▼ イタズラ



 待ってるから早く帰ってきてねと可愛いメール寄越すからこれでも急いで戻ってきたつもりだが。
 寝て待ってるって意味だったのか?
 ソファで丸くなっている様子を見ると、熟睡だった。ちょっとやそっとの物音じゃあぴくりともしない。だが、このまま眠らせておけば、朝にどうして起こさなかったのと理不尽に怒るに決っている。ぐっすり気持ちよさそうに眠っている女を叩き起こすような鬼に俺が見えるのかって話だ。
 心優しい俺は控えめに名前の肩を揺さぶり、声を掛ける。
「おい、帰ったぞ」
「むにゃ……」
「こら、起きろ」
 ついでに柔らかそうだったからほっぺをつねってみる。想像通り柔らかかったが、これでも起きる気配はなかった。
「ち、幸せそうに寝やがって」
 髪を撫でてやると、さらさらしていて手触りがいい。何度か繰り返せば、名前の表情はますます蕩けた。
「へへ……」
「笑ってやがる……」
 義理は果たした。起きないやつが悪い。毛布も掛けずに寝ているのはどうかと思う。しょうがないからベッドまで運んでやるかと手を伸ばしかけ、いたずら心が湧き上がった。
 こいつ、どこまでやったら起きる?
 Tシャツに、ハーフパンツという色気のない寝間着。薄いシャツの上から、下着を付けていない胸が腕に潰されてたわんでいるのがわかった。
 鼻をつまんでみる。
「むがっ」
 起きない。
 服の裾を捲って白い腹を晒してみる。
 起きない。腕が邪魔なので持ち上げる。起きない。
 起きないやつが悪いんだ、ともう一度念押しでもするように心の中で呟いて、さらにTシャツをずりあげた。
 横向きに寝ているせいで、豊満な胸が片側に寄り、綺麗な形が潰れていた。谷間に手を入れて、たぷたぷと揺らす感覚を楽しむ。手のひらでみっちりとした弾力が震え、眠っているせいかその体温の高さが心地よかった。
「ふぁ……」
 鼻から抜けるような嬌声にも似た声が漏れ、びくりとする。しばらく様子を伺うが、また穏やかな寝息が聞こえてきた。よし、続行だ。
 左手で胸を弄びながら、太腿を撫でる。普段、そこまでじっくり見る機会がない。たいてい致すときは部屋を暗くするし、じろじろ見ていたら何見てるのと睨まれるに決っている。白い肌に透ける血管を指先で辿る。手のひらで触れると、肌が吸い付いてくるようだった。ゆっくりと上下に撫でる。名前の穏やかな呼吸に合わせて、胸が膨らみ、しぼむ。
 上がっては下がる薄紅色の突起を口に含んだ。吸い付き、歯で軽く噛む。
「……んっ」
 ぴくりと名前の表情が変わった。感じているらしい。が、その反応はごく鈍いもので、少々物足りない。いつもだったらうるさいくらいに甘い声で鳴くところだ。
「ちゅっ、ん」
 強く吸って、べろりと舐め上げる。ぷるぷると震える房を手で抑え、ぱくついた。さすがに起きてもいいと思うが、名前は大きく息を吐いただけだった。
 もしかして、すでに起きているのか?
 たぬき寝入りでもしているのか。
 疑わしく思いながら、両方の蕾を刺激する。
「んあ、ぁ……」
 名前は口を空けて、身体を震わせた。白い小さな歯の間からちろりと舌が覗く。そこに齧り付き、口を開かせると舌を絡めた。名前の舌はぴくぴくと反応し、意志は感じられないが、反射的に俺の舌に絡むような動きを見せた。俺は存分に名前の歯列の裏側を舐め上げ、舌を執拗に舐る。唾液がたまったのか、名前が噎せた。
 口を離すと、だらしなく開かれた名前の口から唾液がだらだらと溢れる。ソファを汚しそうだったので、舐め上げた。もう一度名前の口内を味わい、手を下へと伸ばす。ハーフパンツの中に手を入れ、下着の上から指で割れ目を撫でると、すでに愛液が染みていた。
「ひゃぁっ」
 名前が鼻に掛かったような変な喘ぎ声を漏らした。
「んっ、ぅ……」
「夢ん中でも犯されてんのかよ」
「はぅ……っ」
 下着の上から擦ると、びくっと痙攣する名前。焦らすように円を描くと、たまらないような溜息が名前の口から漏れた。
「欲しいんなら、そう言えよ……」
「ふぁ……あっ」
「どうした……。まだ寝た振りか?」
「ん……っ」
「起きねえんなら、挿れちまうぞ」
「はう……」
 半覚醒状態、とでもいったところか。俺の言葉に反応は返すが、まだ意識はしっかりしていない。
 下着の中へ、指を潜り込ませ、とろとろになった割れ目をなぞり、愛液を掬い取ると、ぷくりと膨らんだ突起を擦った。
「んひゃんっ」
 さすがにこれは刺激が強かったらしい。名前はどこか気の抜けた声を上げる。
「らめぇ……っやぁん……」
 ろれつが回らないながらも、言葉のようなものを発した。腕をつっぱり、俺を押し退けるような仕草をするが、空振りだ。
「や、やぁ、あっ」
「なんだ? はっきり言え。わかんねえだろ」
「ひゃ、あ、たい、がぁ……」
 名前を呼ばれ、少し驚く。ほっとした自分がいることにも。
 すでにどろどろになっているそこに指を挿れ、掻き回すと名前はびくびくと腰を揺らした。弛緩した下半身はこんなにも無防備なのかというほど容易く指を飲み込む。中に入った中指の第一関節を、ぎゅう、と収縮した内壁が飲み込もうとした。
「名前」
 そろそろいいだろう、と体勢を変えると、名前の腰を持ち上げて服を脱がせる。下半身を露出させると、なすがままの足を持ち上げ、開かせて、昂ぶったものをぶち込んだ。
「んあぁっ!」
 名前は背中を大きく反らせると、その圧迫感に嬌声を上げた。
「あっ、あっ」
「く、あ、いい反応、するじゃねえか……っすげえ、食いつきっぷり」
 ぐいぐいと締め付けられて、余裕が削られる。名前は足を縮めて、俺の腰に巻き付かせた。
「んあっ、あ、っひゃっ」
「名前、こっち見ろよ」
「あぅ……っ」
 いい加減観念しろ、と腕を引っ張り、上半身を起き上がらせる。自重でさらに名前の中に俺が食い込み、名前は声を上げて、俺を見た。
「たいがぁ……っ」
「ようやく、お目覚めかよ」
「んっ、あっ」
 名前は俺に腕を巻きつかせると、しがみつき、爪を立てる。やはり寝起きのせいで力が入らないらしく、ぐらぐらする背中を俺がしっかり抑えてやった。そして、下から突き上げる。
「んひゃっ! ふぁっ、あっ」
「はぁ……っ、く、もっと、締め付けろ……ッ」
「大我、あっ、んっ、んんっ」
「あ、はぁ、名前……っ」
 名前の尻を撫で、割れ目に指を沿わせる。そのまま下へいくと、接合部に触れた。めいいっぱい開いて俺を加えこんでいるその縁をなぞると、びくりと名前は背を震わせ、さらに締め付ける力を込めた。
「っく、う」
「あ、大我、あっ、すごい……っ」
「名前、まだだ、まだイクな」
「もう、ダメだよぉ……っ、イッちゃう……っ」
「まだ、もっと、お前の中にいたい……ッ」
「大我、大我ぁ」
「あっ、名前……ッ」
 ぎゅう、と締め付けられて、耐えられなかった。
 ソファにぐったりと横たわった名前は、まだ完全に覚醒していないらしく、とろんとした顔をしていた。
「この、けだものめ……」
 荒い息の合間に恨み言を言われながら、汗でへばりついた前髪を拭ってやった。
「いつから起きてたんだよ」
「いきなり盛ってるんだもん、起きるタイミングわかんない……」
 名前は顔を手で隠し、誤魔化そうとする。
「こんなとこで寝てるてめえが悪い」
「寝込みを襲うなんてさいてー」
「うるせえ。感じてたくせに」
 脇腹をくすぐってやると、名前は身体を丸めて逃げようとしながら笑い転げた。
 ふるふると震える胸元に、顔を突っ込む。押しのけられそうになったがそのまま頬を押し付けると、名前はぎゅ、と抱きしめてくれた。名前の匂いが鼻腔に充満する。
「ごめんね。待ってるつもりだったのに、寝ちゃった」
「……どうせそんなこったろうと思ってた」
「信用ないなぁ。起こしてくれればいいのに」
「起こしただろうが」
「えー? いつ?」
 ほら来た。普通に起こしても起きないのはてめえだろ。不満そうな声を出すな。
「どうせ寝てると思っておっぱい好きにしてたんでしょ」
「う」
 ぎくりとした俺を、窒息させる勢いで名前は抱きしめる。両頬を胸で圧迫されて、さすがに苦しかった。
「起きないやつが悪いだろ……」
 もごもごと反論すると、少し拘束が緩んだ。
「ふふふ、よしよし。いい子いい子」
 上目遣いで睨むと、なぜかにこにこ微笑まれ、頭を撫でられた。鬱陶しい。
「ガキ扱いかよ」
「かわいい大我。私のかわいい子」
「……チッ」
 甘い言葉を吐く唇を塞いでやる。ちゅ、と音を立てて離れると、銀の糸が引いた。
「おかえり、大我」
 俺は再び、名前の胸に顔を埋めた。




椿姫様リクで、花家大我の甘裏でした。
甘えたでぱふぱふしたい大我になりました。
連載も短編も読んでいただきありがとうございます! 楽しんでいただけて何よりです。
更新がんばります〜!
リクエストありがとうございました。

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