顛末
※r18




いつもと違う音がして、なんだろうと布団の中で考えた。
一度ならそのまま目を閉じてしまうつもりだったけれど、考えているうちに二度三度と続いたため仕方なく起き上がる。
音の方向を辿り、人為的な気配に少し警戒心を高めながら、そろそろとしゃがみ込んだ。

「俺だ」

予想していないタイミングで、思ったよりも近くから響いた人の声にびくりと肩を震わせる。
音を殺していたこちらの努力は通じなかったらしい。動物のように敏感な人だ。私は使っていない物置部屋の小窓に手をかけ、私と彼を隔てている木造りの雨戸をそっと開けた。

間を置かず身を屈めるようにして入ってきた高杉さんの手からまず刀を受け取り、畳の上に置く。反りの浅い長刀は見た目よりも重い。暗い部屋だから確かなことは言えないが、怪我はないようだった。

「…どうしたんです、こんな遅くに」
「久しぶりだな」

私が寝ていたことなど彼にはどうでもいいらしい。さっさと立ち上がり風呂場を借りてもいいかと問う男に、少し待たないと湯は張れないと答えた。

「張らなくていいんだよ。冷ましてえ」
「水でも被る気ですか」
「おめェを抱いたっていいんだ。ただ寝てたようだからな」

驚いた。一応気を使っているらしい。

「結局抱くなら、今でも別に」

言うと、彼は振り返り少し考えるそぶりをしてから私に手を伸ばす。
向き合った高杉さんはやはり常人とは違う怒気のようなものを纏っていて、本能的に身を引きそうになるがもう遅かった。

部屋の入り口に押し倒され、寝巻きの裾を割られる。普段足を踏み入れていない畳にはうっすらと埃が溜まっていて、掃除を怠っていた事を後悔した。
秘部だけをほぐされ、押し入られ、腰からつま先にかけてが引き攣るように震える。身体を楽にするため胸を上下させると、吐く息に混ざって短い嬌声が続いてしまう。

「相変わらずお前は、処女みてぇな声を出すんだな」

愉しいともつまらないともつかない口調でそう言うと、高杉さんは私の肩を掴み起こし後ろを向かせた。そのまま身体を揺すられ、久しぶりの行為に慣れるまで必死に畳の目を掻く。視界の先にしんと横たわる刀が見えた。黒い鞘が滲むように揺れる。

高揚した彼の身体はただただ熱い。
何処かで何かをしている彼がふと女を抱きたくなった時に、私の元へ来る確率がどれくらいかなんてどうでもよかった。彼は生きているし、私に触れている。それがこれからも続くとは限らないからこそ、確率なんてものはどうでもいいのだ。

「…っ。……おい、」

私の中で果てた彼が、そのままの体勢で気遣うように背中をさすった。息を整えながら大丈夫だと頷く。彼が膣内に吐精するのは初めてだった。
少し哀しくなる。

「どこかに、」
「あ?」
「行こうとしてるの?」

どこにも行き場所なんてないという顔をした彼の雰囲気が、今日は少し違っている。
高杉さんは死ぬ気なのだろうか。

「そうだなァ…」
「……」
「長かったかと聞かれりゃそうでもないが。漸く、だ」

何が、とは聞けなかった。
ぽたりと背中に垂れたのが汗か涙かも解らない私に、彼の行く場所など解るはずがなかった。

「やっぱり風呂借りるぞ」
「…はい」

泣かないでほしい。死なないでほしい。そう伝える勇気が何よりもほしい。



2012.5.6

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