28.執行人

 今日は館で若水姐姐と会ったので、端末で撮った最近の无限大人の写真を見せていた。若水姐姐はお返しに、小黒と遊んでいるときの写真を見せてくれた。
「无限、こういうカジュアルな服装も似合うよね!」
「そうなんです。長い髪なのに、不思議とよく馴染みますよね」
 若水姐姐と无限大人のよさについて語るのはやっぱり楽しい。会話が弾んでしまって話が長くなってしまう。今日もついつい話し込んでしまっていた。
「これが春節のときの写真で」
「いろいろ出かけてるわね。漢服も似合うー!」
「似合いますよね。やっぱり一番は漢服かな」
「そうね。でも、无限一人か小黒と一緒に映ってるのばっかりじゃない?」
「それは、私が撮ってますから」
「ツーショット撮らないの?」
 にやりとして若水姐姐が顔を寄せてくる。私は照れて肩を竦めた。
「いやぁ……ちょっとは撮りますけど……」
「まあ見せてとは言わないわよ。二人の思い出だもんね」
 にやにやされてしまって、私は何も言えず、ただただ照れた。
「こっちはね、小黒と遊んでたときの写真!」
「鳩老と何しているんですか?」
「なんか、ボードゲームだって。私はやったことないからよくわからないけど。小黒もすぐ飽きちゃってた」
「あはは」
 写真の中の小黒はくるくるとよく表情を変えていた。とても楽しそうだ。无限大人が忙しいときには、こうやっていろんな妖精と遊んでいるらしい。
「そういえば小黒、執行人になりたいみたいだよ」
 若水姐姐が耳をぴくりとして教えてくれた。
「私とか他の執行人にどうやってなるのかとか、どんなことするのかとか」
 それは初耳だった。小黒、そんなことを考えていたんだ。
「単なる興味だけというよりは、本気っぽいわね」
「本気ですか。やっぱり師匠の姿を見てたら憧れるのかな」
「そうね。无限の弟子として、自覚が出て来たのかしらね」
 若水姐姐はお姉さんぽい口調でそう呟く。頬に手を当てる仕草は本当にかわいらしい。
「実際のところ、小黒はなれそうですか?」
「まだ幼いからね。これからの修行次第かな」
 意外とシビアな答えが返ってきた。でも、无限大人が修行するのだから、きっといい方向に伸びるだろう。
「執行人かぁ。そうしたら、无限大人と一緒に任務に行くようになったりするんでしょうね」
「そうね。无限は単独で行動することが多いから、それについて行けるくらいにならないとね」
 現場を知っている人の言葉の重みだった。小黒には頑張ってほしい。
「小黒は今年で十歳か」
 人間で言えば小学生くらいだ。まだまだ子供だけれど、先のことを考え出す時期なのかもしれない。私が十歳のころは何を考えていただろう。何になりたかっただろうか。たぶん、妖精と一緒にいられる仕事をしたいとは考えていたと思う。子供のころから、両親に連れられて館によく行ってはそこに住む妖精たちにかわいがってもらっていた。妖精は私にとって身近な存在だった。だから自然と、この道を選んでいた。私が両親の背中を見て育ってきたように、小黒は无限大人の背中を見て成長していく。なんだか胸が熱くなる思いがした。
「どんな大人になるか、楽しみだな」
「そうね。きっとかっこよくなるわね!」
 小黒の未来はきっと明るいものだろう。その成長を、无限大人と一緒に見守れるのがとても嬉しい。

|