[理解出来ない恋人の性癖](8937:成人パロ)
※受攻逆に見えるかも知れませんが、柳生×真田です。




几帳面に折り畳まれた黒い布が目に当てられる。急かすような指の動きに、仕方なくその端を持った。
ずれる事が無いように強めに結び目を作る。耳に掛かった布を避ける際に、多少気になる声が聞こえたことは無視して手を離した。
見えないであろう相手がこちらを見上げる。正に足下に居るその相手に、真田は溜息で応えた。目隠しをした柳生は不服そうに口を尖らせた。
「何か問題でも?」
「問題しか無かろう…。」
ベッドサイドに腰掛けている真田は後ろ手を付き、もう一度現状を確かめる。
床の上には黒い布で視界を遮られた柳生。服装は中学時代のテニス部のユニフォーム。芥子色のシャツに白いハーフパンツは真田も同じ衣装だった。
そして今自分はそのベッドの足板部に背中を預け、床に座っている恋人の頭を太股で挟むようになっている。肩越しに脚を掛け、ちょうど足先は相手の下腹部に触れられるぐらいの位置にある。
どうしてこうなったとは思いつつも、楽しそうな雰囲気を下から漂わせてくる相手に真田は何も言えなかった。流されている自分も含めて意味が分からんと手を上げ、軽い前傾姿勢になる。
すると程良い所に柳生の頭があった。何かするとまた色んな意味で煩そうなので軽く手を乗せるにとどめた。それでも一瞬だけ伝わった震えが真田の眉間により深い皺を刻ませる。訳が分からん、と真田は投げ出したい気分になる。
しかし一度やると自分で言った以上やらない訳にはいかない。催促するように柳生が名前を呼ぶ。仕方がないと真田は目を閉じて気持ちを切り換えてから、枕元にあった文庫本を手に取った。
栞が挟んであるページを開き、視界を文字で埋める。さて、と真田は一息つき朗読を始めた。


「…『しとどに濡れた唇は荘介を桃源郷へと導く最後の一手だった。』」

読み始める時に一度、そして足を動かし始めた時に一度大きく柳生の体が跳ねた。こいつも人のことは言えないだろうと呆れつつも真田は続きを読む。
「『悠佳がベッドへ誘う。荘介は後ろめたさとそれを上回る好奇心に足が動く。白いシーツの上に横たわると、薄いオレンジ色の光が見えた。そしてそれはいつしか悠佳の顔となり、荘介の頬を長い黒髪が撫でた。……』」
文字を追う神経を半分足へ振り分ける。右足の裏で柳生の下腹部をハーフパンツ越しに軽く触れた。ん、と高い声がしたが聞かなかったことにする。
今度はもう少し強めに足裏を押しつける。するとぎしりと床が軋んだ。そしてハァと上気した呼吸が本の下から聞こえた。集中が乱れないように一息間を置き、作業を再開させる。
あでやかなくちびるがそうすけのむないたに。単語同士の繋がりは感じられない。淡々と脳裏に現れては消える言葉を口に出しては忘れる。内容を理解しようとは微塵も思わない。

しばらくそんな作業を続けていると、段々と足から伝わる感触が変わってきた。柔らかい布の上からでも分かるほどに下腹部が熱と硬さを帯び始めている。心なしか、太股に触れる顔も体温が高くなっているように感じる。真田は首を傾げたくなった。
何回かこういう事をしたことはあるが、毎度の事ながら分からない。男として象徴であり急所である部位を足蹴にされて何故興奮するのか。官能小説を読み上げることはまだ何となく理解出来ないことは無いがと考えるものの、何故女性でなく自分の声に拘るのかという疑問を思い出し、やはり首を傾げる事にした。若干柳生の息遣いが途切れ途切れになったように感じたが、気のせいだと真田は片付ける。
「『その柔肌に指を埋めるとまるで降り始めの新雪のように容易く跡が残った。これから行われる蹂躙の儀式を暗示させるかの如き赤色は荘介を魅了させるに充分だった。……』」
そろそろかと真田は左足を動かす。その代わりにこれまで身体側に押し付けていた右足を離す。文庫本の下に視線を少しだけ遣ると、目隠しをされた頭の向こうに白い膨らみが見えた。姿勢を整え、真田は目を文字へ戻す。

そして両足の裏で膨らみを挟む。その瞬間、何か悲鳴のような呼吸が聞こえ、ふくらはぎの辺りを強く掴まれた。思いもしない反撃につい朗読が乱れる。
一瞬の間の後、掴んでいた手がゆるゆると離れる。荒い吐息には驚いた以外の何かが感じられて、真田は申し訳ないと思う反面溜息をつきそうになった。
「…大丈夫か。」
「あ……は、だ、いじょうぶです……。」
一応尋ねるものの、案の定舌が回っていない。多分全てが終わった後に言われる台詞は想像がつく。全く何も考えてないんだがと内心で呟きつつ、読み上げを再開する。
今度は些か力を抜く。先程の衝撃のせいか、足に触れる箇所は分かりやすいほどに隆起していた。左足の裏にやんわりと押し付けつつ、右足の指先でその形をなぞると熱の籠もった息を吐かれる。長く小さく吐く音を聞くに、真田は少し待つことにした。
「……『悠佳の胸の飾りは自分の存在を示し付けるように荘介の指に触れる。その刹那、荘介は自らが男であることを認識した。白磁器のぬめりを思わせる肌に、何もかもを包み込んでしまいそうな乳房に、牙を立てて自分の物にしたいと自然に思い至ってしまったからだった。……』」
一文を読み終えたところで物音に耳を澄ませる。もう大丈夫かと再び真田は右足の筋肉を動かす。
硬くなった部分に指先を添わせる。関節に意識を集中させると何か押し殺した声がした。そうして足の指を微妙に結んだり開いたりしていると、何度か大きな振動がした。どうも身を捩らせているらしい。足場が揺れ、少々バランスを崩しかけたが気にすることもないだろう。
読み進めながら足の裏の感触で服の位置を確認する。頭の端で空間を思い浮べながら、ハーフパンツの腰ゴムに足指を引っ掛ける。左足を先に差し込むと、恋人が感じているであろう悪寒が直接肌に響いた。場所も場所だが、ここまで来て初めて地肌に触れたからだろうなと真田は冷静に考える。
出来た隙間に右足を入れるとそことなく高い湿度を感じ取った。もうか?と些か真田は驚き、1枚下のそこに指先を当てた。
詰まった息が殺し切れずに漏れる。奥歯を即座に噛み締めたようなその声にああまだかと反射的に思えた。こいつが声を出さないで居れる内はまだまだだと今までの経験則から判断出来たからだろう。
「『荘介の上に跨った悠佳は普段の姿を捨てたかのように振る舞う。最奥に眠る雌獅子の本能を呼び覚ますべく腰を打ち付け、身体全体を淫らに躍らせる。それが一体何を意味するのか理性では分かっているつもりであっても、今この場では何の価値も持たない。それほどまでに非現実的な世界が身近にあったことに荘介はその時初めて気が』」
「ふあっ!」
垣間見えた余裕が多少気に食わず、真田の足先は下着をすり抜け直に熱源に触れる。予想していなかったらしい柳生は直に触れた刺激に堪え切れず、艶めかしい声色で喘いだ。
真田は文庫本を伏せ置き、様子を伺い見る。未だに足先の動きは止めていない。それだけに柳生は自分の一挙一動に対して、著しく敏感になっている。
普段の仕返し、といきたいところだが残念ながらこの相手には仕返しどころか嫌がらせにもならない。抜き身の柳生自身を先ほど同様指の関節で挟むと、またもや脚を掴む手があった。
多分本人は無意識だろう。でなければもっとやれと要求している、あるいはもう止めてほしいと懇願しているのか分からない手の置き方はしない。普段の言動とここに来るまでの経緯を踏まえれば前者であるとは考えなくとも分かる。
が、と真田は右手の指を下に伸ばす。長いが武骨な指は柳生の紅潮した頬を這う。あぁと情けないような吐息に真田は溜息をついた。

「手が邪魔だ。退けろ。」

耳の近くになるよう上半身を更に屈める。意識して朗読時よりも音量を絞って囁くと、予想通り足下の恋人は大袈裟に反応を見せた。
まるで言葉に反発するように身体が跳ね上がる。無言ながらも熱にうなされているような呼吸は収まる気配を見せない。足の裏で触れている部分も心なしか脈動しているように感じられる。
真田はしばらく手持ち無沙汰に思い、柳生の頭を撫でる。透き通るような薄茶色の髪はそことなく汗で湿っている。一房指に巻き付けると、緩やかなカーブを描き、しなやかに毛先が揺れた。いつものように綺麗な髪だと真田は思った。
柳生が1つ大きく息を吸った。それを合図に真田が再び動き始める。
まずは右足だけで上下に擦る。薄い肉の下に充血しきったであろう海綿体を感じつつ、土踏まずの湾曲を添わせる。そして左足で若干固定しながら、右足を下から上へ移動させる。
実質動いているのは表面の皮膚だけだが、どんな刺激に恋人が襲われているかは想像して余りある。それに対応する動作も理解出来ないことはないが、多少派手な気がする。頭に手を乗せ、抱き込むようにしてその様を見る。
だがよくよく考えてみれば今までの行動は狭いハーフパンツの中でのことだった。当然真田の位置からは見える訳が無い。柳生の肩の上に乗せている太股に肘を突き、真田は少し考えた。

「…柳生。」
びくりと柳生が震える。短い返事は高くかすれ、柄にもなく相手が興奮しているのが分かる。その経緯は理解しかねるがなと口に出さず、違う事を問い掛ける。
「そろそろ脱がないと下着が汚れると思うのだが、どうすれば良いだろうか?」

しかし、答えの代わりに思わぬ反応が返ってきた。足の裏に顫動が走り、しまったと真田は舌打ちする。足先で雁首の辺りを探ると想像した通り、粘着質な液体が指に絡んだ。
先行とは言え、ここまで来ていると後は長くない。もう何度かも分からない諦めの息を吐きながら、足を引き抜き、ウエスト部分を指で挟む。
「脱ぐなら脱ぐか腰を浮かせるなりしてくれ。」
「…す、こし…まって……くださ…い……」
肩で息をする柳生。喉仏が動いたのが太股から知れ、床にへばりついていた指が剥がれたのが見えた。
そして一瞬の内に白いハーフパンツが下ろされ、灰色の下着が露になる。それはこの為にわざわざ箪笥の奥からユニフォームを出してきたのかと思う程俊敏な動作だった。真田は頭痛がしてくる。
恋人のこういう事に関しての一種の情熱は、何年も共に過ごしている筈の真田ですら底が見えてこない。こんな事に付き合う俺も俺だがと自分に呆れつつも、真田は両足を元の位置に戻す。
灰色のボクサーパンツの正面にある隙間から左足を差し入れ、中で引っ掛かっていた陰茎を取り出す。外気に触れ一度びくりと揺れたそれは、いつものことながら相当な物だった。
気を入れ直し、真田は右足を柳生の口付近に近付ける。残った左足は横にして取り出したばかりの逸物の根元を踏むように乗せた。
この行為の意図を感じ取ったのか、柳生は見えない筈の真田の右足へ首を伸ばして口に含んだ。舐めると言うよりかは口の中の唾液に浸しているような顎の動きには不本意ながら真田も自律神経に訴えるものがあった。それをねじ伏せるべく、真田は左足首を竿に沿って動かした。
その瞬間、ぴたりと柳生の口が止まる。大きく胸を上下させる隙を狙い右足を外へ出すと、足全体が唾液に濡れてかなりのぬめりを帯びていた。
そのまま右足を陰茎に擦り付ける。カウパー液と唾液が交ざりあったものは潤滑油としては充分に水分を含み、これなら大丈夫だろうとの期待を真田に抱かせた。
伊達に何年もこの男と付き合っていない。準備さえ終われば後は早いものだ。無意識に舌なめずりをして、真田は左足を縦方向に変え、右足先を竿の先に乗せた。



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