140 | ナノ




次に眠ったとき、そのまま目が覚めなければいいのに。なんて、くだらないことを考えた。
目が覚めなければ戦わなくていいし、現実を見ることもしなくていいし、この幸せな瞬間が永遠に続くのだ。そんなことも考えた。オレに寄り添って眠る、小さな二つの温もりを手放さなくていい。なんて素敵なのかと。

ただ、目覚めないとなると、今この瞬間以上の幸せを望めないことになる。もしかしたら、温もりを手放すことなく、父親も、親友も取り戻す方法があるかもしれない。もしかしたら、ハッピーエンドが待っているかもしれない。ないかもしれない。それでもやっぱり、あるかもしれない。ないかも、しれない。

あるかもしれない、ないかもしれない、そんな未来を夢見ることも、目覚めなければできないのか。ふと笑いが込み上げる。
いつからこんなことを考えるようになったんだか。すぴすぴと呑気な寝息を立てる子供たちの頬を軽く抓って、お前らのせいなんだから責任取れよな、なんて。囁いて、目を閉じた。

20160613








【いろいろ片付いたあとに「幸せすぎて毎日笑いが止まらないせいで頬が痛くなるんだよ!お前らのせいだからちゃんと責任取れよ!」ってアルルキちゃんに言ったらぎゃん泣きされて困り果てるシオンさんくそかわ】

「な、何も泣くこと…っ!」
「ばかああああ!ロスさんのばかああああああっ!」
「せきっ、責任、取るに、決まってるだろ!っシオンの、ロスの、ばかあああああ!」
「「うわあああんっ!」」
「っ泣くな!泣き止め!悪かった、責任取れとか言って悪かったから!」
「そういうことじゃないよばかああっ!」

「責任取るよ!一生離してやんないもん!ずっとずっとロスさんの隣にいるもんっ!」
「お前が嫌だって言っても、絶対絶対離してやらない!覚悟してろよ!」
「…はいはい。覚悟してます。だからほら、その不細工な顔、なんとかしてくださいよ。鼻水拭いて。そしたらほら、ケーキでも食べに行きましょう」

20160613








「なんで二人だけでパピコ食べてるんだよぉ…」
「知ってますか勇者さん。パピコって二つしかないんですよ」
「そんなことも知らないのアルバさん。ぷぷー」
「知ってるよっ!だから!なんでわざわざ二人でしかわけられないアイスを買ってきたのかって聞いてるの!!ボクのお金なのに!!」

「え、勇者さんごときがアイス食べられるとでも?」
「ボクにはアイス食べる権利もないのか!」
「もーうるさいなあアルバさん。仕方ないから一口あげるよ」
「る、ルキちゃん…っ!」
「通報」
「なんでだよ!」「いや勇者さんがいやらしい顔してたからルキが危ないと思って…」
「ボクそんな顔してた!?」

20160815








【アルバトロスが不慮の事故とかそんな感じのなにかで死んじゃったりしたあとに魔王として降臨して人間界を脅かしてるルキたんのいる世界線を見つけてしまったせんゆ世界のアルバトロスがそこの世界線のルキたんを救いに行く話とか】

「ルキ、ボクの目を見て」

アルバさんの声が聞こえる。これは幻聴だ。

「ルキ、オレたちを見ろ」

ロスさんがなんだか泣きそうに眉を寄せている。これは幻覚だ。アルバさんが、ロスさんが、代わるがわる私の名前を呼ぶけれど、それはすべて幻なのだ。
だって、アルバさんもロスさんも、もうどこにもいない。

20160902








【平和になって何の脅威もなくただひたすらに自分の生きたいように生きていい世界でふいにクレアシオン時代とかアルバさんが消えちゃうのとかパパさんの魂を埋める瞬間とかがフラッシュバックして取り乱すシオンさんが見たい】

「これは、ぜーんぶ、お前が見てる夢だ。ただの願望だ。妄想だ、幻だ、虚偽だ。本当のお前は今もオレを追って一人で暗い夜を彷徨ってるぜ。隣を歩く人間なんていない。お前の名前を呼ぶ人間も、ましてやお前を救ってくれる人間なんて以ての外だ。お前の幸せは全部、ぜーんぶ、夢なんだよ、シーたん」

20160915








【幼少シーたんはお絵描き好きで(もしくは他にできるひとり遊びがなくお絵描きばっかりしてた)、家には幼少シーたんの絵がたくさんあったらよい】

「ねえねえシーたん。なんでオレは絵に描いてくれないの。こんなにお絵描き好きなのに。見たことない動物とか描くくせに」
「お前とはずっと一緒にいるんだから顔を想像することも必要ないし、描かなくたって忘れることはないだろ」

20161011








【小さい頃のシーたんはお絵描き好きだったけど大きくなったシオンさんはお絵描き苦手でアルバさんの家庭教師してるときも図解とかへったくそでアルバさんに笑われてるとよいですよね】

「何笑ってんですかぶん殴りますよ」
「ぶん殴った後に言うなよ!」
「…何笑ってんですか」
「あ、いや、その、シオンって意外と…その…、絵が……」
「下手くそだって言いたいんですかいい度胸ですね歯ァ食いしばれぶん殴る」
「だから殴ってから言うなって!痛い!ごめん!ごめんなさい!」

20161011








ロスさんがアルバさんに甘えている。そりゃあもう甘えている。全力である。具体的にどう甘えているかと言うと、まず、特に用もなくアルバさんを呼び出しては村の清掃活動を手伝わせたり、そのままの流れで自分の家まで掃除させたりしてる。ぶつぶつ言いながら言う事を聞くアルバさんはお馬鹿だと思う。

【眠くて続きは断念した模様】

20161020








「ロスはさ、後悔してない?」
「後悔なんて、するはずないでしょう」

何が悪かったのかなんてわからないし、どこから歪んでしまったのかもわからない。もしかしたら最初からそうだったのかもしれないし、実はこれが決められた道筋だったのかもしれない。だから後悔なんてしない。振り返って、自分が歩いた道を悔いるなんて、そんなこと。そんなこと、できるはずがない。

振り返って、ああすればよかった、こうすればよかった、と眺める道すら、自分にはない。だから、オレには、後悔するなんてこと、できないんですよ。勇者さん。

20161118








うまく言葉にならないこの感情を、どう表現しようかと考える。考えたって答えは出なくて、自分の頭の悪さにがっかりする。
だけど、いいのだ。言葉にしなくたって。楽しいも悲しいも、わけの分からない感情も。喜怒哀楽すべてを。自分のすべてを。ボールに込めて。コートに叩き込む。それだけでいい。

ボールに込めたその想いは、誰かが拾ってくれる。コートのこっち側では味方が。コートのあっち側ではライバルが。繋いで繋いで、そうして打ち返してくる。言葉のやりとりなんかよりもっとずっとシンプルでわかりやすいボールの応酬。ボールに触れればすべて伝わる。至極単純だ。だから、それが、いい。

【ボールと言葉と日向くんと】

20161219








あたしは一生、あんたのことを許さない。最後の最後であたしを突き離したあんたを、一生、死んでからも、あたしが忘れるまで、絶対に許さない。あんたが決めたこと、それが間違ってるとか正しいとか、そんなことはわからない。それがあんたの答えだって言うなら、あたしはそれでもいいと思ってた。

あんたの答えを否定はしない。だけど、それを許すかどうかは別の話。そしてあたしは、あんたを許さないと決めた。晴れ渡る空へと立ち昇る光の柱を見たとき、そう決めたんだ。許さない、許さない。最後の最後で、よりにもよって「ごめん」と言ったあんたを。あたしに何も言わせてくれなかったあんたを。

あたしは、一生、死んでからも、あたしが忘れるまで、絶対に許さない。

だけどそれだとあんまりにもあんたが可哀想だから。一発殴らせてくれたら考えなくもない。寝起きでぼけっとした横っ面に、あたしの渾身の力を込めた拳を叩き込んで。それを朝の挨拶とさせてくれるなら。許してあげなくもないよ。
だからほら。あたしが眠ってしまう前に、早く起きてこい、ばかやろう。

【スレイさんをゆるさないロゼさんの話。】

20170227








「ツッキーはさ。俺がいなかったらバレー続けてた?」

いつもの帰り道、隣を歩く幼馴染みがそんなことを呟いた。秋の気配を孕んだ風が僕らの間を吹き抜けて、何処か遠くへ飛んでいく。ちらりと視線を向けても、幼馴染みとは目が合わない。

「俺はさ、ツッキーがいなかったらバレーやってないだろうから」

嘘つけ、と思った。僕は知っている。こいつが努力家であること。意外と負けず嫌いなこと。自分に自信がないくせに、妙に強情なこと。いつも遅くまで残って練習して、必死にボールを追っていること。それから。

「ツッキーがいてよかったなあ。俺、バレー続けててよかった」

バレーが好きだということ。

「…お前は、僕がいなくてもバレーやってたと思うよ」

だから僕は、当たり前のことを告げる。僕がいなくても、幼馴染みはバレーを好きになっただろう。たとえば僕がバレーを辞めたとしても。きっとこいつはバレーを続けただろう。こいつは、幼馴染みは、山口忠はそういう男だ。僕は知っている。

「そうかなあ」
「そうだよ」
「ツッキーが言うならそうなのかもね」

幼馴染みはへらりと笑う。それを横目に、僕は小さく息を吐いた。きっと僕は、お前がいなければバレーを続けてはいなかったよ。問いへの答えを細く細く吐き出して。そうして、先を歩く、いつの間にか大きくなった幼馴染みの背中を追う。

「あ、」

幼馴染みが歩みを止める。見上げた空には煌々と輝く丸い月。

「明るいと思ったら、今日は満月か」

眩しいね、と笑う幼馴染みと目が合って。眩しいのはお前だよ、と僕は笑った。本当に、いつの間に。お前、そんなにかっこよくなったんだか。もう、蝉の声は聞こえない。秋の空に、月が満ちていく。

【夏合宿のあとの月島くんと山口くん】

20180903








『未来に色を付けるとしたら何色だろう?』最近よく考える。たとえば、コートの端から端までひと瞬きの間に移動して、高く高くとんだ日向の未来の色は。そんな日向の手の先へ寸分違わずボールを送り出す影山くんの未来の色は。打ち込んだボールが相手コートに刺さり、拳を合わせる二人の未来の色は。

日向は、彼の髪のように柔らかで、それでいて鮮烈なオレンジ色。一度見たら忘れない太陽の色だろう。影山くんは、艶々とした黒。或いは夜空のような濃い藍色。太陽が輝くまでの支配者の色。あ、二人合わせたら烏野カラーだ。くすくす、自分の想像した色があまりにぴったりで、私は思わず笑ってしまう。

じゃあ二人が揃う未来の色は?
――そんなの決まってる。
ぴかぴかに輝く金色。一番綺麗な色。眩しくてたまらない色。二人が走って行く先には、目が眩むほどに光る金色の未来が待っている。日向と影山くんは恐れることなく全速力で駆け抜けて、いつか一等輝く金色の未来を手にするのだ。私は知っている。

「谷地さん!もう一回ボール出しお願いしていい?」
「ハイっす!」
「助かる」
「いえいえ、私もマネージャーの端くれですから!」

ボールを高く高く投げる。影山くんへ届いたボールは日向へと繋がって。こんな風に、ずっとずっと二人の、バレー部のみんなの光り輝く未来を繋ぐ手伝いができたらいい。

まだ自分の未来の色はわからないけれど、濃い色でも淡い色でもどんな色だっていい。ただ、欲を言えば。そこにオレンジ色と黒色があって、ほんの少しの金色があれば、言うこと無しかな、なんて。我ながら欲張りになったものだ。貪欲な烏だから仕方ないか、私はまた、自分の想像で笑ってしまうのだった。

【日向と影山くんとずっと横に並んで歩くのは谷地さんだろうなって思うよ】

20180918












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