×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


velvet glove


がらりと、扉の開く音が棺桶越しにきこえた。まだ五時間目が始まったばかりの時刻であり、ここを訪問してくるのはサボり魔しかいない。ということは、晃牙という線はまず消えた。となると残るは葵兄弟か、あるいは――

と零がぼんやりと微睡ながら思考し、わずかに蓋をずらす。まぶしい蛍光灯の光を予測していたが、当ては外れた。薄暗い部室に入ってきた者は、電気もつけずに何をしているのだろう。

「…………っ、あ、んぁ……」

か細く、悩ましげな声が零の脳を揺さぶった。侵入者は名前だったらしい。しかも――淫らな声を零して、何をしているのだ?

「ふ、ぅ……れ、零さ……たすけて……ぐすっ、うぅ……」

棺桶の中に、暗い影が落ちた。名前が棺桶の傍まで来たらしい。明らかに様子のおかしい彼女に、状況を読みたい零はすぐには答えない。

「あ、ぅ……ど、しよ……零さん、いないの……?」

絶望したような声で呟き、名前はずるずると床にくずおれた。しばらくしくしくと泣いて、それから。

「っ、ふ……ぁ、あ……っ」

くちゅ、と淫猥な水音がした。
零の脳裏には、一瞬でその光景がまざまざと思い浮かんだ。名前が、零の棺桶にもたれ掛かって、自分の秘所に意味を持って触れる姿……。

「っあ、んっ……零さ、ん……たすけて……」

はぁ、と熱い吐息が聞こえた。
それは名前のものであったかもしれないし、零のものであったかもしれない。事実、零のスラックスの前は布地を押し上げていた。下腹が疼くと泣いているのは名前だが、零も大差ない状態だ。

もう零は今この時、完全に『良識ある兄のような存在』の自分を捨て去っていた。

――好きな子の、自慰が見たい。最後まで。

そのために、まずは蓋に手をかけて、少々乱雑に開ける。すると、蓋はがらん! と武骨な音を立てて床に落ちる。

「あ、あっ……!?」
「うむ、愛し子や……我輩はここにおるぞい」

あえておっとりと、優雅にそれを伝える零。当然、名前は青ざめた。しかし零がその紅い瞳を、先ほどまで指で自ら虐めていたそこへと向けると、きゅんっと指が締め付けられる。

「れ、零さ……」
「どうしたのじゃ、続きをして構わぬよ」
「ち、ちがっ……わたし、英智に薬を盛られて、それでっ……」
「逃げてきて、我輩に解毒剤でも求めるつもりじゃったのかのう」

零は一足先に回答を口にしてやると、名前は助かったとばかりにぶんぶんと首を縦に振ってうなずいた。

けれど、零はその安心を突き落としてやる選択をした。

「我輩は全知全能ではないのじゃぞ? 媚薬を抜く薬も、おまじないも、この世にはありはせぬよ」

棺桶から出て、名前の隣に座る。ふぅ、と耳に息を吹きかければ、ビクビクと震えるからだがいとおしい。ただ――震えたのは快感によってだけではないと、分かってはいたが。

「れ、零さん……いや……」
「んん? 名前一人ではできぬのじゃろう?」
「できな……っ! あ、いやぁ、うそ……」

零の長い指が、つぷりと名前の秘所へ入り込んでくる。すでに潤ったそこは、名前の指よりも長く太いそれを抵抗なく迎え入れてくれた。固まった名前の耳を舌で嬲れば、ついに自分が零にどういう目で見られていたのか悟ったらしい。ぼろぼろと、英智に告白された時と同じように涙をこぼした。

「れ、れいさん、やだ、やだよ……」
「知っておるよ……」
「お兄ちゃんだと、思ってたのに、こんな……あぁっ」

とん、と奥のほうを指で突けば、名前の泣き言は喘ぎ声に変わる。そのまま良いところを探り当て、少々乱暴にぐりぐりと擦り付ける。すぐに股が閉じていき、太ももが痙攣しはじめた。

「やだ、あ、あっ、れいさ、」
「我慢せずとも、イっても良いのじゃよ……?」
「やっ、こわい、やめて……」

零の肩に凭れて、快楽を逃がそうと必死に息をする名前。首筋まで真っ赤になり、吐く息も荒く、今にも達してしまいそうだというのに、まだ彼女は零のことを拒もうとする。子供のように、駄々をこねて……

とそこまで考えて、ああ、と零は納得した。

――少女なのだ、名前は。

英智も零も、受け入れられない。なぜならまだ、彼女は『女』でないのだ。恋心を向けられても、彼女は応えられない。女になり、男を慕うのには、まだ時間がかかるのだろう。

彼女がまだ少女なのは、本来ならあの銀髪の青年によって、少しずつ女に変えられていくはずだったから。だから彼女は、まだ少女のままで居られたはずなのだ。

だが……

「あ、っ!?」
「名前や、すまぬ……」
「え、あ、ひぅっ!? あ、や、やだやだ! やめ、ごしごししちゃいやぁ! あ、ひぁぁあっ!?」

割れ目の少し上で、固く閉じられた蕾に触れる。敏感なそこを男の指で擦られると、とたんに名前の表情は一変した。もはや恐怖など感じる余地もなく、ただ、気持ちいいという感情だけが、名前の心を真っ黒に塗りつぶしたらしい。

処女ならばこちらのほうが早く気持ちよくなれるだろうと見込んだ零の予想は当たっていた。名前はぼろぼろと涙を零しながらイった。零のカッターシャツに、彼女の涙がにじんで跡をつけた。

「名前……」
「は、ぁ……はっ、れ、さ……ん」
「良いか、今から我輩はおぬしを抱く」
「だ、く……? ど、して……」

さぁ、零からも送り付けてやろう。

「――俺は最初から、お前が好きだったんだよ」

死刑宣告を。