甘味中毒で何が悪い


甘味中毒で何が悪い



※20万打フリリク企画




2月14日。今日は泣く子も黙るバレンタインデーだ。
朝から女の子たちがきゃあきゃあと楽しそうに友チョコとかいうのを交換し合っていた。
それを横目で見ながら溜め息をつく、俺。
まだ朝だと言うのに既に俺の鞄の中には綺麗なラッピングを施されたチョコレートが5つ。
因みに、俺が貰ったのではない。俺は今年は貰わないつもりだからね。そして俺が用意したのでもない。

全部、

「………今日はシズちゃん休みますように今日はシズちゃん休みますように今日はシズちゃん休みますように」

「………呼んだか」

「ああもうなんで来ちゃうかな!!」


これっ平和島君に渡してほしいの(はぁと)


って貰ったものなんじゃぼけぇえ!!







「??…お前今日機嫌悪いな」

「無意識にイケメンオーラ振り撒いてて勝手に女の子から好かれる誰かさんのせいでねっ全く…」

「それ貶してるのか?……あっそうそう」
俺の隣の席にシズちゃんは座り、薄い鞄を開ける。
ふん、俺の気持ちなんてこれっぽっちも知らないシズちゃんなんか……、

「ほれ」

「?」

「……これで機嫌直せ」

ううっ
やっぱり好き。

「シズちゃん…!」

「んな高いもんは買えねーけど、な」

「いいの!」

水色にブルーのリボンで括られたチョコレートの包みを両手でぎゅっと握って、笑みがこぼれた。ふふふ幸せ。もう何を考えてたのかも忘れるくらい。
あれっ俺はどうして不機嫌だったのかな?

「って違ーう!っわああっ」

「!?」



シズちゃんから貰ったチョコレートを鞄に入れようとした時、既に中にインしてる数々のチョコレートを思い出し、突出に一人突っ込みをして、シズちゃんに向かって5つのチョコレートぶちまけてしまう。
そうだよ、これは。

「……」

「ああう…ご、ごめん…」

「……それ」

「ふ?」

「………お前が貰ったのか?」

机に頬杖を付き少し目を細めて、今度はシズちゃんが不機嫌になる。
あれっこれはもしかして。

「俺がモテちゃって、やきもち?」

俺の少しの悪戯心が、真実を隠した。
都合が良いというか。
今まで俺の女の子に対する嫉妬は数えきれないほどしたから、俺が今までどんな気持ちで妬いていたのか知ってもらうチャンスだと思った。

「………ちげーよバカ」

「またまたあ…結構モテるよ俺?」

嘘だよ。多分俺モテてないよ。

「……ならそれ返せよ。そんだけ貰ってるならいらねーだろ俺のなんか」

「やあだーシズちゃんのが一番だもん」

「………他のも貰ってる癖に」

シズちゃんはふいっと俺から視線を外し、これ以上口を開いてくれなかった。
あれ、俺もしかして空ぶった?そう思って、シズちゃんがこっち向いてくれるように手を振ったり名前を呼んだりしてみたけど、完全にシカト。
黙って携帯を弄り始めたシズちゃんの横顔を見ながら、少しだけ心の奥で、ずしりと重いものがのしかかった気がした。
女の子に預かったこのチョコレートをシズちゃんに渡せなかった罪悪感ではない、また別の…。




あれからシズちゃんとは話していない。
早いものでもう昼休み。俺がトイレから帰ってきたらシズちゃんはいなくなっていた。

「あれっシズちゃんは?」


変わりに新羅がシズちゃんの席に座り、弁当を食べ始めていた。
俺の前の席を借りてドタチンももうパン食べてるし。

「今女の子に呼ばれてどっか行っちゃたよ。臨也がトイレの帰りに出会さなかったら屋上にいるんじゃないかな?」

「えっ誰…」

「ほらあの席の…」

そう言ってドタチンが指したのは、前にシズちゃんが“なる筈だった”席の隣。

「くそ…あのギャルまだシズちゃんの事好きだったんかよ……シバくっ」

怒りで昼飯を食べるも忘れ、俺はシズちゃんを探しに教室を飛び出した。

「臨也の嫉妬も醜いけどさー」

「ん?」

「静雄のも相当だよねぇ」

「…俺は昔からあいつの視線を何度感じてきた事か」

「はは、最初は修学旅行の時だったけな。懐かしいね」

慌てて廊下を飛び出したから俺は何故か気付かなかったんだけど、その時あのギャルは俺の後ろの方でトイレから出てきていたんだ。





「シズちゃんっ」

勢いを付けて屋上への扉を開けると、シズちゃんはフェンスに寄りかかっていた。

「……来たか」

相変わらずむすっとして不機嫌そうだ。でももう俺のことは無視しないんだね。それだけでも嬉しいよ。

「……っ?あれっギャルはどこ?」

普段この屋上は俺らしか使わない(というかシズちゃんが来るとみんな逃げる)誰もいないのだけれど、例のギャルさえもいないとは。

「はぁ?何の話だよ」

「えっ…でも新羅とドタチンが…」

「あいつら臨也に何て言ったんだよ…まあなんでも良いけど」

「ん?……っわ」

あれ俺は新羅とドタチンに嵌められたの?
そう思った間に、シズちゃんは俺に近寄って、手を壁に付き俺を挟んだ。
シズちゃんの影が俺にかかる。

「……どうしたの?」

少し早めに心臓が鼓動を打つ。見上げると、シズちゃんは真剣な表情で俺の目をじっと見ていた。

「………ごめんな…」

「んっ」

そのまま困ったような表情をしたシズちゃんの顔が近付いて、そのままキスをされる。唇に触れるだけのそれを、何回もされて、腰に力が入らなくなってくる。

「あ、ふあ…シズちゃ、」

「っ……」

その様子に気付いたのか壁に付いていた手を今度は俺の背中と腰に回し抱き寄せられ、さらにキスを落とされる。もどかしくて、でも凄く気持ちよくて、嬉しい。

でも、薄く瞼開いた時、シズちゃんの赤く染まった目頭には涙が見えた。どうして、なんで。泣いてるの?

「!」

肩を掴んで無理やりシズちゃんを引き離した。

「ごめん…なさい」

そういう、ことか。

俺が、俺がいけなかったんだ。

「!」

「……朝のチョコ。貰ったっていうのは…嘘」

シズちゃんは、ずっと悲しかったんだよね。

俺がたくさん女の子からチョコレートを貰っていたってことに。

「……は…」

「あれは…シズちゃんにって俺が代わりに受け取ったもので…」

「……嘘吐くんじゃねーよ」

「吐いてない!証拠なら多分、包装の中にシズちゃん宛の手紙とか入ってるから……嘘じゃない!」

「…………」

シズちゃん、なんでっていう顔している。
膨らむ罪悪感と、滲む視界。抱き寄せられた腕はさらに力を込められ、少しだけ苦しい。

でもこの苦しさも、愛おしかった。

「…シズちゃんにやきもち妬いて欲しかった…」

「………」

「あのっシズちゃんを悲しませるつもりじゃなくて!」

「……」

「なんていうか、あんなたくさんの量貰うなんて、俺も複雑な気持ちだったというか」

「………」

「シズちゃんは…っ俺だけが独り占めしたいのに…!」

涙声なんて気にしない。シズちゃんに伝われば、それでもう良い。

「………言っとくけどな、」


シズちゃんの声が耳元で聞こえた。
誰もいないのに、小声で、弱々しく、


「俺だって手前を独り占めしたいって思ってるんだよ」


「…!」


「………て、気持ち悪いよな、俺」

「へ…」

「…やっぱり、今の忘れろ。忘れてくれ」

「ぇえええっやだ!忘れたくない!気持ち悪くなんてない!」

シズちゃんはどうして泣きそうなんだよ。
いつものシズちゃんらしくないよ。

「独り占め、されたい…っ」

「っ」

腕をシズちゃんの頭に回し、少し背伸びをして今度は俺からシズちゃんへキスをした。
まだ2月半ばの屋上は冷たい風が吹いていたから、寒いと言い訳するようにシズちゃんにぴったりくっついて、長い長い口付けを交わす。
シズちゃんのきゅううと瞑るのが可愛くて可愛くて。ああもうヤバイ。俺の理性が危ない。
ちょっとだけなら、いいかな。
そう思って、少し唇を離して、シズちゃんの唇をペロリと舐める。
カッと真っ赤な頬を更に真っ赤にさせたシズちゃんに笑ってしまいそうになったけど、人のことなんか言えない。俺だって火を噴くほど真っ赤に違いない。

「バ、カ……か」

「……バカじゃないもん…」

ようやくシズちゃんの瞳が開かれる。なにその色気ある表情は。誘っているのか。

「……んだよ…」

「もう大丈夫?」

「え?」

「悲しくない?」

「……悲しんでなんかねーよ」

「…あはっ」

俺ってばホント、シズちゃんの頭のてっぺんからつま先まで大好きみたいだ。





そのあとチョコレートは2人で美味しく頂きました



END



すずみ様から20万フリリクで頂きましたっ
すずみ様が運営されているサイトのある作品シリーズでリクエストさせて頂きました^^

胸キュン激しいです←
本当に悶えましたっこの二人結婚してしまえばいいと思←
青アイ静臨おいしいです…っ




素敵な小説ありがとうございました!





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