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優しさで出来ている

「はい、そこ止まりなよぉ〜?」
「えっ?」

スタジオの前を通り過ぎようとしたら、突然中から長い脚が飛び出てきた。

「何、泉?」
「おい〜っす、名前。元気してる〜?」
「おわっ、凛月。お昼なのに起きてるなんて珍し……」

どん! と突然背中に衝撃が。
まあ振り返るまでもない。レオだろう。

「うう、何するのレオ……ってわわ、何々!?」
「わはははは☆ スタジオに一名様ご案内〜♪」
「いらっしゃいませ〜……♪ ほらセッちゃんも」
「やらないからねぇ?」

そう言いつつも、泉が私の腕を引っ張ってきた。ちょ、待てよ! とキムタク風に止めたかったけど、あれよあれよという間にスタジオに引きずり込まれていく。

ええと、私は今日は生徒会との打ち合わせがあるんだけど……? その後は『Trickstar』のレッスンだし、転校生ちゃんの衣装製作も手伝うし、イベント盛りだくさんで。到底、スタジオで遊んでいる暇など……。

と言い訳しようと考えていたけれど、突然身体が宙を浮いたのでそれは叶わなかった。

「えっ、なに、ちょ……レオ?」

意外にも、レオに軽々俵抱きされた。そのままぽいっ、と投げ捨てられた……凛月の寝床に。

「凛月はご丁寧に布団かけてくれてるけど……自分は寝なくていいの?」
「俺より寝なきゃいけない人がいるからね、仕方ないでしょ〜?」
「……誰?」
「あんたに決まってるでしょ〜? そんな青い顔して生徒会室行くとか、許さないからねぇ」

青い顔……私が?
鏡もないので分からないが、言われてみれば頭が痛い、ような……。

「おまえ、風邪ひいてるだろ? 声の感じがちょっとおかしいんだよな〜って、朝から思ってたんだけどさぁ。午後の授業から益々具合悪そうになるし……」
「レオ、朝から気づいてたの?」
「当たり前じゃん。てか、おれが気づいておまえが気づかないのもどうかと思うけどな〜?」
「わっ」

ぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。レオは案外、こういうお兄ちゃんっぽいところがある……というのは、たぶんこの場にいる全員理解していると思う。

「天祥院には俺から電話しとくから。最低一時間はここで休みなよぉ? 言っとくけどこれは提案じゃなくて、強制だからねぇ〜?」
「う……いいのかな……?」
「名前は働き者だねぇ……ふふ、じゃあ俺が一緒に寝てあげる〜……♪ これなら名前は、俺に抱き枕にされたから仕事に行けないってことになるよね……♪」
「とか言って、リッツは寝たいだけだろ〜? ま、いいけどな! おれは作曲しとく!」
「あんたら看病するとかいう発想はない訳ぇ? ったく……」

泉はぶつくさ言ってるが、つまり彼は私の看病をしてくれるということだろうか。優しいなあ、相変わらず。

「風邪は万病のもとって言うんだから、さっさと寝てよねぇ〜?」
「……うん。ありがと、皆」

全員別にって顔してるけど、ほんと素直じゃない人たちだ。……これが『Knights』らしくもあって、かえって安心できちゃうけれど。

凛月がほんとに私を抱き枕にすべく腕を回してきた。……彼らの善意に甘えて、少しばかり眠らせてもらおうかな。