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「ほんぎゃ〜〜〜〜『Ra*bits』ちゃんかわいいんじゃ〜〜〜バブってしまう〜〜〜」

部室のベンチに座り、一人スマホをライオンキングのように掲げて祈りを捧げてしまった。まぁどうせ誰も見てねえからいいやと思ったが、隣に座っている男は律義に反応してきた。

「はぁ? チョ〜キモいんですけど」
「耳元でうるせえぞ。シャラップ、イズミセナ」
「ちょっとお! 先輩に対してなんて口の利き方な訳ぇ、このオタク!」
「サイコストーカーに何言われたって動じない」
「なんだってぇ、クソ従弟くん?」
「あーあー聞こえないー、『Ra*bits』ちゃん天使」

サイコストーカー……もとい、不本意ながら俺の従弟である瀬名泉の暴言を右から左へシューッ! エキサイティング! はしないが、まぁ早い話が無視である。

まったく、なぜよりにもよってこの従弟がテニス部に……と思ったが、大体ゆうくんのせいだった。いや、ゆうくんは一ミリも悪くないけどね。マジで。あいつと俺は瀬名泉被害者の会としてズッ友だから。

「ねえ従弟なら俺の壁打ち相手になってくんね?」
「は? 壁打ちは一人でやるもんでしょ、頭湧いてんの?」
「ほんと泉オニイチャン(笑)嫌い……話し相手にすらなってくれない……」
「敬意の一ミリも籠ってないお兄ちゃん呼びやめてくんない? 話くらいなら、聞いてあげないこともないけどぉ?」
「ツンデレ乙。やっぱいいっすわ」
「いや話しなよ!?」

やれやれ、うるさい泉オニイチャン(笑)を宥めながら『Ra*bits』ちゃんを眺める作業は大変だぜ。とはいえこのまま無視し続けたらLINEか電話でさんざんネチネチ言われるのは想定済みだ、(萌え語りの)壁打ち相手として使わせてもらおう。

「ねぇ見てよ泉お兄ちゃん。この『Ra*bits』の皆様方の太ももと脚を。大丈夫? こんなのラビッツおじさんに狙われない? あっ、でも今回友也くんは長ズボンなんだよなこれが〜! 最高、イケメン度が増してる……友也さまとお呼びしたい、抱いてくれ……」
「キモイ」
「率直すぎワロタ。ほらこの黄色のリボンとナズナの花可愛くない? 絶対なずな先輩モチーフじゃん。最高……に〜ちゃんと子供たち最高……ありがとう世界……」
「だからキモイって言ってんのぉ、聞こえてる〜? ていうかあんた『Knights』のジャケットもちょっとは見なよぉ!」
「イズミセナのどや顔とか今までの人生で何万回見せられたことか……今さらなんで見なきゃならんのや……」
「チョ〜うざぁい!」
「そのまま黄色のリボンでラッピングしてお返しし……あっ! なずな先輩!」

部室のドアが開き、なずな先輩が入ってきた。放送委員会の仕事が終わったのだろうか。かっこよくて可愛くて有能とか罪深すぎるのでは? やっぱり神に感謝するしかねえ。

なずな先輩は俺と泉お兄ちゃんを見ると、にこっと笑ってこちらに歩み寄ってきた。

「なんだ、泉ちんも名前ちんも、もう来てたんだな!」
「はいっ! 先輩、お仕事お疲れ様です! お昼の放送聞いてましたよっ、もう先輩の声が聴けるだけで脳みそ溶けそう……」
「そ、そうかっ? 名前ちんがそんなに喜んでくれるなら、に〜ちゃんも頑張って準備する甲斐があるってものだな!」
「ひぇ……大好きなずな先輩……尊い抱いて……」
「だっ!?」

なずな先輩が、声をひっくり返して驚いた。

「お、おい名前ちん、そんなこと軽々しく言っちゃらめなんらぞ!」

俺ごときの心配をしてくれるなずな先輩、前世は聖人か何かだったに違いない。あー、光のオーラに溶かされそう。蒸発する。

「先輩かっこいいよぉ〜〜! ありがとう神様〜!」
「うお!? ら、らきちゅくな〜!」
「えっ、らき☆すた!?」
「どんな耳してるわけアンタは!?」

泉お兄ちゃんにツッコまれた。ボケを逐一拾ってくるあたり腐れ縁というかなんというか。

ぎゃあぎゃあ騒いでいると、今度は桃李くんが現れて「おい、奴隷ゼロ号! シングルするよ! ボクのスマッシュでも見てどろどろに溶かされるんだね!」とかなんとか言ってきたので、とりあえず彼についてコートに出よう。奴隷は兎も角ゼロ号って響きがカッコいいから許した。

「じゃあ、俺とぅーりきゅんとシングルスしてきますんで! いってきまーす!」
「ちょっと! 何そのあだ名は!?」
「さーせん桃李様」


「……で、なずにゃんはさぁ、いつまでそこでタオルに顔ツッコんでるわけぇ?」
「う、うりゅしゃい……ああもう、名前ちんが可愛すぎりゅ……」

顔を真っ赤にしたなずなが、赤面した顔を隠すようにタオルで顔を覆っていた。……名前は『Ra*bits』が好きだが、なずなは名前が大好き……ということは、不本意ながら名前の従弟である瀬名泉、ただ一人が知っている情報で。

「抱いてって……に〜ちゃん以外に言って、怖い目にあったらど〜するんだ!?」
「あいつをどうにかしようとか、俺なら120%思わないから大丈夫でしょ」
「泉ちんは従弟だからそう思うだけだろ! ああもう心配になる!」
「この末期患者ども、本気でどうにかなんないかなぁ」

泉がぼやいた。