なんだかんだと立て続けに、彼女の接近を許してしまっている自分に呆れていた。
いくら冷たくしようとも、彼女らの年齢というのはめげる事を知らないから厄介だ。若者のエネルギーは底無しである。それに真っ向から向き合っていれば、大人はもたない。ならば半身でかわし続けるしかないだろう。
そのスタンスがいけなかった。
数度かわし損ねただけで、いとも簡単に彼女は自分の懐に入ってきてしまっている。このままでいい訳がない。
私はここ数ヶ月、体勢を立て直すが如く彼女を突き放し続けている。
自室や研究室に入れないどころか、視界にさえ出来る限り入れないよう努めた。いかなる交流をも最小限に切り捨て、ようやくこれが本来の自分だったということを思い出す。
彼女にしても、最初は自分が何かしてしまったのかと原因を気にしていたようだが、そのうちにお互いの立場を思い出したのか、おとなしくなった。この距離を保っていれば、以前以下の関係に戻るのも時間の問題だろう。若者の熱は冷めやすく、また火種はどこにでも転がっているのだ。そう思っていた。
だからイースターの夜、廊下を男と二人でフラフラと歩いている名前の姿を見かけた時も、大して驚きはしなかった。失望は多少、していたと思う。勝手なものだ。
そんな自分に首を降りながら目を閉じる。そしていつものように彼女を視界から外そうとし……おかげで、うっかり見逃してしまうところだった。覚束ない彼女の足取りと、男の持つ包みに踊る「ハニーデュークス」の文字を。
足早に踵を返し、背後から二人に声をかける。
名前はまた背中の大きく開いた白いドレスを着ていて、そこに馴れ馴れしく回っている男の腕を叩き落としたい衝動にかられたが、なんとか抑えた。
「もう消灯だ。こんな所で何をしている」
「消灯時間にはまだあと5分あります」
男子生徒はいけしゃあしゃあと応えた。どこかで見覚えのある顔だと思ったら、去年のクリスマスに食堂で名前を誘っていた男である。
……これだからグリフィンドールは嫌いなのだ。因縁の寮を憎む理由がまた一つ増える。
「君は5分で東塔の最上まで登り談話室を抜け、自分のベッドへ入れるというのかね?」
「でも、今日はパーティーですし、まだみんな」
「減点されたくなければ、さっさと寮へ戻りたまえ」
男子生徒はまだ何かを言いたそうにしていたが、諦めて名前の手を引こうとした。私はすかさず彼女の肩を押さえる。
「彼女はレイブンクローだったと記憶しているが。逆方向だろう。自分の寮へ戻れ、と言っているのだ。それと、その包みは校内への持ち込みが禁じられている品だから置いていけ」
「そんな……!これはただのお菓子です」
「グリフィンドール、5点減点」
「……っ」
悔しそうに去っていく男子生徒の背中を睨み、その目を名前へと移した。彼女はぼんやりと眠たげな視線を宙にさまよわせている。
ため息を吐き、その手を取る。彼女は本当に私にため息を吐かせるのが好きなようだ。
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