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初期3Aとお部屋訪問

「敬人ー! 漫画返しに来たよ!」
「おい、堂々と不要物持ち込みを俺に伝えるな、度し難い」
「うわ、確かに。でもさ、あの裏切った悪役が主人公に手を差し伸べるシーンとか本当にすごく良くて、早く敬人にこの感動を伝えたかったんだよね」
「ふっ、さすが名前だな。実はあの裏切る直前のうんたらかんたらが伏線でどうたらこうたら……」

窓際前列にある敬人の席で、二人仲良く語らう姿が見える。一見すると接点のなさげな敬人と名前だが、あれでも一年生からの友人であり、かなり仲がいい。漫画という共通の趣味が理由だろう、と泉は思っているのだが。

「……ちょっと、何こっち見てんのぉ? チョ〜目障り、料金取るよぉ?」

ものすごくいい笑顔でこちらを見てくる薫と英智が目に余ってしょうがないので渋々泉がツッコむと、彼らは頼んでもないのにペラペラしゃべりだした。

「いや、僕の幼馴染がお邪魔をしてすまないなと思ってね?」
「うんうん、蓮巳くんと名前ちゃんって妙に仲良いよねぇ。瀬名くん大ピンチなんじゃないの〜?」
「それはもう、彼らは一年生の時からあんな感じで……おっと失礼、聞かなかったことにしていいんだよ、瀬名くん」
「何が言いたいのか知らないけどねぇ、あいつの交友関係とかどーでもいいから!」
「嘘乙、というやつだな! 瀬名!」

楽しそうな顔で会話に加わってくる千秋。嘘乙とかどこで覚えてきた、と薫が軽くツッコむと、「名前に教わった!」と元気のいい回答が。

「おや、何気に守沢くんも名前ちゃんと仲良しって感じじゃん」
「そのセリフ、俺の顔見てじゃなくて守沢の顔見て言うでしょ、普通」
「はは、なんだなんだ? 瀬名はまた素直に話しかけられないのか?」
「そうだよ千秋。ヒーローが何とかして助けてあげられないかな?」
「ああもう、あんたらチョ〜うざぁい! 散れ!」

泉がしっしっ、というように片手で三人を払った。もちろん、三人ともそんなことでは引きはしないが。

それどころか薫は一層楽しそうな顔をして、「おーい名前ちゃん、瀬名くんも構ってあげてくれるー?」とか言い出す始末だ。

「泉? どうかしたの?」
「べ、別になんでもないし! さっさと戻って、蓮巳と話せばいいじゃん!?」
「え、ええ? どうしよはすみん、テンプレツンデレ対応受けたんだけど」
「構ってほしいメインヒロインさながらの様相だな」
「サブヒロインはおっとり系女子」
「一昔前は逆パターンも流行っていたがな」
「……とまぁこの通り、彼らが一度漫画談義をし始めると全部こういう風に会話が流れちゃうから、瀬名くん頑張ってね」
「何を頑張れっていうのかわかんないし!」

瀬名くんファイト! とか言い出す英智は、かの悪辣な謀略を図った『皇帝』とは程遠い姿だった。完全に一介の男子高校生の茶化す態度である。

「てか、蓮巳くんと名前ちゃんってほんと、意外な仲良しさんだよねぇ。どこで接点持ったの?」
「英智を経由して知り合ったんだ」
「そうそう。で、よく敬人の家で漫画読んだりして遊んでた」
「ええ、お家にまでお邪魔する仲!? ちょっと妬けちゃうな〜、今度俺が名前ちゃんの家にお邪魔してもいい?」
「おお、良いな! 俺も一度行ってみたいぞ!」

薫の軽妙なトークに、千秋が乗ってきた。名前は可笑しそうに笑って頷く。
「あはは、別に良いけど……何もないよ? しかも途中でレオ入ってくるかもしれないし」
「あ、そこは瀬名くんを連れて行って厄介払いするから平気」
「ちょっと、なんでいつの間に俺まで……!」
「良いね。僕もお邪魔していいかな?」
「ええ!? いいけど、英智一人で大丈夫!? 途中で具合悪くなったりしたら……」
「はぁ……仕方あるまい。俺が付き添う」
「それなら安心かな……てかすっごく部屋狭くなるかもだけど」

一部屋に六人。しかも五人は身長の高い男。これは狭そうだが、その分とても賑やかな時間になりそうだった。