▼ 第三話 記事
「エックスの写真がこんなに……」
大地は新聞の一面をでかでかと飾っているウルトラマンの姿に言葉を失った。これほど鮮明に、間近で巨人をとらえた写真は初めてだったため、この写真はまたたく間に日本全国どころか世界に広まったらしい。ネットのニュースでもトップで取り上げられている。
こんなシーンを撮れるのは、あの人しかいない。
大地は確信していた。あのビルの屋上にいた人だ。彼女はカメラを持っていた。
「前にも、彼女に会ったことがある」
だから大地は驚いたのだ。そしてこの写真を寄稿した記者の名前。それは大地がよく知る名前だった。
「怪獣データベース? 大地がよく更新を楽しみにしていたサイトか」
パソコンの画面を覗き込んで、エックスが話しかけてきた。
「やっぱりそうだ。このアングル。それに名前。このサイトの管理人さんに間違いないよ」
まさか女性だったとは思わなかった。
「どんな人なんだ?」
「実際に話したことはないけど……。ずっと怪獣のことを調べてる。色々な文献や、伝承なんかを蒐集して、ウルトラフレア以前の怪獣の痕跡を集めてる貴重なデータがたくさんあったから、俺ずっと通ってたんだけど。あるときすごく鮮明な怪獣の写真を撮って、それがきっかけでフリーライターになって、個人サイトの更新よりも雑誌なんかの連載の方に移っていったから最近はぜんぜんこっちは更新されてなかったんだ」
「詳しいな」
「たくさん参考にさせてもらったからね。……でも、あんな危ないことしてたなんて」
戦闘区域にいたということは、彼女は避難指示を無視したということだ。慌てて怪獣をあのビルから遠ざけたが、一歩間違えたら巻き込んでいたに違いない。
「勇気ある人だな」
「危険だよ。いくら仕事とはいえ、彼女は俺たちXioみたいに戦う力があるわけじゃない。どうしてあそこまでできるんだろう……」
「それが彼女のすべきことなんだろう」
「え?」
「また、会えるかもしれないな」
エックスは意味深に呟いて、黙ってしまった。
また怪獣の出現場所にやってくる可能性は十分有り得る。もし見つけたら……絶対止めよう。大地は深く決意した。