140 | ナノ




【#ふぁぼしてくれた人の紹介とかしたいけど純情な感情が空回りして思考回路がショート寸前だから代わりにその人イメージして好き勝手に小話書きます】

狭くて暗い洞窟の奥の部屋は、そのくせ無駄に機能的である。例えば紅茶を淹れるためのポットが置いてあったり、茶菓子が常備されていたり。
皿に並べられたクッキーを一枚手に取った。ほろり、口の中で崩れるそれを飲み込んで、紅茶を一口。あたたまる。
向かいに座る勇者と目が合った。へらりと笑う。

「ヒメちゃんがくれたんだ」
「そうですか」
「お前、甘いもの好きだろ?」

笑う顔を無性に殴りたくなったから、欲求に忠実に殴ってやる。呻き声。

「…おいしい?」
「まあまあですね」

青空の下で飲めばもっと美味しいだろうに。言葉は紅茶と共に飲み込んだ。

【for ふぉろわさん 7人目】








「右だよ!」
「絶対に左!」
「ぜーったい右だもん!いくらアルバさんでも、これだけは私の方がよく知ってるもん!」
「そ、そんなことないよ!確かにルキの方が一緒にいるかもしれないけど!ボクだってずっと一緒にいるんだし!」
「ていうかアルバさんセンスないからダメ!」
「ルキに言われたくない!」

「ひどいよアルバさん!」
「いくらルキが相手でも譲れないよ!」

本格的にいがみ合い始めた二人の間に割って入る。双方涙目。

「勇者さんもルキも。なに喧嘩してるんですか」

同時に振り向く。

「「ロス(さん)にあげるケーキはどっちがいいか!」」

天使か。

【for ふぉろわさん 8人目】








目の前を歩く奇抜な頭の男。オレよりも少し高い背。
あの頃もいつだって背中を見ているばかりだった。手を引き、率先して前を歩いて。
振り返って、名前を呼ぶ。シーたん!笑って、手を取って、走り出す。遠い日の幻想。

「シーたん!ほら、あっち!」

あの頃より近くなった目線。変わらない笑顔。温度。

いつまでも変わらない。馬鹿みたいに心地よい関係。
溜め息を吐いて、前を行くあいつの頭を小突いた。隣に並んで歩く世界。同じ目線で見る世界。
あの頃には戻れなくとも。もう背中を見ることもないのだ。

「シーたんシーたん!見ろよあれ!」

そんな、未来の話。

【for ふぉろわさん 9人目】

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痛い、痛い、苦しい。内臓がぐちゃぐちゃだ。痛いのか熱いのか分からない。回復しなければ死ぬ。頭の中の冷静な自分が言う。
痛い。気持ち悪い。血を止めて、回復魔法だ。その次は。
痛い、痛い。助けて。回復したら追い掛けなければ。追い掛けて、それから。
痛いよ。助けて父さん。それから、あいつを、

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「ふっゆがさむくってほんとによかった〜」
「きみのひえたーひーだりてをっ」
「ぼくのーみぎーぽけっとにっ!おまねきするーためーのー」

「「「……」」」

「いや、私だよ?」
「いやいやルキちゃん。こういうのは幼馴染であるオレの役目だからね」
「二人とも何言ってるんですか。それはボクの仕事です」

「ビジュアル的に私が適役に決まってるもん!」
「ビジュアルは関係ない!立ち位置的なあれでしょ!」
「立ち位置って言うなら尚更ボクが適役ですね!おーい、シオンー!」
「あ!!」
「アルバくんずるい!」

「…何ですか」

「君の冷えた左手をボクの右ポケットにお招きしてもいいですか!」
「え、嫌です」

「じゃあオレ!!」
「何言ってんだお前。ついに頭湧いたか」
「じゃあじゃあロスさん!私だったらいいよね?」
「…そもそもお前の右ポケットに届かないぞ」

「「「……」」」

「何なんですかさっきから。そんなに寒いんですか」
「うう…」
「さて、ここで取り出したるは尋常じゃない長さのマフラーでーす」

シオンが取り出したのは本当に尋常じゃない長さのマフラーだった。一人で巻いたら首が締まりそうなくらい。
シオンはそのマフラーをまずボクに巻いて、次にクレアさんに巻いて、ルキに巻いて、最後に少しだけ満足そうな顔で自分に巻いた。

「これで温かいでしょう?」

ああ、冬が寒くて本当に良かった。

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音がする。声がする。探している。ボクは逃げない。

「アルバ」

息を殺して。気配を消して。待ち構える。

「アルバ」

あいつはボクのことをそう呼ばない。ボクを求めたりしない。だからこいつはあいつじゃない。

「そこにいたのか」

魔力を練る。教えられた通りに。

「みつけた」

放つ魔法。見えた瞳は、青。

【アルバ「空月さんは『2Pクレアシオンと三章アルバでかくれんぼがテーマな話を描いてみたらどうかな?かけたら見せてね!」 http://shindanmaker.com/372409】

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ねえ、アルバさん。
なあに、ルキ。
痛くないの。
痛くないよ。
つらくないの。
つらくないよ。
泣きたいと思わないの。
そんなこと思わないよ。
それでいいの。
これでいいんだ。
本当にロスさんが望んでいると思うの。
それはどうだろうね。
アルバさん。
なに。
歪んでるとは思わないの。
はは、今更気付いたのか。

ねえ、ルキ。
なあに、アルバさん。
これでよかったのかな。
よかったんだよ。
ボクはあいつを救えたかな。
ロスさん幸せそうに笑ってたじゃない。
ボクは、ちゃんと勇者できてたの。
大丈夫、アルバさんはちゃんと勇者だったよ。
ねえ、ルキ。
なあに。
ボクは歪んでいるのかもしれない。
ふふ、今更気付いたの。

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ねえ、さよならだよ、いつかまたね、そう言って目を細めたその人の姿を、きっとずっと忘れない。
忘れないから、忘れさせない。忘れたくないから、忘れてしまった。
忘れられないその人と、忘れてしまった自分。
さて、次にその人に出会ったとき、第一声に相応しい言葉は何になるのでしょうか。正解は。

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ひとつ。甘いものが美味かった。
ふたつ。空の色が変わらなかった。
みっつ。りんごが育っていた。
よっつ。仲間ができた。
いつつ。笑うことができた。
むっつ。親友が戻ってきた。
ななつ。家族がいた。
やっつ。戦友ができた。
ここのつ。世界を見ることができた。
とお。オレはここで生きている。

(しあわせを数えるには両手じゃ足りない。)

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「シーたんのシチューが好き」
「ボクは卵焼き」
「私はホットケーキ!」
「あとねえ、ハンバーグ」
「オムライスも」
「ドーナツ!」
「ナポリタン」
「親子丼」
「チーズケーキ」
「カレー」
「チャーハン」
「クリームあんみつ」

「…分かった。作ってやるからその期待に満ちた眼差しやめろ」

「「「わーい」」」

【いっぱいリクエストされてきらきらした目で見られてあるるきくれあちゃんにご飯作ってあげるしおんさんかわいい これ足りないから買ってこいってくれあさん追い出して勇者さんはさっさと皮剥いてくださいってあるばさんに野菜渡してルキは皿洗っとけってるきたん用の踏み台出してくるんでしょ】

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雨が降っていた。立ち尽くす。どうしてこんなところにいるのか、自問自答を繰り返す。落ちる雫を受け止めた。目は曇天を映し出す。

「…かさ、ないの?」

視界を遮ったのは黄色。見下ろせば、小さな子供がオレに小さな傘を傾けていた。自分が濡れることにも構わず、背伸びをして。オレを濡らすまいと。

「濡れるぞ」
「ボクはいいんだ。きみがぬれちゃう」
「お前バカなのか」
「わかんない」

子供はオレに傘を差し出す。黄色の傘は薄暗い空によく映えた。しっとりと濡れていく狐色の髪。子供は笑う。

「あのね。雨はいつかやむんだって。母さんが言ってた」

だからね。この傘は、それまできみに貸してあげる。

子供はそう言って、オレに背を向けて駆け出した。オレはその小さな後姿をただ見送った。

「せんしー!」
「ロスさーん!」

響く声。水を踏む足音。振り返る。

「もう!雨降るから傘持って行けって言ったのに!なんで持って行かないんだよ、って…」
「あれ、ロスさん傘買ったの?」
「随分小さい傘だなあ」

少年と少女は大きな傘を差している。緑と桃色。花が咲いたようだった。瞬く。

「この傘は、借りたんですよ」

くつり、喉の奥から漏れる笑い声。小さな傘で顔を隠して、少年が持つ青の傘を奪い取った。代わりに黄色の傘を押し付ける。

「雨、止みましたね」

ぱらぱらと振り続ける雨。もう冷たくはなかった。

【アルバ「空月さんは『幼少期アルバと一章ロスで雨がキーワードな話を描いてみたらどうかな?かけたら見せてね!」 http://shindanmaker.com/372409】

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「シーたんの作るご飯って何であんなに美味しいんだろーなー」
「そんなの、ロスさんが私たちのこと大好きだーって思いながら作ってるからに決まってるよ!」
「あはは、愛情は最高のスパイスって言うもんね」
「そうだよ!だからロスさんの作ったご飯は美味しくないわけないの!」
「マジかよスゲーな!」

「ボクたちが作ったご飯もシオンは美味しいって思って食べてくれてるのかな?」
「愛情たっぷりだもんね!」
「シーたん、二人がご飯作ってるとちょっと緩んだ顔してるんだぜ!たぶん本人は気付いてないけど!」
「え?」
「それ本当?」
「本当本当!一番近くで見てるオレが言うんだから間違いねー、よ…」

「クレア。お前あとで宿屋の裏な?」
「…マジかよ…」

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瓶に詰めた。気持ちを、感情を、心を、涙を。小さくて透明な瓶にひとつ残らず詰めてしまった。しっかりと蓋をして、そうして瓶を振ってみる。しゃらしゃらと音がする。
光を弾いて、中に詰めたボクが、きらきらと輝いた。瓶を置く。
瓶に詰められたボクを見るのは、なんだかとても不思議な気分だった。

ボクの心から成る、瓶の中のボク。膝を抱えて泣いている。そんなに泣いたら、今に瓶の中が溢れてしまう。
ボクは蓋を開けて、またひとつ、瓶の中に入れた。それは温かい記憶だ。
蓋を閉める。瓶は、ボクの手から滑り落ちてしまった。
しゃらしゃら、床を転がる瓶の中には、ボクなんていなかったのである。

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「スペードの4」
「ハイ」
「正解。次は…ダイヤの10」
「ロー」
「正解。クローバーの9」
「ロー」
「正解。ハートのクイーン」
「ロー」
「…残念、キングでしたぼふぉ!?」
「さっきから何なんですかあんた絶対仕組んでるでしょう」
「なんで殴った!?大体、そんな器用なことボクができるか!」

「じゃあどうしてさっきから確率の低いカードばっかり引くんですか仕組んでるとしか思えません」
「お前が運がないだけだろ」
「撲殺」
「待て待て!とりあえずその鈍器しまえ、な?」
「ムカつくんで殴りますね!」
「やめろ!」
「もう一回です」
「は?」
「勇者さんに勝つまでやりますからね」
「マジで?」

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