64.紹介する日

「あ、お母さん? うん。十日に帰れそうだよ。うん。そう、それでね、紹介したい人たちがいるんだ。一緒に行ってもいい?」
 お母さんに訊ねると、笑い声がして、彼氏かしら? と言われた。
「うーん……えっと……着いたら話すから。こういうこと、電話口だと話しづらいね」
 私が濁すと、お母さんはわかったわ、と頷いてくれた。そしてどんな人か楽しみね、と言ってくれた。
「きっと気に入ってくれると思う。すごく素敵な人たちだから」
 たち? と首を傾げられ、二人連れて行くよと伝えると、少し混乱してしまったみたいだった。なんだかおかしくなってしまって笑ってしまい、誤解は会った時に解いてもらうことにした。
「まあ、楽しみにしてて。何かお土産に欲しいものある?」
 お母さんは何かおすすめのものを買ってきて、と答えた。お父さんはお酒がいいかも。と付け加えた。じゃあ、何か美味しい食べ物を選んでいこう。
「うん。じゃあね。また。はーい」
 通話を終えて、カレンダーを確認する。実家に帰るまで、あと数週間。飛行機は取れたから、お土産と荷物を準備するだけだ。
 无限大人に一緒に日本に来て欲しい、と頼んだら、すぐに了承してくれた。あまり長くはいられないだろうと思ったけれど、
「館長に伝えたら、こちらは気にせずゆっくりしたらいいと言ってくれた」
 とのことで、少し多めにお休みをもらうことができた。最近は執行人としての仕事も落ち着いているようだ。无限大人が休暇を申し出ることなんてほとんどないから、いままでの分まで休めばいいと館長も、他の執行人も思ってくれているらしい。その気遣いが嬉しかった。小黒は初めての飛行機にはしゃいでいた。出国手続きは少し手間取ったけれど、なんとかなる。雨桐には日本からお土産、とくにお菓子をたくさん買ってくるように言われた。たまに日本から取り寄せたお菓子をおすそ分けしていたけれど、とても気に入ってくれたらしい。せっかくだからたくさん買っていこう。
 家族に无限大人のことを紹介するのは、少し緊張する。恐らく喜んでくれるだろうけれど、やっぱり普通とは少し違うから、そこを心配されるかもしれない。でも、最終的には私の気持ちを尊重してくれると思う。私は大丈夫だとしっかり伝えよう。おじいちゃんとおばあちゃんは驚くかもしれないけれど。
 兄弟に会うのも久しぶりだ。弟と妹二人がいて、一番下の妹は来年二十歳になる。あの子たちは、どんなふうに无限大人のことを受け入れてくれるだろうか。みんな、館とは別の、ごく普通の会社で働いているけれど、子供のころから妖精に親しんできた。无限大人のことも名前は知っている。やっぱり、突然連れて帰ったら驚かせてしまうだろうか。でも、驚いてる顔を見たいかも。少し意地悪な気持ちが顔をのぞかせる。
 小黒はまだ幼いけれどしっかりしているから、きっと大丈夫だろう。みんなも可愛くて元気な小黒のことを気に入ってくれると信じている。その日が来るのがとても楽しみだった。

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