の様に思っていた。
[End.]
その他目次へもどる
トップにもどる