140 | ナノ




「消えろっ!」

がしゃん、とカップの割れる音。叫び声。

「僕の前から消えてくれ…っ!」

今にも泣き出しそうな子どもの声。彼のことを宥めるような、そんな穏やかな声も聞こえてくる。だが、子どもはそんな声もお構い無しにただ叫んでいた。消えろ、消えろ。そればかりを、唯一の願いかのように。

音の出処を確かめる。そこは酷い有様だった。カップが割れて粉々になった部屋。布団でも裂いたのだろう、羽毛が散らばっている。嵐が通り過ぎたようなその部屋に、知らず溜め息をついた。

「嫌いだ、お前なんて、大嫌いだ」

顔を覆い、膝を抱え。小さくなった子どもが、そこにいる唯一に浴びせる言葉。

彼は尚も穏やかな声で子どもをあやし続けるが、それでも子どもは激しく頭を振って彼の言葉を聞き届けようとしない。消えろ、嫌いだ。その二言を繰り返し、繰り返し。子どもの癇癪。笑ってしまう。

「要らないのなら、僕が貰う」

だから僕は、きっと子どもに投げ捨てられたのだろう彼を拾って嘲笑する。

「なっ…、」

「消えろと言っていたじゃないか。必要ないんだろう。だから僕が貰う。ちょうど新しい剣が欲しかったところだ」

手に馴染む彼を携えて。僕は嘲笑う。みっともなく喚くしかできない子どもを見下ろして、見下した。僕と同じ色をした子どもの瞳が、みるみるうちに絶望の色へ染まっていく。

ああ、いい気味だ。僕には二度と手に入らないものをすべて持っているくせに。癇癪を起こして棄てようとする。己が一時の感情で手放そうとしたものがどれほどかけがえのないものか、知るといい。

「じゃあな」

「待て…っ!」

子どもの声に耳を貸すことはない。せいぜい絶望するといい。僕は笑った。

【っていう悪夢か何か見てむしゃくしゃしたままシャルと喧嘩してつい言い過ぎちゃうリオン坊ちゃんとそれを見て呆れて意地悪しちゃうジューダスくんとリオン坊ちゃんが謝りに来るまでジューダスくんとお喋りするシャルのお話が読みたいですよろしくお願いします】

20200324








「もしもし、ジューダス。さびしくない?」
「ああ」
「もしもし、ジューダス。さびしくないかしら?」
「ああ」
「もしもし、ジューダス。さびしくないか?」
「ああ」
「もしもし、ジューダス。さびしくないかい?」
「ああ」
「もしもし、ジューダス。さびしくない?」
「ああ」

「ただいま、ジューダス!さびしくなかった?」
「いいや、さびしかったさ」

20200329












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