4.世界を讃えるペシミスト(8937)





貴方に出逢えたことで私の世界は生まれ変わったのです、と言った。
そして、世界なんて下らない、だからこそ死は甘く魅力的なのだと続いた。
前の言葉と次の言葉が繋がっていないがと尋ねると、ええそうですねとの返答があった。
胸の辺りまである銀色のフェンスに正面から上体をもたらせ、向こう側に居る柳生を眺める。
薄い茶色の髪を強風が梳いていく。冷たい空気に晒されている肌は青白く、まるで亡霊の様だと感じた。
世界は素晴らしいですね、貴方が存在しているのですから。いやむしろ貴方がこの世界そのものなのかも知れません。
熱を帯びた言葉ながら、その意味は何処か空疎に響く。まるで自分に言い聞かせている様だと思わず零すと、それについては否定も肯定もしませんと断定された。
話が途切れ、つい視線を下へ下ろす。土の地面はフェンスより程遠く、何者も存在しないその空間には意識せずとも足が竦んだ。よくここから一歩踏み出せるものだと、隣の人間に対し悪い意味で感心した。
そろそろ戻るぞ。そう言ってフェンスから離れると、背後で現実に帰ってくる音がした。



[Fin.]


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