※r18
腰と脚を支えながら、私の中にゆっくりと入ってきた臨也にぶるりと全身が震えた。はあはあと呼吸を整えるが、その息さえも震える。
慣れることのない圧迫感に、脱がされ脇に放られたセーターを握った。
セックス中の臨也は無口だ。日頃の多すぎる雑念を振り払うように行為に熱中している。口にするのはせいぜい私の名前か、
「ん、…もうちょっと膝の力、抜いて」
より気持ちよくなるための注文のみだ。
感情の機微に敏感な臨也はわざわざ多くを聞かないし、私も言わない。言わなくても気持ちいいことは続けてくれるし、痛いことはやめてくれる。
この男、普段の性格からしてどんな自分本意なセックスをするのかと思っていたが、意外に優しい抱き方をするのだ。
性格が破綻している分、性癖は普通なのかもしれない。
目を閉じて切実な表情で私の中を味わう臨也はやっぱり寂しがり屋なのだと思う。
私は手を伸ばし臨也の胸に触れた。しっとりと熱い汗に覆われた肌から、彼の静かな欲情が伝わってくる。
「…いざや」
私が名前を読んだことを合図に、臨也はゆっくりと律動を始めた。
多少の負荷を感じても、ゆるめず規則的に私を押し上げる。最初に慣らしてしまえば私がちゃんと気持ちよくなれることを知っているのだ。
思った通りに変わっていく身体を感じたのか、臨也は腰を支えたままふっと笑った。服と一緒にプライドを脱いでしまった時だけに見せる、優しい表情だ。
やわやわと胸に手を滑らせながら、私の様子を見て緩急をつけていく。
溶けて締まってを繰り返す中に一瞬苦しそうな顔をした臨也は、脚を抱え直しそのまま一気に体重をかけてきた。
挿入が深くなり思わず上ずった矯声をあげる。
「あぁ…っや!」
「いや?」
「んっ」
「やめようか」
「ちが、」
彼は私の体を解っているが、解ったうえで意地悪を言うこともある。
やめてほしくなくて両脇の腕をギュッと掴むと、彼は満足したように上半身を落とし今度は顔の横に肘を付いた。近付いた背中に手を回し、早くなっていく動きに必死についていく。
目の前で揺れるこめかみからポタリポタリと、汗が数滴落ちてきた。
「は…ぁ、名前」
耳元にかかる臨也の乱れた息がなけなしの理性を溶かし、もうわけがわからなくなってしまう。
眉を寄せ少し難しい顔で感じている臨也は、やりきれないくらい色っぽかった。がつがつした男の本能にまぎれた、少年のような必死さを隠しきれていない。
正常位が好きなのは私の顔を見るためだと言っていたが、私だって臨也の気持ち良さそうな顔を見るのが好きだ。
ドキドキと苦しくなる心臓を誤魔化すように手の甲を噛んだ。が、すぐにどかされてしまう。自分の声が甘過ぎて恥ずかしくなる。
震えはじめた脚に気付いた臨也は、イっていいよと言うように太股を撫でた。だめ押しの刺激に我慢がきかない。
びくびくと数回に分けて痙攣した私の身体を押さえ込みながら、果てていない臨也は腰を止めてはくれなかった。快楽がはじけ全身の自由が効かなくなった私は、されるがままに揺さぶられるしかない。
「ん、ごめっ、もうちょっと」
そう言って数度深く腰を打ち付け、息を止め臨也も射精する。
背を丸め目を閉じたまま大きく深呼吸をすると、私の中から自身を抜いた。
のろのろとゴムを処分し、ばたりと隣に倒れ込む。眠たそうな顔でちらりと私を見て、何回か髪を撫でてくれた。
「…ちょっと、寝る」
言うが早いが彼は目を閉じた。
「起こす?」
「頼む。2時間」
私は多弁な恋人が寡黙になるこの一時を、たまらなく愛しく思う。
2011.11.30