▼ 第二十六話 唯一
「やったー! 新兵器完成したよー!」
ルイが両手を上げて飛び上がる。マモルは小さく拳を握りしめ、すぐに装置を運ぶために準備を初めた。
「よし、早く現場に運ぶっすよ!」
「私が運転するわ」
「急ぐぞ!」
グルマン博士が重い機材を担ぎ上げ、名前たちはすぐに車に乗り込み、現場に向かう。駅前のビル街で、今まさしく怪獣が暴れていた。
すぐにXioが出動し、エックスも応戦したが、現在の平気では足止めにしかならなかった。グルマン博士たちは対抗手段として、開発中だった兵器を急いで作り上げた。名前は車を飛ばす。まだ避難途中の車両で混み合う道路を避け、細い道をぐんぐん突っ切る。いくら急いでいるとはいえ思い切りがよすぎる加速。ルイほどではないが、ひやひやする運転だ、とマモルは肝を冷やした。誰かが飛び出してこないことを祈るしかない。
どうにか現場に到着し、すぐに兵器を展開する。エックスが怪獣を押さえ込んでいたが、怪獣がそれを跳ね除け、移動してしまう。
「あれじゃ照準が合わせられないよ!」
「スカイマスケッティ、ウルトラマンエックスを援護! その場に引き止めろ!」
「了解!」
ルイの要望を神木隊長が受け、隊員たちに指令を下す。
そのとき、別の場所から破壊音がした。
「怪獣がもう一体現れました!」
「もといた怪獣と呼び合ってるみたいだ……!」
デバイザーから、新たな怪獣の情報と命令がひっきりなしに流れてくる。エックスと戦っている怪獣が吼えると、それに答えるようにもう一体が鳴いた。
「大変だ……! あっちには名前さんたちが!」
大地は突き進もうとする怪獣を押さえ込みながら、背後を振り返ろうとする。
建物が遮って、彼女たちがいる場所は確認できないが、もう一体の怪獣の進行方向の近くにいることは間違いない。
「大地、気を散らすな!」
「でも!」
「私達の後ろにも、まだ人がいる!」
避難し損ねている人々の逃げ惑う悲鳴が、ずっと聞こえていたから大地にもそれはわかっていた。絶対に怪獣をここから一歩も先へは進められない。
「くそぉ!」
距離を取らなければザナディウム光線は打てない。しかし後ろには下がれない。今手を離せば、怪獣は一直線に人々の方へ向かうかもしれない。
でも。
「うおおおお!」
大地は全身に力を込め、怪獣を押し倒そうとする。怪獣のどっしりとした四肢はゴモラアーマーを装着したエックスの力をもってしてもびくともしない。押さえ込むので精一杯だ。
「早く、早く倒さなきゃ……!」
「焦るな大地。もう一体はXioが対処してくれる。私達はこいつに集中するんだ」
「なんでそんなに冷静なんだよ!?」
あくまで落ち着いた声音で諭すエックスに、大地は焦れる。
「名前さんが危ないんだよ! 助けに行こうって思わないの!? エックスにとっては、他の人間と一緒なのかよ!」
「……っ、大地」
エックスが黙り込んだのか、大地が彼の返答を撥ね付けたのか。
どちらかはわからなかったが、もう、大地にはエックスの声は聞こえていなかった。
大地――エックスはがむしゃらに怪獣に組み付く。腹を何度も叩くと、怪獣が腕を振った。エックスの横っ面に直撃し、エックスの巨体が右へ吹っ飛ぶ。エックスは素早く受け身を取って立ち上がると、構えを取った。
こちらへ猛然と向かってこようとした怪獣に、光線がぶつけられた。ルイたちの新兵器だ。強力な攻撃に苦しむ怪獣に、ザナディウム光線を放つ。
「あと一体……!」
怪獣がスパークドールズになったことを確認すると、エックスは駆け出した。