×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




『fine』とクリスマス



気が付けば、そこは箱の中でした。
……とファンタジックな物語の予感を感じさせる一文だが、実際そんな楽しいものじゃない。

「きゃあ!? やだ、敬人どこ触ってるの!」
「まっ、待て名前! 誤解だ! お前が俺の上に居るから仕方ないだろう!?」
「うひゃ!? 耳元で喋られるとくすぐったいっ」

何故か私と敬人は、気づけば箱詰めされていたのだ……!
さっきから二人ともどんどんと箱の側面を叩いたりしているのに、まったく出れそうな気配がない。外からはきゃいきゃいと楽しそうな声が聞こえてくるのだが……

「ふっふっふ……☆ 英智、私は貴方の一番喜ぶプレゼントを用意してきましたよ!」
「わあ、楽しみだなぁ。ワクワクするよ。心なしか名前と敬人の声が聞こえてくるくらい」

「貴様ら!! 度し難いっ、ここを開けろ!」

いや、実際声は聞こえてますし。

「ひぇっ……ゆ、弓弦!? あの箱、ほんとに名前と副会長の声がするんだけど〜!?」
「ええ坊ちゃま。私にもはっきりと、名前さまの美しい声が聞こえておりますとも」
「うんうん、名前の声は優しくていいよね! ボクも大好き……♪」

ありがとう! でも聞こえてるなら出して!? この困った『fine』三年生を止められるのは貴方たちだけなんだから! というツッコミは届いているのかいないのか。

「いやあワクワクするなぁ。箱詰めなんてベタ展開に、敬人はどう怒るのかな? 名前もいまどういう態勢で居るのか気になるなあ」
「ええ、見えないものが気になるというその気持ち、わかりますとも! 不可思議があればあるほど、より結果は甘美なものになります……☆ もちろん、プレゼントを開封するタイミングは英智に委ねますよ!」
「おや、これは重責だ。うーん、でも気になっちゃうなぁ。もう少し焦らそうかと思ったけど、開けちゃおうかな」

頭上から聞こえる鼻歌交じりの声があまりにも無邪気で、私と敬人は顔を見合わせて苦笑した。なんだかんだ、私たちは英智に甘いなぁ。