Without You.





1人寂しく、ベッドに潜る。
こんなの久しぶりだ。いつもは隣にクラウドがいるから。


彼は、今夜は珍しく仲間と飲みに行っている。
彼と付き合ってもう1年が経とうとしているが、こうして「先に寝ててくれ」なんて言われたのは初めてのこと。

別に、不満を感じている訳では無い。
むしろクラウドには友人関係を大事にして欲しいし、実際飲みに行くって聞いた時は心から「楽しんでね」と送り出すことができた。


……でも、寂しいものは寂しいよね。



歯を磨いて、お風呂にも入って、後は寝るだけ。
1人だからテレビを好きなだけ見て、スマホを弄って、気付けば夜も遅い時間になっていた。


掛布団を鼻までずり上げる。
いつもの癖で壁側に酔っちゃったけど、開けた方の布団はクラウドの匂いがした。
わざと少し移動して、いつも"クラウド側"の布団に擦り寄る。
なんか、彼がいないのに彼に包まれてるみたい。


あ、なんか、やばいかも。



彼がいつも使う枕を抱きしめて顔を埋めると、深く息を吸い込む。
うん、いつものあの柔らかいブロンドヘアの香り。
同じシャンプーを使ってるはずなのに、私の髪より彼の髪の香りの方が優しい気がするのは何故だろうか。

頭に浮かぶのは、夜寝る前のクラウドの少し低めの体温と耳元で聞こえる少しだけ舌の回ってない低く掠れた声。
それが一晩だけで恋しくなるなんて、随分私もその温もりに慣れてしまったみたいだ。
初めは緊張で眠れなかったのに。
そういえば、初めて彼と一緒に眠った時はお互い眠れてなかったな、なんて。


あぁ、早く帰ってこないかな。

愛おしい彼を思いながら、そうやって私は目を閉じた。









すっかり手に馴染んだ鍵でドアを開ける。
予定より少し早い帰宅。
散々みんなにナマエの事を聞かれ、話しているうちに会いたくて仕方がなくなってしまった。


手早く部屋着に着替えてから、寝室の扉をできるだけ光が差し込まないように開くと、愛する彼女の姿。
そばに寄って覗き込むと、俺の枕を大事そうに抱き抱えたまま静かに寝息をたてている。


「……ただいま。」

髪を撫でて頬にキスを落とすと、その瞳がゆっくり開かれた。


「んん……クラウド……?おかえり、」

「うん。起こしてすまない。」

「んーん……」


まだ半分夢の中にいるナマエが、俺の首に腕を回す。
身体を寄せてやると、ぎゅうっと抱きしめられた。


「布団はクラウドがいた方が、ずっとあったかいの……知ってた?」


首元に擦り寄った彼女の髪を撫でて、思わず笑いがこぼれる。


「ご飯はナマエと食べた方がずっと美味しい。知ってたか?」


そう言ってベッドに潜り込むと、ナマエも笑う。


「おたがい、重症だねぇ。」

「ふっ、今更だな。」


再び目を閉じた彼女の唇に口付けて、ナマエを抱きしめる。
俺とナマエの間で肩身が狭そうに潰れる俺の枕が、なんだか可笑しかった。








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