×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

にゃいつの進撃


「ほ、本日はお日柄もよく……」
「にゃあ」
「ひぇっ!?」
「にゃ〜♪」
「かっ、かかか囲まないで〜っ!」

「……お姉さまは何をしているのでしょう……?」

弓道場の傍で、敬愛する先輩と『にゃいつ』の可愛い子猫たちを見かけた。彼女は『にゃいつ』にも大人気らしく、足元に猫たちが寄り付いている。

一見して微笑ましい光景だ。鳴上先輩などいたら、さぞ喜ぶだろう……

「あらやだ、可愛い〜!」
「あっ、鳴上先輩」

ちょうどそこに、部活動の格好を……陸上部のジャージを着た鳴上先輩が通りがかった。彼は司の姿を目視すると、楽しそうな顔をそのままに手をひらひらと振って駆け寄ってくる。

「司ちゃん、あれ見た? 名前ちゃんとかわいいにゃんこ……♪」
「ええ、とても微笑ましい……はずなのですが」
「? なになに、司ちゃんったら猫ちゃんまでにやきもち?」
「ち、違います! そうではなく、名前先輩が……」

なぜだか顔が、ちょっとひきつっている。
可愛いという感じの表情じゃない。どちらかというと、これは……

「あ〜……名前、猫に囲まれちゃってるじゃん……ふふ、超面白い……」
「あっ! 見ろセナ! 猫のほうのセナ、名前の脚にほっぺすりすりしてるぞ!」
「ちょっと! 余計なこと実況しないでよねぇ!?」
「凛月先輩……というか、瀬名先輩にLeaderまで……なぜ弓道場で全員集合して、レッスンでは集まらないんでしょうね……」
「うふふ。偶然ってすごいわねぇ〜? あっ、もしかして運命? アタシと椚先生が、赤い糸で結ばれちゃってるみたいに……♪」

司が真顔でちょっとよく意味が解りませんと返したらかるく頬をつねられた。痛い。

――閑話休題。
とにかく、名前はなぜ、猫に囲まれて怖がっているのか。

「名前先輩は、もしやCatがお嫌いなんですか?」

その問いに、レオがうんうんと頷く。

「あ〜……そうなんだよなあ〜。昔は猫大好きだったんだけど」
「リトルジョンに対してもビクビクしてたもんねぇ? 相当怖がりだよねぇ、チョ〜うける」
「セッちゃん、そう言いつつ顔が『可愛い』って物語ってるからね〜……? ふふ、俺からすれば名前とセッちゃんまとめて面白い感じ」
「はぁ!? べ、別に思ってないからぁ!」
「思ってますね」
「思ってるわねぇ」

後輩たちの中でも満場一致だ。……ともかく、このまま名前を放置している訳にもいかない。

「にゃ〜〜〜♪」
「きゃ〜〜っ!?」

また悲鳴。お姉さまっ! と反射で叫びそうになったが、周囲が割とほのぼのした雰囲気で見守っているので何となく言いそびれる。というかこの先輩たち、割とSだ……なんて思う司だった。

「や、やめてセナちゃん〜っ!」

『セナ』がじゃれるように彼女の脚に飛びついた。相当あの子は名前をお気に召しているようで、じゃれるように何度も何度もてしてしと脚を叩いたりすりすり身体を摺り寄せたりしている。

「わぁ〜、猫のセッちゃんったら大胆〜」
「ていうか台詞の字面ヤバいわねえ、副会長に聞かれたら『セクハラか!?』って言われそう」
「レイが聞いたら血相変えて飛んできそうだな〜! あはは、あのレイが走ってくる!? インスピレーションが湧いてきそうだ〜☆」
「はぁ!? ふざけたこと言ってんじゃな……」

「わ〜、舐めないで! おねがい! セナちゃん!!」
「ああもうっ、これ以上誤解を生むような発言は辞めてくれる!? チョ〜うざぁい!」
「あっ! い、泉〜!! たすけて、囲まれた〜!!」

顔を真っ赤にして、泉が走って行ってしまった。なんだかんだ泉が一番名前に関して甘いのはご愛敬というか何というか。

「ふむ……では名前先輩に事の真偽を聞くためにも、華麗に救い出すとしましょうか!」
「司ちゃん、あんまり名前ちゃんをいじめちゃだめよ〜? 怖くないって言い張るんだからァ」
「ふふ……あとでリッツも、名前の顔に寄せてちゅ〜させよ……♪」
「おまえ、それ救い出してることにならないからな〜? まぁいいけど! よっし、じゃあ『にゃいつ』に突撃ってことで!」

……弓道部前は今日も騒がしい。