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『Guinevere』


『Guinevere』グィネヴィア

名字名前が『Guinevere』名義で活動しているソロユニット。名前の由来は、栄華を極めた王の破滅を招いたとされる、架空の王妃から。女性的な危うい魅力で観客を惑わせる。イメージカラーはオレンジ。



「ええ? これが僕の紹介文?」
「先輩にピッタリかと思います」
「えっと……さすがに『危うい魅力』とかは恥ずかしいかな……?」

敏腕プロデューサーことあんずちゃんが書いているユニット資料。今まで敬人のお目こぼしで『ソロユニット』という言い訳のもと流浪人生活を続けていた僕だけど、彼女が現れてからその生活にもピリオドが打たれた。

かつて――具体的に言うと一年前、僕が『Knights』と懇意にしていた、しかもレオの幼馴染――という点に注目したのだろうか、彼女が僕に仕事を回してくるようになったのだ。

そもそもアイドルになる気がない僕は、人様に迷惑をかけないようソロユニットを選んだという点もあり、正直最初はありがた迷惑と跳ねつけていたのだけれど、『Knights』のみんなまで熱心に誘ってくるから、結局流されやすい性格に負けて現状にいたる。

「だって先輩の売りはエロスなんでしょう?」
「まぁ、一応……?」

女っぽい顔に、レオより小さい身長……という悲しみしか感じられない僕の特徴だが、そこをあえて利用しているつもりではいる。

英智の作った『ドリフェス』制度は、その特徴上、アイドル科の生徒が主な投票者だ。だから、内部の生徒に恨みを買っていた『Knights』は破滅した。

と僕が一年前に思いを馳せながら考えていたとき、ふと思ったのだ。

客は男しかいない。
なら、男にイケメンアピールするよりは、女っぽいところを見せてムラムラさせたほうが生き残れるのでは?

……とまぁ、我ながらクソみたいな、でも一応筋は通る考えで。

「ストリップもさながらのダンスを見せておきながら、何をいまさら恥ずかしがってるんですか」
「そ、それは仕事だから!」
「しかし、曲が進んでいくと同時に上から下まで脱いでくなんて……」
「待って、それ下に衣装ちゃんと着てるから。僕はそこまで恥知らずじゃないし、露出狂でもないから!」
「かっちりしたスーツの下に、大胆に開けたシャツと、短パン+ガーター+ニーソ――その破壊力を分かっているなんて度し難いです」
「うんうん、僕もそういう二次キャラ好きでさー、いけるかなって……ってちょっと? 転校生ちゃんなんで最近僕の前でボケまくるの?」

若干遊ばれてる気がする……。
まぁ彼女が僕をどういう方向性のユニットだと思ってるのかはよく分ったし、おおむね間違いでもない。寛大な先輩として、許してあげることにしよう。

「転校生、今度のライブなんだけどさぁ……って」
「あ! 泉、やっほ〜」

放課後の2Aに、なぜ三年生の僕がいるのか分からなかったのか、泉が少しびっくりした顔で僕を見た。そういえば今日は、あんずちゃんが「『Knights』と一緒にレッスンしましょう」って言ってくれた日だった……! 危うく忘れるところだったけど、泉のおかげで思い出せた。

「なになに、『Knights』はまたライブするの?」
「まぁねぇ。どこかの流浪の民とは違って、俺たちは大忙しなの」
「ひどいなぁ。じゃあ、今度また一緒に合同ライブしてよ。ほら、あんずちゃんも賛成だって」
「なんで転校生は秒でうなずいてんの? チョ〜意味わかんないんですけど……ってちょっと! な、なんで名前は、いきなり腕組んでくるわけぇ!?」
「? だって、今から一緒にレッスンするんでしょ? 一緒にスタジオまで行こうよ」

ぴったりと泉の腕に体を寄せると、彼は顔を真っ赤にした。機嫌悪いのかなーと思って、宥めるように「ねぇ、いいでしょ……?」とおねだりすると、彼は無言でこくこくと頷いてくれた。うん、泉は基本的に僕のお願いを断らないので、今回も許してくれると思った!

だって一緒に連れてってくれないと、レッスン場所わかんないし。



泉とあんずちゃんについて行って、無事レッスン場所へ到着。すでに『Knights』のみんなは集まっていた。

「連れてきてくれてありがと、泉!」
「べ、別に……」
「えへへ〜。大好きだよ、僕の騎士様」

ハグしようかな、と思って泉の首に腕を回した。背が高くって、ちょっと抱き着きづらい……と思ったら、ひょいっと体が突然浮いた。

「おわっ!?」
「ちょっと、名前? セッちゃんとばっかり盛り上がってないでさぁ、俺の相手してよねぇ……」
「凛月は甘えん坊だなぁ〜。よしよし、いま相手してあげる……♪」

どうやら僕は、凛月に抱えあげられていたらしい。彼は寝床に腰を下ろすと、僕の向きをくるりと変え、向き合う形になった。望み通り、シャツのボタンをゆっくりとはずしていく……と、

「名前お兄さま!? な、なななにをしてらっしゃるのですか!?」
「え? 何って、……脱衣?」
「凛月先輩! 名前先輩に不埒な真似をしないでくださいっ!」
「えー別に、ただ吸血行為と名前のストリップで、食欲と性欲を同時に満たしてるだけ……♪」
「どちらも名前お兄さまで満たさないでください!」
「まぁまぁ司くん、ほらよしよし……」
「うぶっ!?」

僕を大事に思ってくれる優しい司くん。よしよししてあげようと思って抱き寄せたら、ちょうど自分で開いた胸元に思いっきり顔を突っ込ませてしまった。

「おっ、お兄さま、は、はははなしてくださ、」
「あっ、んぅ……そこで、しゃべっちゃいや……」

地肌に吐息は、少々くすぐったい。いやあ、ミスったな。普通に抱きしめてあげるだけのつもりだったんだけど、思わぬアンラッキースケベだよね。野郎の胸元に突っ込むとか地獄かな?

「な、あ、すすすすみません!!!」
「ううん、こっちこそごめんね」
「ス〜ちゃん、トイレ行って来たら?」
「凛月先輩ッ!!」

顔を真っ赤にして怒る司くんは可愛い。けどあんまり弄ったら拗ねちゃうよ、と凛月を窘めようと思ったけれど、ちょうど嵐ちゃんがフォローするように声をかけてくれた。

「あらあら、男の子たちは元気ねー?」
「鳴ちゃんも元気そうだね」
「うふふ、まぁねぇ。名前ちゃんこそ、今日もお肌の張りが抜群にいいわねぇ。ほんとに女の子みたいで、うらやましいわぁ……♪」
「僕、別に女の子になりたいわけじゃないんだから、複雑だなぁ……」

嵐ちゃんにとっては最上級の誉め言葉だろうから、重ねて複雑。

「でもそろそろ遊んでる場合じゃないわよねぇ。王さまが作曲に夢中で動かないから、名前ちゃん宜しくね」
「あぁ……なるほど。わかったよ」
「ええー。名前、血は〜?」
「レッスン終わってからね」
「ちぇー」

不満そうな凛月をなだめて、床で作曲活動をする幼馴染のもとへ。確かに、彼は昔から一度遊び始めると梃でも動かなかったからなぁ……。

「レオ」
「……」
「ねぇねぇ、レオー」
「……」
「うーん、じゃあちょっと実力行使かな」

座り込んだレオの隣に座って、レオの顔を無理やりこっちに向ける。そのまま唇を重ねて、とんとんと唇を軽く舌でたたいた。すると、徐々に口が開いていく。構わず舌を入れてレオのものと触れ合わせると、さすがのレオも徐々に意識をこっちに向けてくれるのだ。

「ん、ふっ……ん!? れ、れお、」
「っ、ん……」

ただ問題が一つ。
レオが今度は、こっちに夢中になって、僕じゃ歯止めがきかないってことかな――!

もう離れようと思ってレオの咥内から舌を引き抜こうとするけど、レオのそれが僕の舌を擦って邪魔してくる。つぅ、と口の端から唾液が漏れてくるから嫌なのに、レオは一向に止めてくれないし、

「ふぁ、やぁっ……いずみ、きて……」
「は、はぁ!?」
「れお、いやっ……とめて……」

なんとか一瞬引きはがして泉に助けを求める。だってレオを引きはがせそうなの、体格的にも泉か鳴ちゃんくらいだし!

「あぅ、いずみぃ……」
「な、何なのもう、ほんとにさぁ!? ちょっと王さま、迷惑だから辞めなよねぇ!」
「おわっ!? ん、んん? あれ、さっきまでおれ、名前とイチャイチャしてた夢を見てた気がするのに、なんでセナに捕獲されてんだー?」

イチャイチャというか、あれは捕食というのでは、とか思ってしまうよね。

「ふぅ……と、とりあえずレオの作曲やめさせたよ、鳴ちゃん!」
「いやいや、どういう止め方してんのよ。エッチねぇ、名前ちゃんは」
「え、えっち!?」
「うらやましいわぁ、アタシにもちゅ〜して頂戴……♪」
「ちょっとナッちゃんずるい。俺が血を我慢してるのに、自分だけキスしてもらうとかさぁ」
「お、お兄さまっ! 司を仲間外れにしないでくださいっ……」
「え、え?」

な、なんかみんな目が据わってて怖いよ? ボケにしては悪質すぎるし!

「泉〜っ」
「今度はなに!?」
「やっぱり僕には泉しか(まともな人が)いないよ……」
「っ――!?」

泉の背に隠れ、ぎゅっと抱き着く。なんなのもう、『Knights』のみんなはどうしちゃったの。ていうか、レッスンしないの?

「……確かに、女性的な魅力とかそんな生ぬるい感じじゃないですね。これはあれです、メス……というか受けですね……」
「あんずちゃん、今なんて!?」
「『Guinevere』グィネヴィア

名字名前が『Guinevere』名義で活動しているソロユニット。名前の由来は、栄華を極めた王の破滅を招いたとされる、架空の王妃から。圧倒的受け力で『Knights』という名の騎士を惑わせる。イメージカラーはオレンジ」

そんな紹介されたら僕の学院生活終了なんですがそれは――!