Episode 22
「よぉー、お嬢さん。迎えに来たぜ。」
始発の電車がある確信もないまま手もみ屋を出た私を一番に迎えたのは、リーダーの乗ったチョコボ車だった。
「リーダー!?」
「サムのおっさんから話を聞いてな、電車止まってっから迎えに来てやったぜ。」
つってもお前の先輩に頼まれただけなんだけどな。と、リーダーが笑う。
チョコボもこんなに朝早く借り出されてまだ眠いのか、大きく欠伸をした。
可愛い。
ごめんな、と思いつつ車に乗り込む。
私たちを乗せたチョコボ車は、スピードを上げて走り出した。
「にしても、どうしてチョコボ……?」
「そりゃあお前、可愛い後輩がお世話になりました料だろ。」
会社に着いて早々、私は課長に呼び出された。
「ナマエ、今日は忙しくなるぞ。
まず、昼からスカーレット統括と話してきなさい。
統括には、君を好きなようにしてくれとお伝えしている。
失礼の無いように、媚びを売って来なさい。」
昼までは通常業務ということで、チームのみんなとミーティングや兵器の修理、新しく開発する兵器の相談をしつつ、昼からの事について考えを巡らせる。
そして、ついにその時はやってきた。
「あなたが、例のアイデアを出してくれた新人さん?」
胃薬を飲んでから会議室の椅子に浅く腰かけて統括を待つ。
それはもう、心臓がそのまま飛び出そうなくらいの緊張だ。
手足が痺れて冷える。
はぁーーー、どうしよう死んでしまうかもしれない。
小さく震える手を握りしめたその時、スカーレット統括は会議室に姿を現した。
「は、はい!お疲れ様です!」
慌てて立ち上がって頭を下げる。
その姿に彼女は満足そうに笑ってどすっと椅子に腰掛けた。
座って。と促され、さっきより更に浅く椅子に腰掛ける。
「あなたの書いた設計図を見た時は本当に興奮したわ。
まさかこんな素敵なアイデアを持っている新人がいたなんて、兵器開発部門も馬鹿ばかりじゃなかったみたいね。」
赤いドレスと強く香る香水が視界を荒らす。
もう、なんか色々集中できない。
「このような駄作ですがお目通し頂けて本当に光栄に思います!
私もまだ入社したばかりでこのような機会をいただけるなんて、夢にも思っていませんでした。」
ふん、と鼻を鳴らして、統括が資料を捲る。
「ソードダンス、だったわね。
昨日から化学部門で研究開発が進んでるわ。
ここの、人工知能のプログラミングの部分を組み替えて人造生物として開発する事になったから。
まあ、開発の名前が化学部門に持っていかれるのは癪だけど、恩は売れるだけ売っておいてやるわ。
あなたも、向こうで迷惑は掛けたらダメよ?」
「その、大丈夫です!」
「あら、自信があるのね?」
「自信がなければ、今日ここに来ていません。」
怯えに屈しないように、統括をまっすぐ見つめる。
緊張するし、なんか怖いけど、このチャンスは絶対に逃せない。
「……いいわね、あなた。気に入ったわ。」
後ろに控えていた神羅兵の1人を顎であおって、後ろから何かのカードキーが差し出される。
統括はそれを受け取ると、私にそのまま差し出した。
「ソードダンス開発チームの研究室の鍵よ。
あなたのチームメンバーも連れて今日からそこで開発に専念しなさい。
それと、今日の夕方からの私たちの会議、あなたも後ろに控えておけるように話を通しておくから。」
「はっ、会議……!?」
「ええ。なんだか面白そうだし、いいでしょう?
あそこ、男ばかりでむさ苦しいのよ。
まああなたも、華やかな感じでは無いけれど。」
失礼するわね。と、遠慮なしに彼女は立ち上がると、部屋をあとにした。
…………えっ?
待て、待って、ちょっと待って。
まず、チームで私の考案したソードダンスを開発することになって、夕方からは重役会議に重役でもない私が参加?
これって、もしかして、
「大昇進では……!!??」