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皇帝だーれだ

※下品です。アイドルたちがAVとか言い出す。苦手な方はブラウザバック。

ーーーー

「という訳で、王様ゲームならぬ皇帝ゲームをやってみないかい?」
「どういう訳か意味不明すぎるぞ英智。もっと順序だてて説明しろ、みな困っているだろう」
「むしろその発言、なかったことにしてほしいんですけどぉ?」

ぱんぱかぱーん、と自前のSEとともに英智が取り出してきたのは……割り箸だった。あの御曹司が割り箸を手にしている時点でめちゃくちゃ面白いのだが。

というか集まっている面子が割とよくわからない人選だった。

「そういう訳にもいかんだろう、瀬名。というか……月永まで呼んでいるとは意外だな。そもそもよくたどり着けたな、3Aに」
「言えておるのう。確かに、自分のクラスでさえたどり着けておらぬ時もあるのじゃから」
「えー、何それ。面白すぎでしょ月永くんさぁ。せなっち、とりあえず月永くんの介護は任せたよ。俺は朔間さんで手一杯だから」
「普通に嫌なんですけどぉ……」
「わはははは! 王様ゲーム!? 王様はおれだぞ、だっておれは裸の王様だから……☆」
「って言うと思ったからね、名称を皇帝ゲームにしてみたわけなんだよ」

なるほど、それだけはみな納得できた。そもそもなぜ王様……いや、皇帝ゲームをしなきゃならないのかは謎だが。

「というか、我輩たちがおぬしの遊戯に付き合う義理はないじゃろう」
「ふふ……朔間くんがそういうと思ってね。こちらにも相応の景品を用意しているんだよ」
「景品……おい、生徒会の必要経費で落としたんじゃあるまいな」

敬人が眉間にしわを寄せて英智に尋ねると、彼は違う違うと頭を振った。彼が何か言い訳しようとしたその時、3Aの扉ががらりと開く。

「英智? どうしたの、生徒会室じゃなくてわざわざ3Aに呼び出すなんて」
「ああ、名前。ちょっと三年生の何人かと遊ぼうと思ってね。君には審判をお願いしたいんだ。誰もズルしないように」
「審判? ……わぁ、なんかよくわからないメンバーを集めてるね」

英智が彼女を誘導して自分の隣に座らせると、「景品……生ものだけど文句ないよね」とだけ一言。

つい数秒前に来た名前には理解できないが、その場にいた男子全員に理解は及んだ。相変わらず英智は、そういった言葉遊びがうまい。……褒められることではないが。
「アイドルとして生きてくのに必要なのは、努力だけじゃなくて運も必要だよね? ということで、三回皇帝になった人が勝者ってルールだよ」
「六人もいるのに、三回も王様を引くのか? かなり時間がかかるぞ」
「そうかな? ここにいるのは押しも押されぬ強豪ユニットのリーダーとメンバーだけだよ。豪運を以てしかるべき人もいるはずさ。ね、月永くん」

英智がにこやかに話しかけたが、レオは露骨に目を逸らした。

「……おれ、運ゲーで名前に勝った試しないから弱いぞ」
「ちょっと『王さま』、断言しちゃうくらい弱いの〜?」
「愛し子が異常に運がよかっただけやもしれんしな。むしろ運のない者もいたほうが、ゲームが早く終わりそうじゃ」
「まぁ試しに1ゲームやってみよ。俺としてはデートできれば儲けものだし?」
「はぁ!? こんなハイリスクなのお断りだよぉ!」
「しかしハイリターンじゃ。我輩これにする」

ひょいっと零が棒を一本選んだ。こういう時フットワークが軽いのは昔からだ、なんて敬人は頭を抱えながら、渋々従って一本引く。どうせ英智は参加するまで引き下がらない。

なんだかんだ言って全員にひかせると、英智はとてもご満悦な表情に。

「ふむ。不正行為はなかったね、審判さん?」
「棒引くだけに不正行為も何も……」

正論である。

「ふふ、よーし、じゃあ始めよっか。王様……じゃなくて、皇帝だーれだ!」

ぱっ、と全員が互いの棒を見せる。
可愛らしい羽根のマークが描かれた棒を握っているのは……

「あ、僕だ」
「よりにもよって皇帝様とか、チョ〜最悪……」
「げろげろ、お願いだからキスとか言い出さないでね」
「ふふ、さすがにそれは言わないよ。うーん、そうだなぁ……」

長い睫毛を伏せて、英智がしばし何か考え込む。すると何か思いついたのか、なぜか英智は突然立ち上がって、名前の後ろに立った。

「? 英智?」
「ちょっと失礼」
「え、なんで耳塞ぐの!?」

英智の両手が、名前の耳を塞いだ。そしてそのまま、彼はさらりと一言。

「2番は最後に見たAVの傾向を教えて?」
「ぶっ!? え、英智! なんてことを言い出すんだ、そんなものを見るやつはこの場に……! ……おい、貴様ら。なぜ目を逸らしている」
「みんながみんな敬人みたいに修行僧じゃ、人間は種として死んじゃうから仕方ないよ」

幼馴染二人の息の合った漫才……じゃなくて会話。それはそうと、二番は誰だと英智が尋ねると、手を挙げたのは……

「ぶはっ、あははは! つ、月永くんかい!? 運が悪いって嘘じゃなかったんだねぇ!」
「……」
「ちょ、『王さま』のその無表情怖いから」
「てかさぁ、これ絶対名前ちゃん呼んじゃダメなパターンじゃん。いくら会長様が耳塞いでるからって、漏れ聞こえたら終了だよ?」
「そうかなぁ……? まぁ月永くん、試しに言ってみなよ」

英智のその言葉に、一瞬皆がしん……となる。レオは普段とは真逆の無表情で……というか何かをあきらめた顔で、

「……同級生モノで、おさなな……」
「待ってそれ以上はいけない」

薫が素早くツッコんでそれ以上の暴露をやめさせた。いや、半ば全員予想していたけれどそれ以上は本当にいけない。なんで天祥院英智は名前をこの場に呼んできた。

「皇帝様、人間の慈悲があるなら番号変えてあげてくれるぅ……? もうこの際俺が当てられてもいいから」
「瀬名に同意だ、むごすぎる。仏の慈悲というやつをだな」
「僕は人間扱いされてないの? あと僕は仏でもないし」

えー聞きたかったなぁ、幼馴染モノ。とかなんとか言ってのけながら、英智は渋々番号を変えることにしたらしい。

「しょうがないなぁ。じゃあ2番はやめて5番」
「我輩じゃな」
「朔間さんかぁ。俺の見立てとしては、洋物見てそうだよね」
「なんじゃその偏見? 留学したからかえ?」

レオと違って零は特に様子がおかしくなったところもない。軽口を飛ばすだけの余裕があるらしく、どうやら平和にお題が解決しそうだった。

「じゃあ朔間くん、この皇帝に応えてもらおうか」
「構わんよ。我輩が最後に見たのは……なんじゃったかな、確か……おお、思い出した。学園モノじゃったのう。妹のように可愛がっておる後輩ちゃんが迫ってくるみたいな」
「朔間さん!?」
「なんじゃ薫くん」
「おまっ、それ……! いやもういいよ! このお題終わらせたいから良いけどさ!」
「このクソ吸血鬼……やっぱりそういう目で名前のこと見てたんじゃん……」
「?」
「諦めろみんな、朔間さんは基本的に無自覚だ。過去に俺が貸した漫画で好きと言ってくるヒロインは全部黒髪だし後輩キャラだし妹キャラだった記憶しかない」
「そうか……朔間くん、最高の答えをありがとう。面白かったよ、うっかり名前の耳から手を放して爆笑したかったくらい」

英智はそういって名前の耳から手を離した。名前はすっかりほったらかしにされてうたた寝しているので、どうやら話はまったく一ミリも聞いてなかったみたいだが。

「あ、寝てるね。じゃあ次からは耳塞がなくてもいいかな?」
「いや、貴様にもう皇帝の棒は取らせん」
「えー? それは敬人たちの運しだいだよね。じゃあ二回戦目」

……この後、英智が三回ストレート勝ちしたとか。