そんな君が好き。





私は愛されていると思う。
……"思う"じゃない。愛されている。めちゃくちゃ。

今日のパーティ編成は、クラウド、私、そしてナナキ。
出発前に身体を休めるべく、アイシクルロッジで私たちは暖を取りながら荷物の整理をしていた。
ナナキに寄りかかった背中が暖かくて、いい背もたれになってくれてる。

一方のクラウドは街の探索に行っているところだ。
たぶんそろそろ戻ってくるかな。



「ナナキ、辛くない?」

「ん?オイラは全然大丈夫だよ。ナマエは軽いから。」


えへへ。と笑ったその頭を撫でて、私も釣られて小さく笑う。
可愛い。



そこに響く、扉が開く音。
クラウドが帰ってきた。


「クラウド!おかえり。」
「ああ。」

ナナキの声に頷いて、クラウドがぽんぽんと私の頭を撫でてから隣に腰掛ける。


「戻った。」
「おかえりなさい。なにか収穫はあった?」


流れるようにおかえりのキスをしてから、私の声に うん。と頷いて、クラウドが持っていた袋をひっくり返す。
何が出てくるんだろう。防具とかかな。

するとゴロゴロと音を立てて出てきたのは、山のようなポーションやらエーテルやら……
…………多くない?


「ちょ、ちょっとクラウド、こんなに?」

「ああ。本当はもう少し集められれば良かったんだけどな。」

「いやいや……多すぎるよ。」

「そうか?寧ろ足りないくらいだ。」


それから問答無用に私のバッグにそれらを詰めていく。
……えっ、私のバッグに入れるの?
戸惑う私の一方で、クラウドは真剣な眼差しだ。
それにしても、ちょっと、本当に多すぎだって。
自分の苦笑いが若干引き攣るのが分かる。



「ねえ、私そんなに持てない、」

「俺がナマエの鞄も持つから問題ない。それよりも備えの方が大事だろ。」


制止する私の声も聞かない彼の腕を、どうしようも無くて私は遂に掴んだ。
これ以上入れられたらたまったもんじゃない。
私はポーション屋か?


「本当にクラウド、もういいから。
私が強いの、クラウドが1番知ってるでしょ?」
「そういう問題じゃない」
「じゃあどういう問題?」
「それは……」


私が弱いと思われているのだったら不服だと、クラウドに詰め寄る。
ただ彼はそういう意図だった訳では無いらしく、問いただす私に言葉を詰まらせた。
何かを言いずらそうに、手元でエーテルの瓶をコロコロ転がしている。
……何なんだ?


すると後ろで、ナナキがため息をついた。


「はぁ……素直に言えばいいのに。」

「何の話だ。」

「ナマエ、クラウドはナマエのことが大好きだから心配なんだよ。
前から思ってたけど、クラウドはナマエにとっても過保護だよね。」



……そうなの?
ナナキを撫でながらクラウドに目線をやると、彼は右に視線を逸らしてぎゅっと瓶を握っていた。
よく見ると、耳が赤い。
もしかして……照れてる?

なんだか彼が可愛くて、くすっと笑いが零れる。
それからクラウド用の荷物の袋をずるっと引き寄せて、私もさっき彼がやったみたいに、彼の荷物に瓶を詰め始めた。


「お、おい、ナマエ。」

「私も、恋人が心配なので。」


ふふんと笑って手を進める私に、今度は彼が苦笑いをこぼす番だった。



ほらね。私、愛されてるでしょ?






「……ナマエ。」

荷物を作り終えて身体もじゅうぶん休めたところで、出発しようと立ち上がった私の手をクラウドが掴んだ。


「ん?どうしたの?」

彼の手を引いて、優しく髪を撫でる。
ナナキよりも芯があって、それでもさらさらとした手触りの髪が気持ちいい。
首を傾げて彼を見つめると、ふわりと首元が突然温もりに包まれた。


「わ……あったかい、」

一瞬驚いてから、それによって寒いところが暖められたと分かる。
触れると、それはふわふわの手触りのマフラーだった。
白くてシンプルなデザインが可愛い。


「チョコボの羽毛が編み込んであるらしい。」

「そんな良いもの……貰っていいの?」


鼻を埋めると、ふわりと香る太陽の匂い。
そして何より、少し混ざったクラウドの香りが心を落ち着かせた。


「……ナマエが風邪を引いたら、困る。」

少し気まずそうに呟いた彼。


不器用で、口下手で、私のことになると周りが見えなくなって。

そうやって、時々格好つかない君だけど。

でも、
私はそんな君が好き。








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