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『紅月』とクリスマス



「度し難い……! いいか名前、この学院でそのような短いスカートを履いて歩き回るなど、風紀を乱すに決まってるだろう!」
「で、でも〜……」
「でももだってもあるか!」
「零さんが買ってくれたし、勿体ないから……」
「あの吸血鬼、とうとう可愛さ余ってセクハラまでし始めたか……」

敬人はイライラとした様子でそうぼやいた。とうとう、って。別に零さんはセクハラしたつもりはないと思うよ。

「まぁ、ちっとその短さはあぶねえだろうよ。俺も反対だな」
「紅郎くんもそう思うの?」
「ああ。そりゃあ、今日一日俺が張り付いてても良いって言うなら、着たっていいかもしれねえがな。そうもいかねえだろ」
「最強のボディーガードすぎるよ!」
「そりゃどうも……おい神崎、お前いつまでそこでうずくまってんだ?」

紅郎くんが呆れたような声で言った。名前の挙がった颯馬くんはというと、部屋の隅でぎゅっと目を瞑って直立不動の状態だ。ぷるぷるしててちょっと可愛い。

「名前殿っ! 我も蓮巳殿と鬼龍殿の意見に賛成であるっ! そのように短い『すかあと』は、おなごが着るものでは……ッ!」
「でも颯馬くん、私のスカート一回しか見てないよね? もう一回見てみないと、短いかどうか分からなくない?」
「そ、それもそうであるな……。どれ、ではもう一度……!」

固く目を閉ざしていた颯馬くんが、そっと目を開ける。が、また徐々に顔が赤くなっていく。

「や、ややややはり短すぎるのではなかろうか!?」
「おいおい名前、神崎で遊んでやるなって。こいつは初心なんだ」
「えへ、ごめんね紅郎くん。それに遊んだわけじゃないよ?」
「からかっただけ、ってところか? ったく、こいつは『紅月』の赤ん坊なんだからよ、あんま虐めねえでくれよ」
「あ、赤子扱いはやめて頂きたいぞ、鬼龍殿!」
「はは、悪い悪い」

紅郎くんも結局からかってるし。

「はぁ、貴様らもぎゃあぎゃあ騒ぐな。名前、お前はやはり神崎の言う通り着替えろ」
「ええ〜?」
「お前はたまにドジを踏むからな。転んで下着が丸見えになるかもしれんぞ」
「ひ、酷いよ敬人!」

そんなドジっ子と思われてたのか!?

「事実しか言っていない」
「こけたりしないよ!」
「こけずとも、階下から見えるかもしれんが?」

うう、やけに反対してくる……! でも私、一応黒タイツ履いてるし。「タイツ履いてるもん」と敬人に反論すべく口を開いた。

「大丈夫だって!」
「何がだ」
「だって私、パンツ履いてないもん!!」

すんっ……と目の前の敬人の顔がえらいことになった。
え、なんで……ああああ!! い、言い間違えた!

「ち、ちがっ、間違えた! パンツ履いてないんじゃなくて、タイツはいて……」
「名前殿!?!? ここここれを巻いていただきたい! というか失礼する!」
「わわ、颯馬くん!? これ、紅月の衣装じゃ……」

赤い腰布を思いっきり腰にぐるぐる巻きにされた。颯馬くんの腰布でも、ちょうど私のお腹を一周する程度の長さはあったらしい。

「お、おい鬼龍!!」
「お、おう。分かった、今すぐ作る」
「なにを!? パンツは履いてるから作らなくていいよ!?」
「な、なんだそうなのか!? いま履いてないと……」
「タイツ履いてるって言おうとしたの! 間違えた!」
「どういう迷惑な間違え方だ、まったく……!」

心なしか顔が赤く、冷や汗が浮かんでいた敬人が大きく息をついた。ふ、ふぅ……これで異性の友達にパンツを手作りさせるとかいう恥ずかしい話にならずに済んだか。

「……って鬼龍くん、何作ってるの?」

ところが彼の裁縫は止まらない。何をしてるのだろう。

「ああ、健全なサンタの衣装作ってやろうかと思ってな。そのミニスカートは頂けねえだろ」
「鬼龍殿、さすがである! 名前殿の脚を冷やさぬよう、長ズボンでお願いいたす!」
「うむ。上もかっちり第一ボタンまで留めさせてやろう」
「任せろ旦那方」
「お、おお……。まぁ暖かいならいいか!」

▽ 名前 は 鬼龍の衣装 をてにいれた!