2.首輪を欲しがるリベラリスト(8720)





仁王雅治と云う男は、よく掴み所の無い男だと言われる。
いつも朝練に遅刻してくるかと思えば、稀に弦一郎より早くランニングを行っている日もある。
ある日は餌をせびる猫の前を素通りしたかと思えば、別の日には逃げる猫をわざわざ追いかけてまで猫缶を開けていた。
あいつは自らの行動に偏りが現れないように調整を行っている。その為に俺の予測精度は一向に上昇する兆しを見せない。

「参謀は俺のこと好いとうとね。」
「参謀はいつも俺んこと見てくれとる。」
「んで、今日の放課後2年の女子に呼び出されたんじゃけど、何でか分からん?」

俺の前の席を借りて、得意気に嘯くあいつが腹立たしい。
熱のある溜息を吐き、含意ある視線を向けてくるあいつが腹立たしい。
纏わり付く様な言い方が、空気が不快で、腹立たしい。

「…嫉妬されたいなら他を当たれ。」

そして何よりも、予測が出来ない存在に執着している自分が一番腹立たしい。



[End.]


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