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third wheel


「うまいっすね、このハンバーグ」
「でしょでしょ? 僕のおすすめは、このオムライスなんだけどね! あっ、千夜先輩は何食べるの?」
「私は、うーん……何にしよう? 学食は量が多いから、普段は誰かに半分食べて貰ってるんだけど……」

全部食べ切れそうもないし、捨てることになるくらいなら軽食を買った方がいいかなぁ。と悩んでいる千夜を見て、横からジュンが彼女に手をひらりと振った。

「あ、俺半分食えるっすよ。気兼ねせず、好きなの頼んでください」
「ほんと? お腹壊さない?」
「体鍛えてるんで、そこそこエネルギー消費も激しいんすよ。無理せず食えますから。ほら、さっきからちらちらとオムライス見てましたよね? 食券買ってきてくださいよ」
「えへへ……うん、そうする。ありがとう漣くん!」

嬉しそうに千夜が笑って、ぱたぱたと食券機の方へと走っていった。その後ろ姿を見ながら、ジュンはもぐもぐと自分のハンバーグを咀嚼する。

「……で、さっきから何じろじろ見てるんすか、遊木さん?」
「ひぇぇ!? べ、別にガンつけたわけじゃないからねっ!?」
「いや、俺も別にガン飛ばしたわけじゃねえんで、んなビビらなくても……」

やっぱ人相が悪いんすかねぇ、とぼやくジュンを見て、慌てて真は両手を横に振った。

「そういう意味じゃないからっ!」
「や、別にいいんすけどね。……で、質問に答えてくれますかねぇ?」
「う、うん! いや、その……千夜先輩とデートしてたって、ほんと?」

かなり聞きづらそうに、真が恐る恐る尋ねてくる。
……デート。

いや、まぁジュンは『デートの体でいく』と言ったし、千夜も『デートだ!』と言ったが。ジュンと千夜が恋人かと問われれば確実にノーである。

それでも、真や転校生にとっては『なぜ玲明の人と千夜が一緒に遊んでいたのだろう?』という疑問に繋がるらしい。当然だが。

「ふーん……」
「き、聞いちゃまずかったかな……?」

意味深に声を漏らすと、びくびくと遊木が困り顔で問いかけてくる。一方、彼の隣の転校生は、真顔なんだが、妙に熱心にこちらに『話せ』と視線で訴えている気がした。――どうやらこの二人にとっても、千夜は大事な先輩らしい。

面白そうだ、とジュンはシンプルに感じた。そして少し意地悪い微笑みを浮かべて、真と転校生の方を見据えた。

「一応、一年前からの知り合いっすかね。SNSでは頻繁に話してて、今日のデートも楽しかったっすよぉ?」
「そ、そんな前からの付き合いなんだ!?」
「ええ。ちなみに、今日本当はランチに行く約束もしてました」
「ええ!? じゃ、じゃあ学食に誘った僕ら、完全にお邪魔虫じゃない!?」
「いえいえ、とんでもねえっすよ。お気遣いありがとうございます」
「皮肉にしか聞こえないよ〜! ええーっどうしよう転校生ちゃん、僕らいきなり先方に迷惑かけちゃってるし!?」

真が面白いくらい動揺するので、ジュンは思わず笑ってしまった。彼に引きずられるように、転校生も小さく笑う。

「えぇ!? なんで二人とも笑うの!?」
「あっははは! 別に、日渡さんとのデート邪魔されたからって怒ったりしてませんって話っすよぉ。それに、あんたらの邪魔のお陰で、『またランチ行こう』みたいな次の約束も取り付けられますし?」
「た、確かに……すごいね漣くん、鮮やかな誘い方というか……慣れてるの……?」
「そこ感心されても嬉しくねえっす」

ぐだぐだと駄弁っていると、食券機の方から千夜が帰ってきた。ところが、なぜか彼女は手ぶらである。

「日渡さん? なにも買わなかったんすか?」
「それが……急に英智に……ああ、生徒会長に呼び出しされてね。今からすぐ行かなきゃいけなくって」
「そりゃあ、お疲れ様っすねぇ」
「ほんとだよ〜。あ、午後のレッスンは、防音練習室でやるんだけど……そうだ、真くんたちと一緒について行ったら分かると思うから。漣くんのことお願いしていい、真くん?」
「もちろんですよ! 僕に任せておいてくださいっ!」
「あはは、頼もしいよ。じゃあ、よろしく頼むね!」

そう言うと、千夜は足早に食堂を出ていってしまった。